10話 それぞれの動き
遂に動き始めた三勢力
果たしてどうなる~?
早朝連絡の取れない栗花落を心配した学年主任が、自宅を訪問したところ寝室で息絶えた夫婦を発見した。
それから全校集会が体育館で開かれて、栗花落先生の死を知った多くの生徒が彼の死を悼んだ。
ショックを抑えきれず泣き出してしまう生徒もあちらこちらで見られた。
暗いテンションのまま授業を行うことが出来ず、下校となってしまう。
顧問を失ったボードゲーム部の面々もショックを抑えきれない様子だ。
「昨日栗花落先生と神社近くであってましたよね? それが原因…」
「別に変な理由じゃないよ~ 栗花落先生の様子が気になって見に行っただけだってば~。でも私がお祓いなんて進めた所為で···」
「お祓いってどう言うことだ」
昨日どうやら神社近くに小鳩も偶々いたようだ。
変な誤解と先生の死を関係つけられるも、原因は間違いなとも思う。
不知火の問いかけに対し美郷は、「それは」と一呼吸置いてから。
「栗花落先生悪い霊に取り憑かれてるみたいでさ~。親の知り合いを紹介したんだ」
「呪い…私の所為だ。先生が私じゃない女と結婚したことが許せなくてあんなこと念じたから。そもそも私の一方通行だったのに自分で勘違いして」
呪いと言う言葉で思い当たる節のあった恐神が、自責の念に駆られる。
「始まりはそうだったとしても、迦寿ちゃんの所為じゃないって~」
自責の念に駆られてる恐神を励ます。
「実は栗花落先生から見せられたサイトがあってね~」
そのサイトを開くと四人に見せた。
「このことと栗花落先生やお父さんの知り合いの神主さんの死は繋がってるんだ~」
その証拠に昨日と今朝の栗花落のことも載っていた。
「これ見て」
栗花落夫妻が変死体で見付かったニュースの記事のトピックがありそこを開き詳しく見る。
「きゃあぁ~」
小鳩が思わず悲鳴を上げてしまう。
現場の家の外の野次馬にいた少女が、写真にも関わらず顔か動く。
少女の顔が此方を覗く。
「今のは何なの」
「写真なのに動く何て変だね~。これが栗花落先生が言っていた少女かも知れないね」
震える口で呟く涼風に、美郷は心当たりがあるようだ。
「先生が死んだことは悲しいですが何時までもくよくよ」
と悒える恐神に小鳩が声を掛ける。
「みんな、栗花落先生のこと好きだったみたいだし、少しこの娘のこと調べてみる~?」
「別に私は好きだったわけではありません。ですが少し位なら」
「アタシも普通くらいでしたし。けど先生にあんな目に遭わせたやつは許さない」
(やっぱり好きだったんじゃん?)
