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【Ⅱ】#2 寡黙な“Bshop”も、時には饒舌に

 「えー、それでは第一回異邦探索会議を始めます。臨、議題は?」

 「雪の、魔術に関する仮説とボクの哨戒の結果報告だ」


 会議の議題を開始する前に、把握してないのかって言われると頭が痛くなる。さっさと開いて二人の話を聞いた方が早いのも理解している。しかし、後からどんな話をするのか聞いたほうがワクワクする気がして、毎回直前にこうして聞くのがこの会議の定番になっている。


 「じゃあ先に雪の魔術に関する仮説から聞こうかな」

 「ん」


 虚華は先にどちらから話を聞こうかとは、悩まない。虚華が議題を臨に聞いた時に、先に雪奈の話す内容を出した。だから、こうやって先に雪奈の報告から聞いている。

 こうすることで二人の中でどちらが先に報告したいかも分かるし、自分もそこで悩む必要も無い。

 それに加えて、どちらにも贔屓はしていないよとアピールも出来る。自分の興味だけで先に聞く報告を決めてしまえば、不満を抱え込ませてしまうかも知れないからだ。そんなのはリーダー失格と言われてしまう可能性まである。

 雪奈に話を振ると、普段はやる気があまり見られない雪奈だが、今回は「任せて」と少しだけやる気が全身から滲み出ている(気がする)。

 そんな気がするだけで、実際の所、雪奈の顔にはいつもの気怠げな感じしか見られない。


 「虚が言ってた、魔術の減衰感について。実際に減衰してる。臨も、哨戒で何か感じた?」


 掛けてもないメガネをくいっとする仕草をする雪奈が臨にそう聞くと、臨は何してんだアイツ?って顔をしながら口を挟む。


 「あぁ、確かに感じた。単純に探知魔術の詠唱速度も、効果範囲もディストピアと比較して落ちている。だから哨戒に想像以上に時間がかかった」


 二人が口を並べてそう言うのであれば、自分が感じた魔術の衰えというものも、こっち側に来た影響であると言っても良いのだろう。そう思っていた時に、雪奈が言葉を挟む。


 「簡単な仮説を何個か挙げる」


_____________


 雪奈が話していた内容は、恐らく魔術の造詣が深くないと完全には理解できない話だった。さっぱり理解出来なかった虚華は、全部を話し終えて満足気だった雪奈にお願いして簡単に纏めて貰った。ふぅと満足気だっただけに申し訳ないなぁとは思ってしまったけど、伝わってないから仕方ない。

 雪奈にマジで?って感じを出されたけどマジでごめんなさいと心の中で謝罪し、話した内容を紙に纏めて貰った物を手渡される。紙を渡された時には、かなりげっそりしていたので、後でなにかしてあげようと決心する虚華だった。


 (えーと、どれどれ……) 


・魔術や魔法。その素になる魔力はディストピアではないと思われる此処でも存在する。

 しかし、習熟による詠唱短縮や、火力の上昇補正等は全て失われている。


 これは多分自分でも言いたい事は理解出来る。ディストピアでは練習を重ねれば重ねる程、その魔術に対する造詣が深くなり、魔術式を編む時間が短くなる。それに加えて、込められる魔力もその魔術に最適化されていくので、火力も上がっていく物だが、それらの物がこちら側では失われている。と言いたいようだ。

 だから、虚華が部屋で初級炎属性魔術(ファイアーボール)を発動しても直ぐに火が消えたのも、習熟度の問題だろうと、雪奈は考えているようだ。

 雪奈も普段ならかなりの時間を短縮して発動できるものも、詠唱を殆ど省略せずに発動している辺り、かなりストレスを感じているようなので、対策を考えている……とのこと。


・自身と虚を実験体に様々な事をしてみたが、此処はディストピアではない何処かであると推測する。

 自身を自身の魔術で負傷させた所、痛みなども感じ、治癒も正常に作動した。使えなくなった魔術は今の所確認できないが、詠唱が面倒なのは割愛する。


 この項目は、この場所が何なのかを、雪奈は魔術関連で自分なりに仮説を立てたということだ。もし仮に此処がディストピアならば詠唱短縮等が使えるはずだし、痛みなどを感じ、治癒などが出来ている時点でゲーム等に類するものでもない。だから、確証は無いが、ディストピアではない何かとしか現状は言いようが無い。


