クエスト:ハネヘビを討伐せよ
すやぁ……はっ!寝過ぎてしまった。ご主人様に抱えられているがここはどこだろう?
「ここはギルドの前ですよ。間もなく7時の鐘がなります。」
──ゴォン──ゴォン──
「ほら。ちょうどギルドに依頼が貼り出される時間、つまりは第一回朝の依頼争奪戦です。」
第二回もあるのかな?
「第二回夕暮れ受付嬢争奪戦、第三回夜のビール争奪戦がありますね。」
賑やかだねここのギルド。と、話している間にご主人様は[Eランク依頼|場所:友愛の平原|内容:ハネヘビ五匹の駆除|証明部位:ハネヘビの尾|報酬:15000ニーク]と書いてある依頼書を取って、受注するためにカウンターに並ぶみたいだ。するとそこへ……
「おいそこのガキ!列を俺に譲れ!」
と、賑やかな奴がやって来た。この街の治安大丈夫?
「お断りします。」
「お前、Dランクの冒険者である俺に逆らう気か?」
Dランクかあ……ご主人様の1つ上だね。
「そうですか。貴方がDランクですか。なら私も明日にでもDランクに上がれそうですね。」
「あん?ガキが舐めた口聞いてんじゃねーぞ!」
しかしご主人様は無視を決め込む。周囲の人々に笑われるDランク君。
「てめえ無視すんじゃねぇ!」
しかしご主人様はまだ無視を決め込む。周囲の人々に更に笑われるDランク君。
「も、もう許さないからな!」
「貴方に許される必要を感じませんし……」
「こんのクソガキがあぁぁ!」
素手で殴りかかるDランク君。しかしその瞬間…
「せい。」
体の前に僕をつき出すご主人様。そしてそのままの勢いで殴りかかって来るDランク君の拳に猫パンチを入れる僕。
「ぐあああ!」
そして倒れるDランク君。この随分とシュールな光景に誰も反応しないのがここのギルドの治安の悪さを物語っている。ん、所でカウンターに居るのは……
「おう、昨日の嬢ちゃんか!」
登録時に居たおっさんがご主人様の相手をしてる。昨日は着けて居なかった首に掛けてある名札には、“ドラグ・アルゴ ランクA”と書いてある。
「受注お願いしまーす!」
「あいよー!……っと、これが資料だ。依頼、頑張れよ!」
「はーい。」
いざ、出発!で、友愛の平原ってどこ?
「ちょうど初期位置からこの街とは逆方向に進んだ辺りが友愛の平原ですね。」
「じゃあ飛べば50分位で着くのかな?」
「そうなりますね。」
────────────────────
ご主人様は無事に友愛の平原に到達出来たみたい。ここで、ざっくりとしたハネヘビのステータス(ご主人様が貰ってきた資料参照)をみてみよう。
[ハネヘビ]推定Lv.12-18
◇体力:G
◇魔力:G
◇攻撃力:D
◇防御力:F
◇知性:D
◇俊敏性:C
◇器用さ:D
◇運:D
~参考スキル~
〈熱感知Lv.30前後〉
〈瞬跳Lv.30前後〉
〈噛み付きLv.20前後〉
と、僕と似たような傾向のステータスを持った蛇であり、複雑なスキルは持っていない。しかし、名前の由来にもなった跳ねた上で加速する〈瞬跳〉というスキルが危険らしい。そのスキルで隠れている草むらから飛び出して来て突撃してくる。しかも、その攻撃をかわすと勢いのままに飛んでいくため、また周囲を警戒しなおさないといけない、厄介な敵だ。
「まあ貴方なら追い付けますが。」
「機動力勝負ならこっちが有利ってこと?」
「はい。飛び出して来てからでも対応は間に合います。」
「なら安心して戦えるね。」
ご主人様が水晶を生成しながら待つこと五分。
ガサガサ、ガサガサ……
と、草むらの動く音がする。
「お、来たんですかね?」
「来たっぽいね。」
ご主人様は僕を地面におろして、周囲に10個程の水晶を浮かべている。
「それ動かせるの?」
「はい。魔の掌握は魔力を操るスキルですからね。浮かせる位は簡単に出来ます。」
そこで僕が思い付いたことを言おうとした時、
「「「シャーッ!」」」
左側から二匹、右側から三匹の蛇が同時に飛び掛かってくる。
「スーパースピード!バウンティハント!壊速烈車!シャープクロー!……インパルスキック!」
その内右側の一匹の動きをバウンティハントで鈍らせ、別の右側の二匹目の元へ壊速烈車で飛び掛かり、飛び掛かられた蛇を足場に近くに居た右側の三匹目へ接近し、シャープクローを放つ。そして着地した後に最初にバウンティハントを掛けた一匹に蹴りを入れ、右側の三匹を全て仕留め切る。
ご主人様は、左側から飛び掛かってくる二匹の蛇の正面にそれぞれ水晶を浮かべ、そのまま爆破する。
「一瞬で終わりましたね。」
「まあ相手の耐久低いし。」
さて、後は死骸から尾を切り取って街に戻るだけだね。
「で、ナイフとか持ってきて無いように見えるけど?」
「持ってきてないので魔法の出番ですね。」
そう言うとご主人様は赤い刃を作り出し、ハネヘビ達から尻尾を切り取り、その尻尾を持ってきた布袋に入れて、丸ごと鞄に仕舞う。
「もうここに用は無いですし、街へ帰りましょうか。」
「そうだね。」