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7話 私にしか見えない少女

「また黒い手形の犠牲者が」


休日の朝。

遅く起きてきた海衣は、テレビを点けてニュース番組を見て思わずそう口にしてしまう。


何でも名古屋市星ヶ丘の一戸建ての寝室で、夫婦が奇妙な死を遂げたとのこと。

その殺され方が先輩の時と同じだった。

それだけではなく彼方此方で似たようなことが起きている。


これらの事を偶然で済ますことなど出来ない。


「何かこの黒い手形の手がかりがあれば」


と思いながら親友の京花に手に持つアイホンのロックを解いてラインを開く。

京花にメッセージを送る。

程無くして返信が返ってきた。


『大変なことが起きてるね。分かっていることは強い怨みを持つ悪霊の仕業ではないかって』


京花も前に教えた情報以外はこれしかないようだ。


『危険が付くけど行けるとこまで一緒に調べてみる?』


「行けるところまで調べたい。先輩の死に追いやった存在を。それに何時か自分に来たときのためにも」


「了解。それじゃあ次の休みに早速調べよ」


こうして危ない調査が始まった。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


6月の終盤。6月にしては暑い日。

東京の月城学園と言うなの高校。


「いや~6月にしては暑いですね」


と職員室の自信のデスクで呟いた二年二組の担任。


「そう言えば栗花落(つゆり)先生ご結婚なさったそうじゃないですか」


栗花落と呼ばれた痩せ形の爽やかな先制は「実は…」と。


「妻のお腹に赤ちゃんもいまして。まだ先なんですけど」


「おお、それはおめでたいな」


そう祝福したのは隣のデスクで椅子に座る二年四組の担任の飯塚だ。


「朝からおめでたい話が聞けて嬉しいよ」


「学年主任」


嬉しそうに話しかけて来たのは、学年主任の大隈だった。


「最近は出来ちゃった婚も普通になりましたな」


「わたしらの頃はなかっわねぇ」


おじちゃん先生とおばちゃんの先生の頃は今とは違うらしい。


おめでたい話で盛り上がっていると、


キーンコーンカーンコーン。


ホームルームを知らせるチャイムがなった。


「では、本日も頑張っていきましょう」


と学年主任が言うと其々のクラスの担任は教室へ向かう。


教室のドアがガラガラと音を立て開けた。


「栗花落先生、おはようございます」


「浅谷さん、おはよう」


教室に入ると、入り口にいた赤茶色のミディアムヘアの少女が声を掛けてきた。

挨拶を返して先生が教卓に立ちホームルームを始める。


「みなさんおはようございます。それじゃあ出席をとります」


クラス名簿を見ながら一人ずつ名前を呼んでいく。

本日の欠席者や遅刻した生徒はいない。


「ここで連絡事項前にご報告があります」


そう栗花落が前置きし、


「先日お付き合いしていた女性と結婚しました。赤ちゃんも授かってまだ先なんだけど」


先生からの結婚発表を聞いた生徒たちの反応はと言うと。


「卒業したら告ろうと思ってたのに彼女いたんだ~。ガックシ。それに結婚。けど、ご結婚と奥さんの出産おめでとうございます」


「栗花落先生、ご結婚に奥さんの出産おめでとう」


「栗花先、おめでとう」


狙っていた生徒からは色々な感情か溢れているが、しっかりと最後はお祝いをしてくれ、他からも沢山のお祝いの声が飛び交う。


結婚報告をし連絡事項を伝えた。

ホームルームが終わると十分休憩に入り、休憩が終わるや否や一限が始まった。

一限目は日本史だ。



(私以外の女と結婚なんて許さない。私を選ばない先生も許せない。結婚相手も尚更赦せない。赦せない。赦せない。あんな幸せそうな先生を絶対赦せない)


本気だった一人の少女は心の中で怨嗟(えんさ)を吐く。


ドス黒い感情。それは善くないものを引き寄せてしまうことがある。

そう、善くないものを――。


「今日からは近世の範囲には行っていきます――」


教科書で本日の授業範囲の頁を開いた栗花落が顔を上げた。


「いつの間に!? どうして小? 中学生がうちのクラスにいるんだい」


青いリボンの付いたセーラー服に、青いスカートを履いた小学生位な見た目をした少女が、席と席との間に立っていた。


その 少女が着ていたセーラー服はしわしわで黒い汚れが目立つ。


「栗花先、どうした~? 暑さで`変なもの´でも見た~?」


「そんな女の子いるわけ無いじゃん、先生」


「最近磯かしそうだから疲れてるんだよね」


どうやら先生以外の人には見えていないらしい。

一度めを閉じもう一度目を開けても消えない。


ただ強い視線だけが向けられている。

これだけは言える。友好的や好意的なものとは明らかに違う。


漸くするとその少女は消え、我に返った先生は授業を再開した。

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