 (私をさらっと実験体にしたって書いてあるけど、臨に何か言われないのかな……コレ)


 虚華を実験体にって部分は見なかったことにしよう。追求しても応えてくれそうにないし。臨に聞かれてまずいようなことをしていたら、また喧嘩になりそうだし。元気に動けて生きているなら、虚華は何だって良いのだと考えているので、特に追求はしないでおくことにした。

 

・ディストピアでは魔術の複数同時発動が困難だったが、こちら側では可能な事を確認できた。更には、効果の増幅なども出来る可能性があるため、研究に値する可能性が高い。

 又、ディストピアでは存在しなかった魔術やそれに類するものも数多く存在する可能性がある。


 雪奈がやけにこの会議での報告を興奮気味に話していたのは恐らくコレのせいだ。複数の魔術を発動することは、ディストピアでは実現不可能だった。

 理論なども雪奈が雄弁に語っていたが、虚華にはちんぷんかんぷんなので聞き流すことにした。うんうんと頷いてはいるが全く理解できていない。

 それでも雪奈が楽しそうに話しているのなら、虚華はそれで充分だった。

 結論から言えば、今まで出来なかった、出来なかったとされていたものが此処では出来る可能性がある。現にいくつかは実現しているのならば、雪奈としては最高の環境なのだろう。

 いつもの無表情で気怠げな感じも幾分かハイになっている。雪奈がそれだけ興味深いことで喜んでいるの見ていると虚華も自分のことのように嬉しくなる。


_____________


 「これで、あたしの報告は以上」


 雪奈は満足そうに報告を終え、次は臨の番。と自分は先ほどの位置へと戻る。虚華はニコリと笑顔で、臨は少し疲れた顔で簡単に拍手をする。

 話が長かったせいかは分からないが、少しだけいつもより元気の無い臨に、「次、臨の番だけど大丈夫なの?」と虚華が声をかけると、「任せろ」と元気を取り戻す。

 コホンと小さな咳を皮切りに臨の報告が始まる。内容は、


 「この付近に何かしらの集落などが無いかや、危険な存在が居るかどうか等、色々調べてきた。結果だが、此処から北に一時間ほど歩けば大きな街のようなものがあることは確認できた。危険な存在は、大きな狼や、見慣れない生物などが居るには居るが、そういった動物系が複数居る程度だ」


 三人で居て確実に危険であるといった存在は居ないと言って結論づけても良い。と本当に簡潔に臨の報告は終わる。 


 (臨は暗喩だけど、私一人じゃ危険だから安易に動くなって釘を刺した訳だ……)

 「二人の報告は以上だ。虚、これからどうする?」


 臨はそう虚華に問う。臨の報告と雪奈の報告を聞いている感じだと、この鬱蒼とした森の内部を三人で行動する事は特に問題はない。近くにはそれなりの人口がありそうな街が存在する。魔術は何か知らないけど興味深い事案が発生しているらしい。これが先程までの総括だ。


 「この森に長期間滞在しても情報はあまり得られないだろうし、その街に向かうのが一番だと思うから。行けるなら一度行ってみない?」


 そう言葉を選びながら二人に言うと、特に反論もなく、臨からは無言で紙を渡された。

 なにかと思って虚華がおずおずと開いてみると、それはよく書き込まれている地図だった。虚華が何かを言う前に、臨は地図を事前に書いて、その街までの行き方を既にルート化させていたのだ。


