15話 悪い知らせ
月見里家の話最後。どうなるのか
翌朝。
気付くと月見里家の三人は眠っていたようだ。
「來加お嬢様、朝ですよ」
執事が起こしに来た。
パチリと目を覚まし、重たい瞼を強引に引き剥がして目を開けた。
伸びをして起き上がると。
「おはようございます。昨夜の声聞きましたか」
「ええ、お嬢様。私めも確かに聞きましたよ」
挨拶をして昨夜の声について確認し合う。
執事と共にダイニングには両親や外のメイド数人がいた。
「おはようございます。來加お嬢様」
とメイドの一人が言った。
「ごきげんよう。昨夜の声聞きましたか」
メイド達にも聞くが――、
「はい、女の子の笑い声を聞きました」
「気のせいかと思いたかったですが私も聞きました」
メイド二人も來加と同じ様に、あの少女の笑い声を聞いたようだ。
椅子に腰掛けると、來加のテーブルの前に先ずは焼き立てのクロワッサンが運ばれてくる。
添物に高級バターとラベイユの蜂蜜、それからパイナップルとパッションフルーツのフルーツコンフィチュールである。
次にボーンチャイナのティーカップに入ったダージリンが出された。
「昨日聞いた声ってのがあの黒い手形の持ち主って事なんだな」
香ばしい香りのクロワッサンを、恐怖した顔で劤平が言う。
「ここまでこれば安全だと思ったのに」
「來加。あなたがネットで教えてもらった事が確かなら…」
ボーンチャイナのティーカップに口を付けた茂七子が、唇を震わせながら口にした。
「除霊が危険な悪霊に追い詰められていると言うことでしょうか」
美味しい筈の食卓が、一瞬にして凍えた事を肌で感じた。
この恐ろしい思考を言い返すことなど出来る筈がない。
豪邸に呼んだ霊媒師に、あのようなことを言われてしまったのだから。
朝から暑いにも拘わらず、ダイニングは寒い空間が続く。
紅茶もすっかり冷めてしまい。
飲み干す。
朝食を済ませてから部屋に戻りまったりと過ごす。
歯磨きや洗顔、着替え等済ませてから午前中は軽井沢レイクガーデンを家族と使用人一人と向かう。
來加は麦わらロリータボンネットを被っている。
広大な湖を中心に広がる庭園を、湖では睡蓮が彩っていた。
他にも百合や蓮華昌磨も咲く。
薔薇の二番花を楽しむ。
月見里家は内心では楽しめていないのは、言わずと分かるだろう。
気候も夏とは思えない程快適で涼しい。
軽井沢レイクガーデンを出ると、次に睡鳩荘の内装見学をし、軽井沢タリアセン内のペイネ美術館を訪れた。
ペイネの原画や展示物、アトリエ等を見て回った。
「素敵な展示でした」
「アトリエも素敵だったわ」
妻と娘が心なしとは言えそう思って貰えて嬉しそうだ。
それから少し遅い昼食を取りに、軽井沢プリンセスショッピングプラザに向かう。
遅めに昼食の場所はソースカツ丼の明治亭言う店だ。
使用人を入れて四人は向かい合うソファー席に腰を掛けて座る。
メニュー表に目を通しながら悩む。
「私はこれにしようか」
劤平が選んだのは、ざる蕎麦と牛タン御膳のようだ。
「私も決まったわ」
茂七子は信州アルプス牛の牛肉蕎麦とミニのソースヒレカツを選んだ。
「では、私も迷いましたがこれにします」
來加が指差したのは牛タン御膳だった。
「私も決まりましたでございます」
最後の使用人が豚カツカレーそばを選ぶ。
「すみません」
使用人が偶然通りかかった店員の女性を呼んだ。
「はい」
定員の女性がこちらの席に着くと。
「ざる蕎麦と牛タン御膳と信州アルプス牛肉蕎麦のミニのソースヒレカツ。それと牛タン御膳と豚カツカレーそばを下さい」
注文を口にすると…
「え~っと。ざる蕎麦と牛タン御膳がお一つと、信州アルプス牛肉蕎麦のミニのソースヒレカツがお一つ。牛タン御膳ごお一つと豚カツカレーそばがお一つ。以上ですね」
注文を確認し厨房へ向かう。
暫 くして料理が運ばれてきて、注文した料理が自分の前に並んだ。
「いただきます」
挨拶をして食べ始め…
ざる蕎麦を劤平は音を極力立てず、啜っていく。
葱と山葵の入ったつゆに少量麺を浸けて味わう。
「もちもちとしていて美味だ」
次に牛タンの乗ったお皿に手を付ける。
箸で牛タンを掴み口に入れて…
「うむ、信州味噌のタレが香ばしくて濃厚だ。味噌が肉に染み込んでいて凄く美味である」
信州味噌焼き牛タンを堪能した。
茂七子はまず最初にミニのソースヒレカツから食べる様だ。
サクッ、
「衣がサクサクでいて、この甘辛の特製ソースが染み込んでてジューシーで旨いわ」
