霞のために 2
「龍司君、来てくれたんだ」
『あれ?霞に行くって言ったっけ?』
「パールがいるから」
『ああ、そうだよな』
霞の家に着くと、パールと共に家の前で俺が来るのを待っていてくれた。今日は親が帰って来ないとわかっていたので、パールと散歩した後に暫く一緒にいたそうだ
「龍司君が来るって教えてくれたから、信じて待ってたら本当に来た」
『そりゃそうだよ、急いでて連絡するのは忘れちゃったけどな』
「ううん、いいの」
霞が涙を流しながら抱きついてきた、俺は両腕で優しく包みこんだ
「ありがとう、大好き」
霞が俺の胸で涙を流し続ける、いつの間にかパールも俺の足にくっついていた
(霞は何度も今回みたいな事があったんだろうな)
『大丈夫だよ、俺がいるから』
「うん、迷惑かけてごめんね」
『そんな事ないよ、霞は俺の大切な人だから』
「うん嬉しい、そろそろ家の中に入ろう」
周りを見る限り人影はないが、道の真ん中でずっと抱き合ってるわけにもいかないと思ったのか、霞に誘われて家に入った
『パールもありがとうな』
玄関のドアを閉める前に、それまで霞といてくれたパールの頭を撫でてやった
「龍司君、その荷物」
家に入ってから気がついたのか、泊まり用の着替えなどを入れたリュックを見ている
『あ〜なんか勢いで泊まろうと思って、荷物持って来ちゃった』
「そうなんだ、嬉しい」
俺の想いが嬉しかったのか、先程まで泣いていた霞に少し笑顔が戻った
『大丈夫か?着替えはあるけど布団とかさ』
「大丈夫、一緒に寝ればいいしそれに…」
霞が何か言いたそうにしている、頬を染めてるのでなんとなく感じ取れた
『昨日の今日だし、身体は大丈夫なのか?』
「ちょっとは違和感あるけど、でも龍司君としたい」
『わかった、とりあえず後で考えよう』
「うん」
家に上がりリビングへ移動した、荷物は一度置かせてもらって夕飯について相談をしようと思った
『ご飯は食べたか?』
「さっきまで散歩してて、帰ってからもパールといたから」
霞が少し暗い表情になる、俺はそれは見たくないなと思い提案をする事にした
『それなら一緒に、夕飯を作ろうか』
「いいの?龍司君がいいならやりたい」
『ああ、冷蔵庫見せてもらうな』
霞に許可をもらいキッチンの冷蔵庫を開ける、冷蔵庫の横には大きめの冷凍庫があり、そこには高そうな肉とかがあったが手をつける気にはならなかった
『とりあえず卵はあるな、これはゆで卵にして切ってサラダに添えようか』
野菜室からキャベツなどを取り出し洗う準備をする
(卵は結構あるな、牛乳とパン粉と先程の冷凍庫のひき肉も使えば出来るか)
『霞はハンバーグは好きか?』
「好き」
『よし、それにしようか』
今日は泊まる予定だから時間も沢山ある、一緒に作るならハンバーグは定番ではないかと思った
「はい、エプロン」
『おお、ありがとう』
霞から大きめのエプロンを受け取る、霞も自分用のエプロンを着けていた
『とりあえず玉ねぎをみじん切りにしようか』
野菜室から取り出した玉ねぎの皮を剥いてから洗い、まな板の上に置く
『そうそう、気をつけてな』
「うん」
霞が丁寧に切って行く、俺はフライパンに火をかけて炒める準備をする
『終わったら飴色になるまで炒めてな』
切り終わった玉ねぎをフライパンに開けて霞に任せる、俺はその間にゆで卵の準備と、米を研いで炊飯器をセットした
「これくらいでいい?」
『お〜、いいんじゃないか?』
程よく炒めた玉ねぎをボールにあけて、他の材料と混ぜた
『じゃあこれを手に持って、楕円形を作って空気を抜きたいからこうやる』
ハンバーグのタネを程よい大きさにして、両手の手のひらを行き来させる
「こう?」
霞も真似をするが、小さい手ではハンバーグのサイズも小さくなる
『ハンバーグの大きさはそれぞれでいいから、落とさないようにな』
「うん」
霞は不慣れなので丁寧にやっている、俺も霞と共にハンバーグの空気を抜いた
『いいかな?では焼くぞ〜』
お互い二個ずつ食べれるくらいの量があったので、もう一個ずつ作った。それを全てフライパンに並べて焼き始める
『両面が焦げ目つくくらいに火を通すからな、ゆっくり見てていいぞ』
フライパンを霞に任せてサラダ用の野菜を切った、ゆで卵もいい時間だったので、火を止めて殻を剥く準備で置いておく
『サラダは大皿に作って個別に取ればいいか』
「お任せします」
必要な皿を取り出しゆで卵の殻を剥いてから切り、サラダを盛り付けてリビングのテーブルの上に持って行く
「これくらいでどう?」
『お〜いい感じかな?』
フライパンに水を入れてフタをする、蒸す間に他の皿やお茶碗を出しておいた
『よしこれで大丈夫かな、後はソースを作って終わ
り』
ハンバーグを取り出し、フライパンにケチャップとウスターソースを入れて仕上げる
「ご飯は大盛り?」
『そうだな、食べれると思う』
下校時に走ったので、気がつくと結構お腹が空いていた
「はい」
『ありがとう霞』
受け取ったお茶碗をテーブルに運ぶ、ハンバーグも完成したので二人で夕飯を食べる事にした
『いただきます!』
「戴きます」
霞と向かいあってご飯を食べ始める、ハンバーグを口に入れた霞には笑顔が出ていた
「美味しい」
『それは良かった、でも霞も作ったんだからな』
「うん、龍司君が来てくれて良かった」
霞の笑顔を見てると、自分の判断は間違ってなかったと思えた
『そういえば、結局親は帰って来れないのか?』
「今日は駄目だったみたい、でも日曜日は絶対って言ってる。祖父母は土曜日の午後に帰って来ると言ってた」
仕事だから仕方ないと言ってはいるが、霞の顔を見れば本当は今日会いたかったんだろうなと思えた
『また何かあれば隠さずに言ってくれよ、俺だけじゃない皆がいるのだからな』
「うん、ありがとう」
日曜日の事は信じてるが、また霞の哀しむ顔は見たくないと思った
「でも帰って来なかったから龍司君が来てくれたし、ハンバーグも作れたから」
霞は作った夕飯を見ながら笑っている、それなら良かったけどと俺も笑顔になれた
「ご馳走様でした」
『ご馳走様』
「洗い物は私がするから座ってて」
食後霞が食器を持って洗いに行く、俺はその間にスマートフォンを取り出しメッセージを確認した
『うわ〜』
案の定、百合や母からお泊りの件についての注意と、他の皆からも心配の連絡が来ていたので返しておいた
ただ霞の事だからと説明をすると、節度あるお泊りをと釘を刺される程度だったのでまた帰ったら話をしようと思った




