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072.採掘場

──採掘場──


 わずかに遅れたペースで目的地である採掘場に到着する。

その為、天候も傾き始め、ポツポツと雨が降ったり止んだりと繰り返されていた。


 道中で、バカな速度を出して急カーブを曲がり損ねて河川に突っ込んだ

馬車の成れの果てと遭遇して呆れたりもしたが、

最初の暴走馬車以外で余計なトラブルに巻き込まれなかった事に感謝して、

ギルドから渡されていた入場許可証と合言葉を交して採掘場へと入場する。


 採掘場と魔物の巣がつながった事で警備が強化されたと言う入場門を(くぐ)り、

資材置き場に誘導されると運搬して来た物資を積み降ろす。


 敷地内には、採掘品や物資の手続きを行っている事務所と、

鉱夫達の休憩所を兼ねた食堂兼宿舎の施設と工房があった。


 工房は、それなりに広く作られていたようだが、

今は多くの人が集まっていて混雑していた。


 そこには、木材はもちろん金属の加工が出来る設備が用意されている。


 採掘時にトラブルが起きた際に、すぐに対処をする為の設備であるのだが、

鍛冶仕事が出来る一画は、魔物の討伐に訪れている多くの冒険者達の

損傷した武具の補修の場として開放された事で、人々が押し寄せ、

心得のある者達の手によってフル稼働していた。


「どうやら魔物の巣での討伐戦と、鉱夫達の救出は終わっているようですが、

オアイーターが出現して、その溶解液での被害が発生しているようです」


 サントスが、運搬物資の荷降ろしを終えて、

運搬完了のサインをもらった際に聞いた話と

工房の様子から整理した情報を伝えて来る。


「つまり、ここに残っている冒険者達は、

当初問題となっていたピックモールの討伐に成功したは良いが、

その後に現れたオアイーターが、撃退止まりとなった為、

警戒の為に新たに討伐依頼を更新して残った連中。って事になるのか」


「自分達の時は、運良く地表に現れた相手でしたからね。

坑道のような限定空間内での戦闘となると、

逃げ場が無いので、どうしても被害が増えてしまいます」


 マサト達は、鉱夫達の休憩所の一画を借りて、遅めの昼食を取りながら

情報の共有をする。


「まぁ、確かにアレはタフだし厄介な相手だよな」


「でも今のボク達ならダーハちゃんの熾輝夏砂(しきげしゃ)で、

一発で倒せちゃうよぉ」


「あのあの、でも穴の中って、いろいろなガスが出ていたりするので、

火属性の性質のある魔法を使うと危ないって聞いた事があるのです」


「そうだな。

ちゃんと空気の循環とガス抜きがされているのであれば問題は無いが、

それが不十分な環境だと引火の危険性がある。

そう言うのもあって、攻め手を減らされた冒険者達が苦戦したんだろうな。

もしオレ達が、坑道のような場所を奥に進んで行って戦闘になった場合、

ダーハは狐火の使用にも注意が必要になる。

そうなると使える魔法は砕維陣くらいになるな」


「そう言う意味では、ここの採掘場のような場所の方が、

ダンジョン認定されている所よりも厄介ですね」


「今日の牛さんとの戦闘でも思ったんだけど、

ボク達の個人的な戦闘能力って決して高くないんだよねぇ。

だから、牛さんの集団を相手にした時も、まーくんの作戦が無かったら、

馬車を壊されてボク達も巻き込まれていたと思うよぉ」


「狐火だけだと、倒すのに時間が掛かるのです。

大きな魔法だと、発動にちょっと時間が掛かって間に合わないのです」


「サンちゃんの射撃でも、一発で牛さんを倒せないものね」


「自分達の中で、あのクラスの魔物を一撃で倒せるのは、

ベスが背後からの不意打ちを決めた時くらいになるでしょうね」


「それだって接近戦だからな。今回のような場面だと有効な手段にはならない」


「そう考えると、マサトの空中からバッファローを撃墜して、

落下ダメージを与えるやり方は、数少ない最適解だったのかもしれませんね」


「あの場面だと、馬車からの引き撃ちが出来なかったからな。

ただ、次に同じ状況になったとしても、さすがに今回の再現は難しいな」


「ここ最近は、マサトやダーハの特攻が目立つ戦闘が多かった事と、

集団を相手にしても戦えていた事もあって、

自分達の実力を過信していたのかもしれませんね」


「あのあの、確かにイミュランとの二度の集団戦の時も、

オアイーターの時も、エルちゃんに助けられていたのです」


「人目に付く所でケダモノの力を解放する訳にはいかない以上、

それに代わる手段を身に付けないといけないのは確かですね」


「そうなると、ダーハちゃんが頼りかなぁ。

サンちゃんの射撃の威力を上げたりするのは難しそうだものねぇ」


「そ、そんな事はないと思いますよ……」


「ダーハの、挟撃魔法の火刺環手(かしわで)やオアイーター特攻の|熾輝夏砂《しきげしゃ」なんかは、

威力が十分にある訳だから、これらの威力と、

狐火が持つ展開性能と速射性とのバランスが取れた

中位の魔法があると良いんだけどな」


「じゃあ、ダーハちゃんは、ボクと魔法のお勉強だねぇ」


「は、はいなのです」


 マサトは、ダーハがハルナの魔法指導を受ける意思を示したので、

そこは二人に任せる事する。


「じゃあ、オレとサントスも魔物との集団戦に備えた対応策を

何か考えておくか」


 マサトは、サントスに向き直ると意見を求める。


「はぁ、本来、集団の魔物とは、戦わずに逃げるべきものなのですが、

この流れって戦う事を視野に入れた策って事なんでしょうね……」


「まぁ、これも一つの用心だ。

オレ達の場合は、策を練るか道具に頼るかになるだろうからな。

何か道具で補える物があれば良いんだけどな」


「そんな便利な物があるなら使っていますよ。

無いから冒険者は、魔物の集団と遭遇した時に逃げるのです」


「まぁ、そうだよなぁ」

 

 マサトも一朝一夕には、いかないだろうと思いながらも、

ネタを出しながら、サントスのストレージコートの中身と相談する。


 そしてネタが行き詰ったので、ハルナとダーハが魔法の話をしている様子を

覗って見ると、あちらはあちらで話が停滞しているようだった。


 そうこうしていると、表の方が騒がしくなって来た。


 ◇◇◇◇◇


「オアイーターが出たぞぉ!」


 一人の冒険者が休息所に応援を呼びに飛び込んで来ると、

仲間を引き連れて再び飛び出して行く。


 彼らは、坑道から逃げ帰って来た鉱夫達を追い駆けて、

採掘場に這い上がって来たオアイーターの前に立ち塞がり、

二人の剣士が注意を引き付け、他の仲間が弓矢を射掛け、火球を放つ。


 それに呼応(こおう)して、工房から多くの冒険者達が、

修繕が終わっていない武具を身につけて応援に加わって行った。。

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