プロローグ
「あなたの事、好きになる人なんか、いるわけないじゃない!!」
長いようで、短かった六年間を卒業した春
期待と不安を胸に、入学した春
俺の新しい三年間は、入学して早々に終わった
俺こと高梨龍司には幼馴染がいた
いたと言っても、ある日事故にあって天国に昇ったわけでも、引っ越して会えなくなったわけでもない
【ただ他人になっただけ】
「おーす高梨」
『ああ…お疲れ』
「お疲れって…おっさんかよ!」
本日最後の授業が終わり、チャイムが鳴る中声をかけてきた東本大樹は、高校に入学して最初に出来た友人だ
きっかけは、休み時間に読んでた漫画の話題から始まったような気がする
席も俺の前だったから、友人になるきっかけは何かしらあったのかもしれないが…
「今日はどっちに、行くんだ?」
『あー、今日は木曜日だから漫研かな』
どっちという表現は、おかしくはない
俺達が通う桜木高校は、文武両道などと厳しい事は言わないが、学生生活を楽しむために部活への参加は必須
そのかわり、最大ニつまで掛け持ちしてもいい事になっている
飽きやすい人への逃げ道とか、人数が足りなくて潰れそうな弱小部への救済と、言われてたりもしてるが…
『東本はテニスだっけか』
「おぅ、入部したばかりでまだランニングしかしてないけどな」
体育会系の性というかなんというか…
新入部員は、ランニングと球拾いからってのが、イメージ通りらしい
(俺もアノ事がなければ、今頃一緒にやってたかもな…)
今更そんな事考えても仕方ないんだけど
「そういえばさ、俺の事は大樹って呼んでくれよ。俺も龍司って呼ぶからさ」
『わかった…大樹』
「おぅ、龍司!」
そんなやり取りをしてる間に、クラスメートは皆部活に向かったらしく、俺達しか残されてなかった
『そろそろ行くか、そっちは特に遅れたら面倒だろ?』
「あー、たしかにな」
それじゃあまたなと、大樹と共に教室から出て別れ、俺は漫画研究部の部室へと向かう事にした