12話 月見里家
7月に入って2周目の金曜日。
広島県福山市にあるとある大きな豪邸。
この豪邸は月見里財閥の御曹司の住む家。
「お帰りなさいませ、旦那様」
使用人が玄関フロアで出迎えた。
玄関ホールは贅沢な広さを持ち、高価な絵画や家具、花や彫刻などが装飾されている。
「ああ、只今」
主てある劤平執事に挨拶を返す。
執事に鞄を渡すと執事が部屋に運んだ。
「スーツをお預かりします」
「ありがとう」
スーツを脱いだ劤平はメイドにスーツを渡した。
「ではお預かりします」
受け取ったメイドがそう言い、スーツを持っていく。
玄関ホールを抜けてLDKを抜け、洋室を抜けた先の劤平の寝室に一度寄った。
それから部屋を出た主はナウナから出てきた娘と遭遇する。
「お父様、お帰りなさい」
主に声を掛けたのは広島県内のお嬢様学校に通う中学二年生の娘來加だ。
「只今、來加」
と娘に挨拶を返した。
それから劤平はお風呂に入りに行った。
数十分程してお風呂から上がった。パジャマに着替え出てきたところで妻が寝室として使う部屋から出てきた妻の茂七子と会う。
「お帰りなさい、あなた」
「只今」
夫婦で挨拶を交わす。
一度寝室に戻って少し仕事をしていると使用人のメイドが呼びに来た。
LDKに着くと、雇っている専属シェフの作った料理がic-k並ぶ。
料理の置かれたテーブルクロスはシルバーカラーで机も椅子も高価なものだ。
テーブルにはガスパチョや翡翠なす、夏野菜の冷製パスタ風、夏野菜ソースの魚のポワレ、夏野菜のチキン煮込み、ご飯と言ったメニューだ。
「では、いただこう」
「いただきます」
「いただきます」
食事の挨拶をして食べ始め…
「美味しそう」
劤平の隣で少女の声が聞こえたから。
「來加、何か言ったか」
娘が言ったと思った主は訊ねるが「いいえ。私ではありません」と言う。
この家に娘は一人しかいない。
では一体誰か発したのだろうか。
美味しい料理を味わって食べていると、來加がLDKの入り口を見る。
そこには青いリボンの付いたセーラー服に、青いスカートを履いた小学生位な見た目をした少女が立っていた。
「お父様、そちらの方はお知り合いかお客様ですか」
と來加は尋ねるも、劤平は娘が何を言っているのか分からない。
「どうしたのかしら。私たちしかいないじゃない」
妻の茂七子が可笑しな事を言う娘に言う。
確かにここには執事やメイド、フェフを除けば三人だけしか居ない。
改めて少女のいた方を向いた來加。
しかしそこには誰も居ない。
「気のせいでした」
「疲れていたのだろう。中学生とは言え学業に部活、習い事をこなしているんだから無理もないだろう」
父の顔で劤平が娘に言った。
それから晩餐が進んだ。
お皿に乗った料理を全部堪能すると、メイドがお皿を回収してデザートを3人の前に運ぶ。
並べられたデザートは極上トロピカルムースとパイナップルとラムのケーキ。
こちらも専属のシェフの手作り。スイーツまで作れるのは凄い。
「流石、うちのシェフです。どちらも美味です」
2つのデザートを堪能した來加が顔を出したシェフに直接感想を言う。
「來加お嬢様のお口に合われた様で幸いです」
恐縮したようにシェフは言った。
3人が堪能し終えたのを見届け、メイドが空いたお皿を回収する。
「お粗末様です」
食事を堪能した來加は先に寝室に戻っていく。
残された夫婦で晩酌を楽しむ。
メイドや使用人も食事を満喫した。
程良い時間を見て晩酌を閉めて、夫婦は其々寝室に戻っていく。
翌朝。早朝。
玄関を開けたメイドの一人は、外の掃除から始めようと外に出た。
そのメイドが玄関ドアにに黒い手形が付いていることに気が付く。
「何てこと。一体誰がこのようなことを」
周りを見渡すが誰もいるはずがない。
何故ならここに入るには施錠された門を潜る必要があるのだから。
「兎に角、旦那様に見付かる前に汚れを取らなくては」
しかしいくら擦っても取れる気配が全くしない。
「困りましたね」
「どうかされましたかね、飾さん」
三十後半位のメイドの飾に声を掛けた白髪の執事。
「それがこれを見て下さい。いくら擦ってもこの黒い手形が取れなくて」
「どれどれ。確かに消えませんね」
白髪の執事も試すがやはり取れない。
色々と試してみるも全く消えなく渋る二人。
そこへ異変に気付いた主の劤平がやって来た。
「それが旦那様」
消えない黒い手形の付いた外の玄関窓を見せた。
明らかに子供の手形だ。
「おかしい。ここまてくるには門を潜る必要かあるだろう」
そう劤平が口にした。
可笑しな状況に疑問を抱く。
「お父様、どうかなされたのですか」
「來加。これを見たまえ」
玄関ドアに着いた黒い手形を、父は娘に見せる。
「メイドの話によると消えないそうだ」
「けど、お父様。ここは門を潜らないと入れませんよね。施錠もされてるのにどうやって子供が侵入したのでしょうか」
渋る顔の劤平に來加が疑問を問う。
「まあ、防犯カメラを調べてもらえば分かる」
A I人感センサーによるライト点灯、クラウド録画しているのだから。
妻の茂七子も異変に気付いてやって来た。三人はメイドや執事と一緒に録画した映像を見る。
しかし何も映っていない
センサーは感知しているにも拘わらず。
センサーが反応した直後に黒い手形が付いていた。
「あなた、これって」
「聞いたことはある、もしかしたらそれかもしれない」
震える声で茂七子が、隣に立つ劤平に何かを言い掛ける。彼もまた心当たりがあるようだ。
「お父様、お母様。それってもしかして」
と一旦区切った來加が続けて言う。
「黒い手形の呪い」
黒い手形のターゲットにされた月見里家の行方は。




