一人の平日
「七度八分ね、無理をするからよ」
俺の耳に当てた機械を確認し、百合が呟く
『そんな事無いと思うけどなぁ』
昨日の夜寝る時は別に体調が悪いとは感じなかった、ただ朝起きるとやけに身体が重く感じた
「まぁむしろよく元気だったって感じかしら、過労じゃないの?無理し過ぎるから」
咳は出てないが、身体が重く感じて起き上がるのはきつい感じがした
「今日は休みなさい、ノートはこの鞄でいい?」
百合は俺の学生鞄の中身を見ると、それを持って部屋から出ていった
(あ〜、俺ってこんなに身体弱かったのかな)
普段からは運動をして鍛えてるつもりではいた、ただ精神的な部分で言えば自信はない
「とりあえずご飯は食べれる?お粥を作るわよ」
『あ〜ありがとう、食べておこうかな』
風邪というわけではないから薬は飲むことはないだろうが、お腹は入りそうなので食べておこうと思った
「じゃあ作ってくるから待ってて」
『ごめん、ありがとう』
百合が部屋から出て行く、気がついたら汗を結構かいていたので一度トイレと着替えをしておいた
(ちょっと今日は寝てるしかなさそうだな)
歩くのも辛いので、無理して学校に行くのは無理そうだった
「お待たせ」
部屋で待っていると百合がお粥を持ってきてくれた、ニラと卵のいい匂いと梅干しの存在が食欲をそそる
「ほら、あ〜ん」
『一応自分で食べれると思うけど』
「いいから食べなさい」
百合に言われて口を開くと、口の中に温かい物が入りいい匂いが広がっていく
「美味しい?」
『ああ、美味しいよ』
俺が食べる姿を見るのが嬉しいのか、全て無くなるまで百合に食べさせられた
『ご馳走様でした』
「いいえ、今日は一日ちゃんと寝てなさい」
『ああ、ちょっと身体が重いから大人しくしとくよ』
「熱はあるからね、水分取ってゆっくり休みなさい」
食べ終わった食器を持って部屋から出ていった、寝ながら横を見るとスポーツドリンクとコップを取りやすい位置に置いておいてくれた
(他の皆心配するかな)
目を瞑り寝ようとしてみる、お腹が満たされたのか眠気に意識が薄れていった
『んっ』
少し寝ていたようだ、寝始めてすぐに夢の中で誰かに呼ばれた気がしたが覚えてはいない
(午後一時か、結構寝てたな)
熱を計ると六度九分だが一時的に下がってるだけかもしれない、起きてトイレに行き汗で濡れた服を着替えた
(少しは良くなったけど、まだ身体が重いな)
寝起きでお腹が空いてる感じはしなかったので、部屋に戻り水分を取ってまたベッドに横になった
(ん〜、やはりまだ駄目そう)
また熱を計ると七度四分に上がっていたので、百合が帰るまで寝てようと思えた
(あ、そうだ)
もしかしてと思ってサイレントモードにしておいたスマートフォンを確認する、やはり皆からメッセージが来ていた
「龍司君いつもありがとう、今日はゆっくりしてね」
「ノートは取っておくから、ちゃんと寝てて」
「無理せずゆっくりしてください!お大事にね」
「学校終わったら皆で行くから」
皆からグループの方でも個別でも、メッセージが来ていた
(見たから既読ついたし、返しておこう)
各自へ個別に返してグループの方にも返信をした
『ありがとう、少しは良くなったよ、ノートありがとう』
こちらが返信をしてすぐに既読がついたので、皆待っていたのかもしれない
「ちゃんと寝てなさい、夕飯はどうする?」
百合からも返信が来た、まだ調子もよくないしまたお粥でもいいかもしれない
『熱はまだあるから軽めでもいいかな、お昼は食べてない』
「わかった、考えておくから寝てて」
百合からの返信を確認してスマートフォンを置いた、学校が終わってから来るにしてもまだ三時間はあるだろうから寝ようと思う
(ん〜いつもなら皆と過ごしているから、なんとなく今日は寂しいかな)
本来なら今日は桜と登下校をして、学校では皆と過ごしていたのだろう、休んで一人で過ごす平日は寂しく感じた
(なんかいい匂いがする)
意識が戻り目を開けると、目の前に百合以外の四人が座っていた
「あ、起きた?」
『あれ、今何時?』
皆がいるという事は学校はもう終わったのだろう、時計を見ると十六時を回る頃だった
「今日の部活は龍司君の部屋だよ、と言っても迷惑だろうから少ししたら帰るけどね」
心配だったから皆で見に来たらしい、俺は普段部屋にない四人の匂いで起きてしまったようだ
『お見舞いありがとう、今日は皆と過ごせなくて寂しかったよ』
「私達もそうだよ、朝高梨さんに聞いてびっくりしたんだから」
一葉が涙目になってこちらを見てきた、俺は笑って頭を撫でた
「あ〜お姉ちゃんズルい、龍司君、私と真白さんと黒音さんで分担してノート取っておいたから後でゆっくり見てね」
双葉が俺のノートを取り出してテーブルに置いてくれた、三人で今日の授業を書いてくれたようだ
『ありがとう、助かるよ』
「私も」
「期末考査も近いけど、無理はしないでね」
霞や桜もノートを取り出し、双葉と同じく重ねてくれた
『三人共ありがとう、ちゃんと見させてもらうな』
目が覚めて熱を計ったが昼頃とあまり変わってなかった、俺は横になったまま皆から今日の学校の様子などを聞いていた
「龍司起きた?」
百合が部屋に入って来た、俺の額に触れ熱を計って確認した
「ほらほら、皆龍司と話出来たのなら部屋から出るよ」
俺の身体の事を考えてくれたのだろう、皆に部屋から出るように促す
『皆今日はありがとうな、明日は一緒に行こう』
「うん、ちゃんと寝てね」
「龍司君、お大事に」
「ゆっくり休んで、元気になって下さいね」
「また明日の朝来るからね」
「もう少ししたらご飯作るから、もう少し寝てなさい」
起き上がり百合からコップを受け取り水分を取った、また横になり皆が下の階にいるのを感じながら眠りについた
「今日はお風呂は厳しいから、明日の朝にシャワーを浴びなさい」
あれから二時間ほど経ち、百合に起こされて夕飯を食べた
『美味しいよ』
夕飯はうどんを作ってくれた、体調と胃の事を考えて作ってくれたそうだ
「食べ終わったら身体を拭くね、ゆっくり食べてていいから」
そう言うと百合は一度部屋を出て行った、少ししてからまた着替えなどを持って部屋に来てくれて、俺を起こして身体を拭いてくれた
「皆心配してたから明日は元気な姿を見せれるように寝なさい」
『うん、ありがとう』
「私も心配だし、龍司が元気ないと寂しいわ」
そう言って、部屋を出て行った
(今日は皆に迷惑をかけてしまったな、また今度返さないとな)
今日は一人家で過ごして寂しい気持ちになった、これからはもう少し自分の身体の事も考えないとなと思いながら横になり目を瞑った
(皆、ありがとう)
テーブルに乗るノートを見ながら意識が薄れていった