 「本当、仕事が早い参謀さんだね」

 「当然だ」


 虚華が素直に褒めると、臨は満更でもなさそうに鼻を鳴らす。表情は相変わらず無表情なのに、よくもそんな器用なことが出来るなぁとそっちの方向で虚華は感心していた。


 「あたしも、賛成」

 「その前に一つ虚に確認しておくことが合った」


 雪奈が賛成だと言ったので、満場一致で街に移動するかと宣言しようとした所で、臨に口を挟まれた。


 「なに?臨」


 そう短く聞き返すと、臨が少しだけ深刻そうな顔で虚に訪ねた。


 「“嘘”はこちらでも問題なく使えるか?」


 そう言われると確かに、まだ二人の前では使っていなかった。それは心配にもなるはずだと、虚華は納得した。


 (嘘が使えなきゃ、私なんか居る意味ないもんね)

 「大丈夫だけど、実演したほうが良いの?」

 「頼む」 

 「了解、じゃあ簡単に。“私の放つ一撃の弾丸に氷が宿る”」


 虚華はいつものように左手の人差し指を唇に添え、“嘘”を憑く。こうしなきゃ“嘘”が使えないわけではないけど、何故か毎回こうして静かにして〜のポーズを虚華は取る。

 臨が理由を聞いても「なんとなくだよぉ」としか返さないので本当に深い理由まではないのだろう。


 「じゃあ試し打ちしてみよっか。雪、窓開けて〜」

 「ん」


 雪奈にお願いして窓を開けてもらい、虚華は愛銃の一本である黒い銃「欺瞞」を窓の外の木に向ける。

 射撃する前にちらっと二人を見たけど、何故か自分よりも緊張している気がする。何でだろう?勿論、そんな空気感を感じるだけで、二人はいつも通りの振る舞いに見えるが、虚華には少しの違和感を感じたようだ。


 「じゃあ、早速」


 目の前5m先の木に目掛けて照準を合わせ、トリガーを引く。「欺瞞」のトリガーは他の一般的なハンドガンと比較して圧倒的に軽く引ける。虚華専用で使う用に作らせた特注品だからだ。だから、彼女以外には使えないけど、彼女が使う際にだけは圧倒的な使いやすさで弾丸を放つことが出来る。

 他の銃で虚華が狙撃をすると、マズルジャンプの反動で銃を落としてしまう事などがあったので、彼女は三丁の愛銃以外を扱うことは困難である。

 ダァンと銃声が森に鳴り響き、狙撃の痕跡として「欺瞞」からは薬莢が一つ排出される。目の前の木に残っている銃痕周辺には凍結の跡がしっかりと残されている。


 (良かった、ちゃんと“嘘”の痕跡は残っている)


 「コレでどう?もう一発撃った方が良い?」

 「いや、弾も魔力も今は温存したほうが良い。ありがとう虚」


 ちゃんと“嘘”が効果を出せた事と、射撃が出来たことをちょっとだけ嬉しく思った虚華は、ふふと小さい笑みを零す。


 (これはあくまで確認作業。こんな事で喜んでいてはリーダーとしての示しがつかない)


 真面目そうな顔で臨に再度撃つ必要があるかと聞いたが、大丈夫だと言われて、ホッと一息つく。

 臨が出発の準備をすると言い、哨戒に使用した物や荷物を纏めに虚華から離れると、先程まで少し距離を置いていた雪奈が近寄ってきて虚華にくっつく。


 「本当に万能、虚には魔術なんて必要ない」


 雪奈がそうやって頭を撫でながら褒めてはくれるが、正直素直には喜べない。

 今回使ったハンドガンは虚華の体に合わせて作られている愛銃の一本「欺瞞」その光の飲み込むような漆黒のボディには、本来の拳銃等に付いている物等を虚華専用に調整されて制作されている。

 マズル(銃口)も無ければ、マガジン(弾倉)やそれに類するものも付いていない。だからこれはハンドガンというよりかは、魔導銃と呼ばれるものに近い。

 魔術式を銃に組み込むことで、魔力の籠もった弾丸を狙撃することが出来る銃。魔導銃。その魔導銃を魔術を不得手としている虚華が“嘘”で色々補助して狙撃が出来ている。それが先程の確認だった。