満足そうに言うと。
信州アルプス牛肉蕎麦を自分の方に近付け、食してみた。
「甘辛い牛肉と出汁の効いたつゆが、お蕎麦の美味しさを引き立てていて味わい深くて美味しいわ」
お蕎麦の方も絶賛の様子。
來加も厚切り牛タンから食べていく。
厚みがあるにも拘わらず、柔らかく。噛む程の旨味が広がっていく。
「厚みがあるのに柔らかくて堪りません」
厚切り牛タンを堪能し、途中で野沢菜めしを挟む。
「塩分の控えめの野沢菜漬けがご飯と相性良くて美味しいです」
此方も気に入ったように見えた。
味噌汁の方も飲んでみた。
「出汁が効いてて生姜肉団子や葱もイケます」
絶賛らしい。
使用人も豚カツカレー蕎麦を食べ始め…
「特製の甘辛ソースとカレーの深みが良いアクセントになって、何よりお肉がジューシーでボリュームもあって大変美味しゅうございます」
使用人も満足そうた味わう。
四人は料理を堪能し、平らげて少しやすんで支払いを劤平が済ませ店を後にした。
別荘に戻る前に八風温泉に寄っていく。
森の風を感じる露天風呂で、各々ゆっくりと癒された。
別荘へ戻ると、現実と向き合う為為に、SNSで黒い手形から逃げられなかったと投稿した。
以前親切にしてくれた相手にのみ、DMに別荘の場所を教えそれから。
時間は過ぎていく。
太陽が雲に覆われ入道雲が発生。
軈て激しい夕立が起きた。
暫くして止んだ地面はぬかるんでいて外に出たくはない。
とは言え出ることはないから問題はないのだが。
夕立が去って太陽がまた顔を出すも、長くは持たず陽が傾き浅間山に沈む夕陽を來加は眺めていた。
そこへ執事が晩餐のお時間と呼びに参ったので、執事と二人でダイニングに向かう。
本日のシェフが作るメニューはジビエ料理のようだ。
信州野菜も料理と組み合わせてある。
夏鹿のローストに、鹿のパイ包み焼き、ジビエコンソメ、雉モモ肉のムース、脂ののった穴熊、イノシシのラグーリゾットと言うメニューだ。
三人の前に並べられ、劤平達は絶品料理を楽しむ。
食べ終わると部屋でまったりと過ごし、時間を見計らってお風呂と歯磨きを済ませた。
劤平が寝ようかとしていたここぞと言う時に、自宅の豪邸に残る老執事の東海林から電話が来た。
「東海林。どうかしたのか」
スマホの通話ボタンを押して一声を待つ。
電話の先の豪邸からはノイズと、ノイズに混じって聞こえる甲高い少女の笑い声のようなものだ。
「旦那様、hぁ…yぁ…kぅおnぃ…gぇ…」
ノイズが酷く劤平は上手く聞き取れない。
「何と言ったんだね」
聞き返した直後――ドサッと重いものが崩れ落ちるようそしてシュルシュルと音がした。
「これは只事じゃない」
劤平は直感した。
もう自宅の豪邸の方は手遅れだと。
部屋を彼は出ようとしたところ、別荘内の照明が点滅を繰り返し始める。
「何かヤバい事になってしまいました」
寝ようとしていた來加も異変に気が付く。
部屋を出て歩き出した來加。
その頃。別荘のダイニングにいたメイドが点滅する先で少女の姿を目撃した。
しかし動くことが出来ない。
金縛りのようだ。
少女は段々とこちらへ近付いてきて消えたかと思うと。
背後――耳元で
「此方においで」
黒い手形がルームウェアのあちこちに付き、首に手が掛かった。
少し経て手を離す。
首には黒い手形だけが付いている。
起き上がってきたシェフも同じように連れて逝く。
劤平がダイニングの方へ歩こうとした刹那、点滅と共に少女が姿を表す。
「止めるんだ。な」
金縛りに合い、身動きが取れない。視界から消え耳元で甲高い声で「あなたも此方おいで」と言って首をへし折った。
全身に黒い手形が付いていた。
「あなた、大丈夫。この点滅はヤバいから逃げま…」
部屋を出て劤平の亡骸を発見した茂七子。
妻の背後にはもう。
「逃がさないよ」
背後から甲高い少女の声が聞こえ、金縛りに合ってしまい動けない。
茂七子のルームウェアに黒い手形があちこちに付く。
するとシュルシュルと音がした。
「お母様、お父様」
照明の点滅する中、あちこちにそれが有るのを見付け震えつつあるいていると、遂に見付かってまう。
「見つけた」
点滅を繰り返す階段の下にそれはいた。青いリボンの付いたセーラー服に、青いスカートを履いた小学生位な見た目をした少女。少女は甲高い声で終わりを告げ…
背後に気付くといて、「皆のところへおいで」と。
全身に黒い手形が付いて崩れ落ちた。
少女はよ別荘からスッと消えていった。
次回は両サイド警察と接触




