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猫とまたたびと未来視の少女  作者: カートス
第一章/未来、襲来

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19/21

冷たく、温かく、寒く、暖かい

 現在、大体午前8時。二人と別れた僕は、日の当たらない道をなんとなくで彷徨い歩いている。でも脚の裏から伝わる地面の冷たさはちょっと嫌だし、やっぱり屋根伝いに陽光の下を歩こうかな。


「んー?」


 しかし、屋根の上にはどうやら先客が居たみたいだ。丁度いいし彼等と話すか。

 朝日に照らされた屋根の上で並んで寝そべっている先客……三匹の猫に話し掛ける。当然、猫の言葉で。


『そこ、もう温かいの?』


『誰?お前。』

『温かいよー』

『眠い……』


『しばらくこの辺りに住む飼い猫だよ、もう冬は終わるのかな?眠いなら寝ても良いと思うよ。』


『この辺りは碌でもねえのばっか居るから気を付けろよ。』

『まだまだ寒いー』

『すー……』


『碌でもねえのって何?夜になると冷え込むよね、寝付くの早すぎない?』


『知らん。俺等を捕まえようとする奴だ。あいつらは阿呆だから俺の知る限りゃ誰もやられちゃいねえが。』

『夜はねー、リュウノタマゴさんと一緒に寝てるー』

『……』


 なんだそれ、この世界の人間が普通の猫一匹も捕まえられないなんてことある?


『そんな怖いのが居るなら注意して歩き回ろうかな、夜行性はどうしたの夜行性は、まあぐっすり眠りなよ。』


『捕まるんじゃねえぞ。余所者だろうがなんだろうがあいつらと比べりゃ仲間だ。』

『人間さん、お昼じゃないとごはんくれないのー』

『すぴ……』


『見つけたら追い払っとくよ、やっぱり人に合わせると夜行性とか言ってられないか、あっ君落ちる待って危ないからそこの平らな所に……』


『ま、俺等でも集まりゃ追い返せそうな奴らだ、時間の無駄だし適当にあしらっとけ。』

『お魚おいしいのー』

『うな……』


『猫を攫う理由ってなんだろうね……ここから港は遠いけどなんでここで寝てるの?あっこら折角運んだんだから寝返りを打つんじゃない』


『知らね。攫おうとしてんのに娘っ子一人居なくなってねーから俺が助ける必要もねーなんて初めてだよ。それにあいつら猫を捕まえようとしてんのに港町の方では見ねえし、ニオイもイマイチわかんねーしで気持ち悪いったらありゃしねえ。』

『リュウノタマゴさんがここで寝るからー、今から港へ行くのー』

『きゅう……』


 侠気あふれるこの猫は、普段から仲間を助けているらしい。


『この辺りに何かあるのかな……そのリュウノタマゴって何?大人しく寝ててね……』


『それも知らん。分かったらとっくに突っ込んでって引っ叩いとるわ。』

『この家のあったかい部屋でねー、リュウノタマゴさんが暮らしてるのー』

『すや……』


 最後の一匹はすっかり寝入っちゃったからもう話しかけなくて良いか。


『それもそっか。リュウノタマゴって何さ、もしかして竜の卵?』


『じゃ、変なのを見掛けたら教えてくれ。俺がぶん殴りに行くから。』

『人間さんがリュウノタマゴって呼んでたからリュウノタマゴなのー』

『……』


『分かった、見つけたら呼ぶね。あれ、どこ行くの?』


 リュウノタマゴについて思い当たることがあったのか、猫が一匹排気管の様な場所から屋内へ移動して行ってしまった。


『任せとけ。……俺の妹はいっつも変な事言ってるよなあ。』


『兄弟なんだ。』


『ああ。俺と妹二匹の三兄弟だぜ。今はな。』


 "今は"、か。あまり触れない方が良さそう。


『みつけたのー』


 毛先に霜を付けた妹が戻って来た。口には紙を咥えている。


『なにそれ。』


『なんだそれ。』

『人間さんが書いてたけど読めないのー、君とお兄ちゃんは読めるかもーって持ってきたのー』


 どれどれ。貼り付けられていたものを無理やり破り取ってきたのか、紙の左下の部分のみが切り取られているみたいだ。


"以 取扱上の注意事項。 の卵は繊

"・吸熱式暖房魔法の保守点検は不要と

"・追加の養分は全て袋に入れて変換装置に

"・養分の追加ペースが悪い場合は、第1孵化予

"孵化予定日を第2(来月1の節6の日)と想定して計画

"・第1孵化予定日以降決して養分以外の生命を接近さ


 ……最後の行は赤いインクで下線まで付けられている。


『読み込んでるがお前、人間の言葉が分かるのか?』


『分かるよ。』


『すげえじゃねえかお前。それでこそ俺のダチよ!』

『すごーい』


 いつの間にか僕らはダチになっていたらしい。


『で、どうだったんだ?』


『竜の卵を扱う為の注意事項、かな?しかも、もしかしたら今日孵るかもしれないって。』


 確か、今日は丁度1の節6の日だ。


『なるほどなあ。あ?待て、おい!』

『おー、もっかい見に行こー!』


 仕方が無いので、僕ら二匹は突っ走る妹を追い掛ける。

 通った狭い場所は石で出来ており、進行方向から風が吹く上に異様な寒さだった。しかも出口直前に魔法陣の様な物が2つ刻まれている為不気味さが増している。


『っぱここは異様だよな……』


 目的地である、ダクトを通り抜けた先の部屋。入ってみるとこの部屋1つが既に外周と比較しても広い。間違いなく、何らかの手段で空間が拡張されている。

 部屋は真夏の日中の様に暖かく、猫の目でなければ困る程には暗かった。

 そしてがらくたや魔法陣が刻まれた物体で散らかった部屋の中で最も目を引くのは中央、台座に置かれた竜の卵なのだろう黒い球体。

 若干動いているが、もしかして……今から孵ろうとしているのだろうか?


『動いてるー!』


 妹猫が無防備に卵付近へ飛び付くが、兄猫は反応が遅れ僕は生物を接近させるべきでは無さそうな記述が気になって、それぞれ一瞬踏み込むのを躊躇した。

 そして……今から孵る"彼"にとって、その差は随分と大きい物だったらしい。

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