 (魔術が得意な人ならこんなの使わなくても、銃だって使える……だけど)


 虚華にはそれが出来なかった、否、厳密には“嘘”を使わずには普通の銃で狙撃をすることすら困難だった。

 だから雪奈の褒め言葉を受けても、虚華は素直に喜ぶことが出来なかった。


 (私だって、“嘘”無しで銃を使えるようになりたいし、魔術だって使いたい。そうすれば……二人を守ることだって出来る。今までみたいに守られてるだけのお姫様じゃ嫌だ)

 

 「じゃあもう他には何もない?」

 虚華が「欺瞞」を仕舞い込み、二人に最期の確認だけどと聞くと、臨がはっとして虚華に聞いてきた。

 「透が此処に居るのなら、ボクらに酷似した人物がいる可能性がある」

 「あ……確かに、じゃあ行くのやめる?」

 「いや、何か顔を隠すものがあれば、虚は何か持ってるか?」


 そう言われても、ディストピアでは顔を隠した所で、バレる時はバレるので、顔を隠せるものは荷物の中には無かった。


 「んー。お面とかあれば良かったんだけど、私は持ってないや」

 「お面なら、ある」


 雪奈が自分の荷物をガサゴソしてると三つの白いお面を取り出して二人に手渡す。何で持ってるかは聞かないでおいたほうが良い気がするので、「ありがとう」と素直に受け取って被る。あんまりつけ心地は良くないけど、わがままは言ってられない。

 ……虚華はふと自分たちの姿を見やる。白い同じお面を被る子供が三人。


 「ねぇ、このカッコで街に入ってもどっちみち怪しくない?」

 「ん。じゃあどうする?」


 もう他にはお面無いけど、と虚華にどうするのかと雪奈が聞いてきて考える。魔術で顔を全部変えるのは、多分雪奈でも無理だ。そもそもそんな事ができたら、ディストピアでも割と何とか出来ただろうし。


 「雪、髪色を変えることは出来る?髪色が違えば他人の空似でやり過ごせるはず」

 「それぐらいなら、此処でも出来る」


 雪奈が短縮詠唱を用いずに何かしらの魔術を詠唱する。それなりに修練を積んでいれば、相手が何の属性の魔術を使っているのか、具体的な魔術までも分かる。しかし、虚華には残念ながらさっぱりなので、黙って詠唱を待つ。


 「出来た」


 そう短く雪奈が言うので、虚華は臨と雪奈を試しに見てみる。すると二人共髪色が変わっている。

 光を全部飲み込んでしまいそうな真っ黒な髪の毛だった臨は少し暗めの金髪に、燃え盛る深紅のような髪色だった雪奈の髪の毛は明るい茶色に変わっていた。でも自分の髪色を見れない虚華は二人に聞く。


 「二人共髪色変わってて新鮮だね!私は?私は何色なの???」


 二人は何故かお互いの方を向き、何故か頷いた後、虚華の髪色については言葉を噤んだ。その様子を見て虚華は「はて?」と首を傾ける。教えてくれないならいつか知れればいっか、と特に気にはしなかった。

 髪色程度で完全に誤魔化しきれるとは思っていないが、何もしないよりかはマシだろう。それに、透以外に知っている人間が居なければ、それはそれでいい。彼の住む場所から離れてしまえば良いのだから。

 この世界に透が、私達が死なせてしまった人々が居るのなら、「この世界の私達」もきっといる。

 もし、「この世界の私達」が存在すれば、私達の存在自体が「Error」だ。居るか居ないか分からない存在に配慮するのも変な話かもしれないけど、分からないのなら、悪い可能性に比重を重く乗せて状況を見たほうが良い。

