2話 清水家
真冬のホラー開幕
黒い手形が玄関ドアに付いていたのは清水家だった。
清水家は父である凰太郎と母の雫々乃、と一人娘娘の訪永の三人暮らしだ。
「ほな、おかん、おとうはん、学校いてさんじます」
「おはようおかえり」
*おはようおかえりは京都弁で行ってらっしゃい
ランドセルを背負い玄関で振り返った訪永は、見送りに来た両親に挨拶を交わして家を出た。
「何やこれ。誰がこないなてんごしたんや」
玄関ドアにびっしりと付いた黒い手形を睨み付けて訪永は言った。
キツくぼやくと小学校へと向かっていった。
「ほな、俺も行ってくるわ」
「おはようおかえり」
見送る雫々乃と言葉を交わし鳳太郎は家を出る。
家を出るとすぐに不気味な黒い手形に気付き、
「どこのガキや! こないな不気味なてんごすんのわ」
と棘を吐く。
「どうしたのかしら」
そう言って外に出ると。
「雫々乃、これ見てみ。この黒い手の汚れ」
「まあ、何て酷い」
黒い手形を見て呟く。
「ほうは早よ仕事いき。この汚れはうちが取っとくし」
「後は任せとくわ」
妻に任せ鳳太郎は会社に向かう。
「ほな、始めよか」
先ず濡れた雑巾を使うもとれず、続いて、窓拭きクリーナーを使って手形を取ろうとするも消すことが出来なかった。
次にスクイジーを試すも取ることが出来ない。
更には洗剤等を使うも消すことが出来ない。
「消えんわ」
と消えない手形に渋る。
何をしても消えない黒い手形に一度置くことに。
それから時間が過ぎ娘が学校から帰ってきた。
「お帰り」
「ただいま。まだ手形取っとらへんかったん?」
「それが取れへんのよ」
玄関で出迎えた母に手形の事を言うと、出来事を話す。
気味悪くなり始めた娘は自分の部屋に行く。
暫くして雫々乃が晩御飯を作り始めた。
父が帰宅した頃には晩御飯の支度が済んでおり、すぐ荷物を自室に置いてリビングへとやってきた。
「あの不気味な手形取れへんかったんか」
「そやねん。何度もやったんやけど」
「しゃあない。そのうち取れるやろ」
と言って椅子に座った。
母がテーブルに料理を運び全てが揃ってから、席について食事をする。
テーブルの上には春キャベツの手作りメンチカツ、チキンサラダ、お味噌汁、おばんざいが並べられていた。
楽しい食事をし、その後ゆっくりと過ごす。
時が流れ娘の訪永が両親にお休みの挨拶をして先に寝床ろに就く。
続いて鳳太郎がおやすみの挨拶をして部屋へ向かう。
深夜過ぎてから雫々乃も寝床ろに就いた。
翌日も手形が消えることはなく。
黒い手形が付いて三日目。
「何やこれ」
朝起き上がって来た雫々乃。
雫々乃は朝食の準備をしにリビングの前に行くと、リビングのドアに黒い手形がぎっしりと付いていた。
「どないしたん?」
母の驚く声に目覚めさせられた娘が顔を出す。
遅れて飛び起きた父も顔を覗かせた。
「どないなっとるんや。昨日の夜までこんなもんなかったのに」
「ちょっと新聞取ってくるわ」
驚きを隠せない父に娘はそう言って外に出てすぐ異変に気付く。
大急ぎで新聞片手に肩を震わせながら来た。
「やっぱりあらへんかったわ。外のあの手形」
それを聞いてゾッとする両親。
勇気を振り絞った鳳太郎がリビングの扉を開けるも当然なにもない。
内心ざわつきが収まらないも朝食の準備をした。
「あれ? 手形が消えてる」
北海道から上京してきた海衣は、会社に向かう途中でその事に気が付く。
あれはイタズラだったのかな
と内心で思うのであった。
時は流れあっという間に翌日の夜。
カタカタ。
「誰? おかん??」
訪永は部屋のドアからする音に反応をし、近付いていく。
「こっちに来て」
と知らぬ少女の声がした。
「誰?」
ドアの前に来ると黒い手形がこびりついていている。
ぐりっ、
訪永の首に黒い手形が付き、直後力無くその場に倒れ込んだ。
雫々乃の部屋。
スヤァ
すやすやと寝ていると。
バンと言うドアを叩く音がした。
その音で目覚めた雫々乃は音のした入り口の方を見た。
部屋のドアに黒い手形が付いていることに気付く。
「ひえ」
起き上がろうとするが体が動かない。
「おいで」
と少女の声がし、黒い手形が雫々乃の肩に付いた。
悲鳴を上げるまもなくしに誘わられた。
嫌な直感がし目が覚めた父は部屋を出て逃げようとするが、
目の前の窓硝子に黒い手形が浮かび上がる。
「逃がさない」
そう少女が言うと、黒い手形が鳳太郎の首を絞めた。
翌朝連絡の取れない事を不審に思った会社の人が、三人の遺体を発見した。




