序文
彼女は予知能力者である。
貴方は、「未来予知」についてどれほどの知識が有るだろうか。
未来予知とは、その名の通り未来を見る術の事を言う。ここまでは日本語が分かるなら誰だって理解出来るだろう。
しかし、僕が問うて居るのはその領域の話ではない。例えるなら、“ラプラスの悪魔”と言うべきか。
自身が未来を創る。そういう世界の話なのである。
例として、歩いて買い物に出掛けるとしよう。
まず、家を出る。天気は勿論快晴だ。そして、最初の信号。ここでは、“偶然”彼女が通るタイミングで信号が青になる。
少し進むと、また、信号に出くわす。が、ここも偶然待ち時間無く通り抜ける事が出来る。
近道である公園を通り抜ける。少年たちがサッカーを楽しんで居るが、お構いなしだ。
案の定、ボールがこちらへ飛んできた。しかし彼女はコート内をただ歩いて居るだけにも関わらず、ボールは突風に吹かれてあらぬ方向に飛ばされて行く。ついでに、風により飛んできた帽子を持ち主へ投げ返す。帽子は、丁度口が開いていた持ち主の背負う鞄の中に入っていった。
彼女はそのまま一度も信号に引っかからず、無事にスーパーにたどり着いた。そこでは、今丁度御目当ての品のタイムセールが行われていた。
彼女が会計を終えると、一枚の福引のチケットを受け取る。2等のお米券10枚を引いた彼女は、しばらく米には困らないだろう。
さて、ここまで話を聞いた貴方はこう思うだろう。「あまりに都合が良過ぎる」と。
だが、彼女の未来予知とはそういうものなのだ。
“全ての発生しうる事象の中から最高の選択肢を選ぶ”。それが、彼女の未来予知なのである。
最高の結果が得られるその一瞬を、彼女の瞳は消して逃さない……但し、見逃した方が面白そうだった場合を除いて。