 存在しないなら、存在しないで、自分達の髪色を偽って行動する必要がないだけ。幸い、今の所は此の世界に追手が来ていることは確認できていない。


 「まぁ、良いか。どうせ後で髪色ぐらい見れるだろうし。じゃ、行こっか。街の名前は何だっけ?」


 先程の虚華の疑問には目を逸らしたくせに、この質問には答えられるのか、臨が即答する。


 「ジアだ。蠱惑的な機械都市ジア……そう言われてるらしい。まだ実物は見たこと無いけど」


 蠱惑的な機械都市という単語にあまり惹かれない虚華はふーん、と臨の説明を聞き流す。

 ジアという単語に聞き覚えもないし、そんな地名も国も虚華は知らない。二人の報告も加味すると、かなりの確率で此処は地獄だったディストピアではないのだろう。今ひとつ現実味はないが、どんどん現実味を帯びていく非現実的な出来事に虚華は、困惑している。


 この鬱蒼とした森の中には林檎の樹や、情報だけ知っている食べられる果実が成っているから、此処に長期間滞在することも出来るが、一先ずは情報を求めてジアを目指す。

 虚華達三人はログハウスを出て、臨の地図を頼りにこの鬱蒼とした森を歩く。虚華は歩いている途中で見つけた林檎の木になる林檎を一つもぎ、がぶっと一つ齧る。別にお腹が空いていたわけではないけど、保存の聞かないものはさっさと食べてしまっていたディストピアでの癖のせいだろう。目の前に食べ物があるとつい手にとって食べようとしてしまう。

 それに満足に食事を取れてもいなかったので、栄養は取っておきたかった。


 (直さなきゃな……、此処はディストピアじゃないかもだし……あ、林檎美味しい……)


 此処に成っている林檎は瑞々しくてとても甘い。新鮮さはもぎたてだからだが、それを差し引いてもこの果実は美味しい。もっもっと林檎を咀嚼しながら歩いている虚華はふと思う。 


(どうしてこんなに美味しいものがディストピアでは無かったんだろう?)


 うんうんと色々考えはするが、虚華に答えが分かる訳もなく、今は目の前の物。ジアに辿り着いて情報を収集するのが先決だ。

 此処が一体何処なのか。ディストピアではないと言う根拠は徐々に増えている。だからこそ知らなきゃならない。

 期待よりも不安が募る虚華は臨と雪奈と共に蠱惑的な機械都市・ジアを目指し、此の森を抜けようと歩く。



 「虚」

 「ん?どした?何か合った?臨」

 「林檎、少しは残して。ボクらも食べる」

 「あ、ごめん。つい食べちゃってた」


 もっもっと今食べていた林檎を芯だけ残し、ぺろりと食べた虚華は手に持っていた残りの林檎を自分の鞄の中に入れ、一歩先を歩いていた臨に小走りで追いつき、隣を歩く。

 先程まで美味しいものを食べていた虚華は、満足気に臨の隣を歩いている。それを見た臨は呆れ半分と虚華の満足そうな顔を見られたことの嬉しさ半分で叱るに叱れない感情で二人を先導していた。



 その頃、魔術について考え事をしながら少し後ろを歩いていた雪奈は、虚華の食べ終わって捨てた林檎の芯に躓き、すてーん!と転んだ。

 雪奈が豪快に転けて、声も出していないのに、大丈夫!?と虚華が前から駆け寄ってきた。雪奈は嬉しさと怒りが半々で複雑な気分だった。けれど、まさか自分が不注意でかつ、虚華が食べた林檎の芯で豪快に転んでしまった事を知られたくなかった。

 だから何も言わずに虚華の髪の毛を爆発させた。ちゃんと火属性魔術だけではなく風属性の魔術も複合させて、安全に虚華の髪の毛を爆発させた。

 何も知らない虚華はなんでぇ……と半泣きになっていたが、答えを知っている雪奈は、何も言わずに、魔術の事について再度考え出して何も答えてくれない。虚華は臨にも聞いたが、臨は無表情なのに半目で「理由は自分で考えたほうが良い」と何も教えてくれなかった。




 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読ませていきました。  情景の描写がものすごく丁寧だと思います。 世界感を大切にしていてとても読みやすかったです。
2022/12/15 02:53 退会済み
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