美郷が諭す。
美郷の提案に二人は賛成のようだが、残りの二人は。
「オレも割りと気に入ってたし。あんなとこに巻き込んだ霊を赦さないぜ」
「そもそも私が憎悪抱いたのが原因だからケジメ付けないと」
全員ヤル気のようだ。
「じゃあ、早速調べてみよ~」
ボードゲーム部の五人は少女の霊について調べ始めた。
◇ ◇ ◇ ◇◇
「あのお隣の清水さんの事で聞きたいことがありまして」
最初に手形を目撃した清水家について調べ始めた海衣と京花。
「なんやあんたら、何調べとるんや」
「此処んところ起きてる事件と関連してると思いまして。何か気になったこととか。見知らぬ少女を見たとおかしな事があったとかか」
「かんにんえ。何も知らへん。警察も同じこと聞きにきはったけど。清水はんの事やったら津軽さん詳しいんとちゃうかな」
紹介された津軽さんの家に向かう。
「清水のことやったね」
家に入るなりお茶を出してくれ、ありがたく頂きそれを飲みながら。
「少女かは分からないけどなんかわからへん影をみたゆうてたわ」
「そうですか!? いつ頃か聞いてますか ?」
「確か例の黒い手形が現れる少し前ゆうてた」
「お話ありがとうございました」
どうやら前兆はあったようだ。
津軽にお礼を言うと家を出た。
「京花が言ってた少女は見ていないみたいだったね」
「やはり簡単じゃないか」
海衣と京花は調査を続けた。
△ ▲ ▽ △ ▲ ▽ ▼
京都府警。
「四月一日警部、他県でまた変死体が発見されたとのことです」
「何!? またか」
部下から報告を受けた目じわの目立つ強面な警部が、溜息を漏らす。
「他県の警察と合同で捜査して貰えるよう上に頼んでおく」
上からの承諾が得られ合同捜査会議が開かれた。
同様の事件が起き兵庫、名古屋、東京。それぞれ事件を担当した一課の刑事達が、こちらの会議室に集う。
ホワイトボードにはそれぞれ被害者の写真と詳細が書かれていた。
「それではこれより謎の黒い手形による連続殺人の合同捜査会議を始めます」
京都府警の天草部長の指揮の元合同捜査会議が始まった。
「まず京都の方からガイシャの清水一家ですが、死亡する以前変わった様子は有りませんでした。ガイシャ家族を恨んでいる人も見付かっておません。ただ、玄関ドアに奇妙な黒い手形を目撃したと言う情報しか得られませんでした」
「死因すら分かってへんのか?」
京都府警の若手刑事の報告に副部長が喚く。
「それについては現在捜査中です。この奇妙な殺しのトリック見つけ出して見せます」
若手刑事がヤル気を示す。
次に手を上げたのは、兵庫県警の女性刑事だ。
「自宅のマンションで黒い手形の付いて発見されたガイシャの波瀬朝衣花ですが、同じ部署の人に聞いたんですが特に変わった様子はなかったそうです。更にガイシャに恨みを持つ者もいなかったです。死因もまだ捜査中です」
女性刑事が報告を挙げた。
続いて手を上げたのは名古屋県警だった。
「引っ越したばかりの一戸建てで黒い手形が付いて発見されたガイシャの鶏冠井嵐丸と妻の鶏冠井喬女何ですが、会社のデスクに相談しようとしたのか相談内容がメールのところにありました」
「え~と、名古屋県警の栄刑事。相談内容のメールと言うのは具体的に言うとどのようなものだったのかね」
栄と呼ばれた中年の縁メガネを掛けた男性刑事に本部長が尋ねた。
「それが黒い手形に呪い殺されるのを助けて欲しいとか、助かる方法を考えて欲しいとの内容でした。信じて貰えないと思ってガイシャは送信を辞めたのかと」
「呪いなんてあるわけないじゃない」
周りの警察官が送ろうとして止めたメール内容を聞いて笑う。
最後に手を上げたのは池袋警察署の刑事の中でも年配の刑事だ。
「池袋水上宮神社で亡くなった神主と、それ時お祓い受け取ったらしいガイシャの栗花落麗仁も黒い手形がついて発見されたんじゃが。あんまワシは詳しくはないんだが、ガイシャのスマホの履歴に妙なサイトの検索履歴があったんじゃ」
と言ってそのサイトの内容をコピーした資料を渡す。
「ほおほお。やけにこのサイトの情報更新が早いな。このサイトの管理者の方は調べているのか」
本部長の問い掛けに年配の刑事に代わって、隣に座る後輩刑事が、
「それがサイトの管理者を調べたんですが、管理者の情報がなく端末も不明でした」
不明と言うことはどう言うことなのか。
このサイトは何者が作ったのだろうか。
疑問を残す。
「どれもこれも分からないことが多すぎる。だが我々で必ずホシをあげる。以上」
全ての現状報告を受けた本部長は意気込みを語り合同捜査会議が終了した。
謎が深まる