「祝うべき旧友との邂逅だよ。」
港の周辺。漁師と買い物中の主婦、それに所属不明の人々で賑わっている。
「この辺りで何か食事を……」
「ねえ、ご主人様。誰かダッシュでこっちに向かってきてるんだけど?」
「……ふむ、ふむ?そんなはずはなきゃあっ!?」
誰かに飛び付かれ、相手に凭れ掛かるご主人様。
「やあ、音衣子。こんな面白そうなことに私を置いていくなんて酷いよ。」
そういってハンカチを差し出すのはブラウンの服に茶髪の少女、この子は確か……ご主人様の"良い方の"友達、るみちゃんだな。
「るみちゃんがなんでここに居るの?」
ご主人様が軽く捻った足元を気に掛けている内に話し掛ける。本来、この子は向こう……元居た世界の住民の筈だ。
「……猫が喋った!?……いや、私も同じ様な物だね。というか化け「ていっ!」「うにゃっ!?」モゴモゴ……」
「はーい、そこまでです。それはここで話す内容じゃないでしょう。」
「ああ、そうだね……」
いや、なにも口元に僕を押し付けて黙らせなくても良かったんじゃない?
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その後、元いた場所から少し裏路地へ入り込んだあたりの場所。
「この辺りなら……まあ、10分程は誰も来ないでしょう。」
「うむ、やっぱり音衣子の感覚は素晴らしいね。流石bla「そいっ!」「避け……あ捕まにゃー!?」ふがっ」
「いくら誰も来ないからって言って良いことと悪いことが有ると思うんですが……」
「ああごめんね、不注意不用心は四百年前から変わらなくてさ。」
僕を捕まえようとして、回避したと思ったら軌道修正して今度こそ捕まえられた僕をるみちゃんの口元に押し付ける、この間0.3秒弱。避けたのを捕まえるくらいなら自分の手で塞いだらどうなのかな……
「で、貴女はどうやってこっちまで来たんですか?こっちに来る方法なんてそう多くも無いと思うんですが。」
「お社からちょっとね。鳥居通って番人ぶち抜いてここまで来ちゃった。」
「貴女もですか。少女2人にすり抜けられるなんて世界の移動を可能とする要所の割にはザル警備では?」
「しょうがないよ。音衣子の前にお姉ちゃんがこじ開けて全部壊して行ったんだから。あっちの時空で後1週間は治らないんじゃないかな?」
「……あの世界とこの世界って時の流れとか違ったりするんですか?」
「……まさか君、何も知らないでここまで来たのかい?」
「私はあのタイミングで目を閉じて鳥居を潜ればこの世界に来るって未来を見ただけですし?」
「えっと……まあちょーっとこの世界の時間の流れが遅いってだけだから。」
「それならまあ、心配することも無いですね。その、阿呆と少女と化け狸に領地を荒らされた御狐様の心境に目を瞑れば…」
そのちょーっとが400歳超えの狸尺度であること含めて大問題だけど一旦置いといて、改めてるみちゃんの紹介をしよう。
るみ、本名イルミネーション。御年446歳の化け狸、本人曰く自身はここらで最も強大な化け狸で、得意分野は炎の扱いで苦手分野は変化などの化かす術。
最近やっと人化の術を修得したので人里に出てきて学生ごっこを楽しんでいて、学校で丁度日本にいたご主人様と出会いそのまま意気投合。
ただの狸が化け狸となるには長生きした上である程度の「理由」が要るらしく、さらに理由次第で妖力なども変動するらしい。
彼女が化け狸となった由来について、本人は「秘密」と言って口にしないけどご主人様は「年齢と本人の“最も強大”という言い分からして、それに見合う「理由」……察するに、本能寺の変的なあれに居合わせた、とかが由来なんじゃ無いでしょうか?」と言っていた。それを聞いた彼女は狼狽えていた。
また、イルミネーションには全く信用ならない類の姉がいる。その姉はそもそも種族が違うが……何故かお互いに姉妹であると言っていた。ご主人様はこれも本能寺の変由来じゃない?と言っていた。ご主人様の弁を借りれば「常識を代償に力を得た」ヤバい奴。
そして一番重要なのが彼女、イルミネーションの持つ特殊能力で、ご主人様が彼女が常人でない事に気が付いた理由、本人が記操天蓋と呼ぶその力。その呼び方そんなかっこよくないと思う。
それは“彼女の行動は如何なる手段でも予測されない”という能力であり、つまりそれは能力上、ご主人様の天敵である。対抗策はあるらしいけど。
この能力の影響範囲は広く、例えば彼女が外出した時、その行き先がどこであるかを「考えようとすることを意識する事」が出来ない。さらに、もしなんらかの手段の予測を用いたとしてもその結果に彼女の行動は反映されない。
ご主人様の未来視が世界の法則を悪用、あるいは盗用しているとすれば、イルミネーションの能力は世界の法則を書き換えていると言える。
妖術と併せて使いようによっては国一つは滅ぼせるとはある日のご主人様の談だが、本人が「和を以て貴しと為す」を座右の銘としているので今の所僕の知る限りでは国は滅んでいない。
あと僕はそれを聞いてからあの子を怒らせないように心掛けている。妖怪怖い……
「一人称は“ボク”だよ。」




