14話 軽井沢の夜に笑い声を添えて
別荘の話メイン
月見里家が軽井沢の別荘に向かう前日。
早朝、メイドの一人が外掃除をしに外に出た。
すると玄関ドアに付いていた黒い手形が消えていた。
「心配しすぎだったようですね。すっかり消えて」
とメイドが安堵したように胸を撫で下ろす。
少し遅れて朝食を作る為にLDKに入ろうとしたシェフが、扉に付いた黒い手形を発見し、
「昨日まで外に付いていた筈では」
驚いたシェフの声が漏れる。
「どうかなされたのですか」
初老の紳士が背後から声を掛けてきた。
「東海林さん。これ見てくれ」
シェフが指差したLDKの扉を東海林と呼ばれた初老の執事が目を向けた。
「まるで段々と近付いてきておられるようですね」
東海林が朝から怖いことを言う。
だが事実だから笑えない。
それから平常心でそれぞれ仕事をこなす。
九時半を過ぎた頃、來加は起こしに来た執事によって起こされた。
ベッドから起き上がった來加はLDKに行く途中で顔と手洗いをし、今度こそLDKに向かうと。
「黒い手形が近づいてきてますね。今日を乗り越えれば良いだけですが」
彼女は独り言を言った。
家から離れていれば安全だと思い込んでいるから。
少しの不安を払拭して中に入って朝食を採る。
お金持ちらしい豪華な朝食を終えてから、ゆったりと一日を過ごす。
陽が傾き、赤色から段々と空がオレンジ色に変化していく。
豪邸を光の反射でオレンジ色に染めていった。
夏の暑さとは無縁の豪邸内は冷房が効いていて涼しく快適だ。
その頃にはシェフの作る晩餐を家族で楽しんでいた。
最初に出された前菜は桃とブッラータチーズの冷製カッペリーニ。焼き茄子のムース コンソメジュレがけ。
桃とブッラータチーズの冷製カッペリーニの方のは、生ハムとミントが添えられている。
「フルーツの甘味と塩気がバランス取れていてとても美味しいです。焼き茄子の方も絶品です」
來加が感想を言った。
続いて、メインの特選牛の低温ロースト 熟成バルサミコソースと、旬のウニと青じその冷製パスタが運ばれてきた。
「柔らかくてジューシーでお肉美味しい」
バルサミコソースの掛かったローストを堪能し、次にフォークとスプーンを使い冷製パスタに舌鼓を打つ。
濃厚なウニと青紫蘇の香りを堪能し大満足よ様子だ。
最後にデザートのパッションフルーツのムースとマンゴーのジュレが三人の前に並ぶ。
早速デザートスプーンを使い食べていく。
「酸味と甘味のバランスがとても良くて美味しいです」
來加が大満足そうに食べ進めていった。
食べ終わると、食後の紅茶が運ばれてきて、三人は味わう。
晩餐も終わり短い夜を過ごし眠りに就けた。
翌朝早朝。
執事の一人の運転で家族や使用人数名に、シェフと軽井沢は軽井沢でも、南軽井沢の方の別荘へと向かう。
途中一度休憩し、その次の休憩で名古屋の名神経由にある、ミクーニナゴヤというお店で昼食にする。
極上のフレンチのお店だ。
極上のフレンチを堪能し、また車は走り出す。
残り4時間掛けて南軽井沢へと到着。長旅が終わを迎える。
茜色に染まる浅間山を望む大自然が広がって、自然豊かで何より涼しい。
「着いたな。一年振りだ」
「ええ、毎年の事ですけど」
先に降りた執事がドアを開けて、月見里家の三人は降りていく。
それに続いて使用人達やシェフもぞろぞろと降りて地面に足を着いた。
別荘の方へ向かう。
別荘に辿り着くと、荷物を置いて使用人一人とシェフで
買い物をする為に、執事の運転で十分ちょいのところにあるアウトレットに向かった。
軽井沢プリンセスショッピングプラザにて、夜ご飯の食材の買い出しだ。
BBQの予定だ。
軽井沢プリンセスショッピングプラザのある方へ行き、そこの近隣のツルルーヤ軽井沢に方足を運ぶ。
BBQに使う食材を厳選してカゴにどんどんといれていく。
お肉は信州牛や信州ポーク、地鶏だ。
熟成肉のテイクアウトを相談した。
それから会計を済ませ執事の運転で南軽井沢の別荘へ戻って行った。
別荘では、月見里家の3人が長旅の疲れを取る為にまったりと過ごしている。
19時少し過ぎ。
まだ陽が沈みきってない時間帯。
別荘の庭にBBQの用意をセットし、シェフがどんどんと肉や野菜を焼いていく。
お肉の焼けて来たやつを、來加や茂七子、劤平の持ワサラの上に乗せていく。
ソースは高級なBBQソースのYAIBA。
「うむ、流石信州牛だ。美味である」
信州牛のリブロースを、YAIBAを付けて食べた劤平がお肉を絶賛した。
「これも焼けたのでどうぞ」
トングに乗った朝採れレタスとトウモロコシを三人のワサラの上に乗せていく。
「濃厚なソースの旨味がレタスとトウモロコシに合って美味しいわ」
満足な様子で茂七子はトウモロコシを味わう。
「信州ポークのカルビとキャベツも焼けました」
シェフがそう言って、來加のワサラに多めに入れて残る夫妻にもワサラの上に乗せる。
「噛む程に肉汁が溢れてきて脂の独特の甘味と、甘味と後から来る辛さが良いアクセントになっていてとても美味しいです。キャベツもソースの甘味とビリからで美味しいです」
信州ポークのカルビとキャベツを來加は堪能して、それからも三人は焼けたものをどんどんと味わう。
執事やメイドも焼け上がったやつを食べた。
締めは焼きそばだ。
シェフが麺を油でこんがりと炒め、具材を乗せて蒸し焼きに。
味付けはYAIBAソースを選ぶ。
これで完成。
月見里家の三人や執事、メイド、自分の分と均等に分けた。
醤油ベースの濃厚な旨味と甘味の焼きそばを美味しく味わった。
「ふう、沢山頂いた。もう食えん」
「私もお腹がはち切れそうだわ」
「私も食べ過ぎてもう何も食べられません」
三人とも満腹な様子で、他の使用人達も同じようだ。
少し休んでから、シェフとメイドが後片付けしているうちに、執事と別荘の中に入っていった。
別荘の部屋でゆっくりしてから母と娘はお風呂に向かう。
露天風呂からは夏の夜の景色を見ることが出来る。
洗い場で体と髪の毛を洗い露天風呂の方に行く。
「ここなら怖いことから逃げられて楽しく過ごせそうね」
「お母様の言う通りです。ここで怖いことは忘れて楽しい思い出にしたいです」
などと解放された気で暢気に話す。
肌に外気が触れ少し冷えるも、温泉の温度で調整され心地よい。
何処からか、クビキリギスの「ジーーー」と低く連続した音が声が聞こえて来た。
露天風呂から中に入って温泉に浸かってから洗い場で頭を洗ってからお風呂から出てから。
体を拭き、ルームウェアに着替えた。ドライヤーで髪を乾かしてから自分の使う部屋に向かう。
それから歯磨きなどを済ませて一日の疲れを取る為、眠りに就く。
静かな夜の南軽井沢の別荘周辺。
深夜、何処からともなく。
「ケラケラ」 と甲高い少女の笑い声が響き渡った。
その甲高い少女の声を聞き、月見里家の全員を寒気と恐怖が襲うのであった。
加速していく




