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049.製錬都市エイジ

 ──製錬都市エイジ──


 陽がまさに落ちようとしている時刻、防壁の門の片側が閉ざされ、

残りの片側も最後の商隊の入場が終えるのを待つばかりとなっている最中(さなか)

マサト達は滑り込む様に門を抜けて製錬都市へと入る。


 製錬都市への入場手続きと共に、ガブリエルとアルバトロスの手続きも

一通り済ませ、魔物連れによる余計なトラブルの元を解消する。


 そして早速、ダーハが働いていた宿屋の女主人からの紹介があった、

とある場所へと足を向けた。


 ──お食事処ミン屋──


「おやおや、ダーハ。大きくなったねぇ。見違えたよ。

レジーナから色々と話を聞いてるよ」


 ダーハが狩猟都市の宿屋の女主人から手渡されていた

地図を頼りに訪れた大衆食堂。

 その中に入ると、今まさに猫の手も借りたいとばかりの様相(ようそう)(てい)していたが、

そんな中わざわざ奥から顔を出して来た恰幅(かっぷく)の良い女性が、

ダーハを見つけて話し掛けて来た。


「バーバラさん。おひさしぶりなのです」


「ああ、ちょっと顔を見せに来ただけだから、後はゆっくりしておくれ。

それと今晩は泊まっていきな。あたいも色々と聞きたいからね。

奥にある部屋に空きがあるから、荷物を置いたら食べに来な」


「は、はいなのです。ありがとうなのです」


 お互いに多忙で手が離せない状況を理解している為、

手短に連絡を済ませると

ダーハは、マサト達を隣接する従業員用の宿舎へと案内する。


 そこは宿舎として使われていなければ、

狩猟都市にあった宿屋の規模を小さくした様な造りとなっていた。


「もしかしてフェレースの宿屋って、

ここを大きくして宿屋にした感じなのかしら?」


 部屋の中に入り、見慣れた二段ベットが置かれた間取りに、

サンディが率直な感想を口にする。


「そうらしいのです。宿屋となる前のフォクスバットは普通の食堂だったのです。

でも、酔っ払ったお客さんに宿舎の一部を貸した事から宿屋を始めた。

って話を聞いた事があるのです。

あとバーバラさんは、レジーナさんの先輩なのです。

宿屋で何度か仕事の事を教えてもらった事があるのです」


「ふ~ん、そうなるとやっぱり、ここも子狐達の教育と訓練を兼ねた施設かにゃ」


「フォックスバットが、そんな感じだったものな」


「でも、まーくん。ちっちゃい子達を全然見かけなかったよぉ」


「たぶん中で食器洗いをしているのだと思うのです。

お酒よりもお料理が多く出ていたようなので、

洗い物の量がスゴイ事になっていそうなのです」


「それはそれとして、腹が減ったにゃ。食べに行くにゃ」


 部屋の確認と荷物置きを終えると、全員で大衆食堂に食べに向かう。

そしてベスが、遠慮の無い種類の料理を注文したので、

見かねたダーハが、専属のウェイトレスと化して厨房とテーブルを往復する。

その際、新人らしき子狐が自分の仕事だからと来てくれたのだが、

それがハルナの暴走を呼び起こし、子狐達見たさに追加の注文が飛び交う。

と言う迷惑行為が横行した。


 マサトも注意をしていたのたが、それ以上に女主人がハルナの思惑を看破して

激怒して来た事で、事態は終息して行く事となる。


 そしてハルナは現在、[流水]を駆使して食器洗いを率先して

協力するはめとなっていた。


 だがそれも、調子に乗って自動食器洗い機の如く、

圧倒的な食器洗いの技を見せた事で、子狐達の羨望の眼差しを一身に集める。

と言う結果が、もたらされた事により、

何とも言えないご満悦に浸れたハルナは、実に幸せそうであった。


 ちなみに事の元凶であったはずのベスは、ちゃっかりと難を逃れている。


 ハルナが子狐達に囲まれながら幸せな労働時間を過ごしている中、

マサトとダーハ、そしてサンディが、

別室でバーバラとの話し合いの場を持っていた。


 話し合いの内容は、お世話になる事に対しての謝意。

迷惑を掛けてしまった事への謝罪。

そしてマサト達の現状と、これからの事を話し合った。


「まぁ、オレ達の事は、こんな感じです。

急ぎ仕事がある訳でもないので、

滞在する為の定宿(じょうやど)を探そうと思っています。

あとは、せっかく鍛冶が盛んなエイジに来たので、

武器や防具を見て回ろうかとも思ってます」


「そうかい。

あんた達を見ていると、ここの金属を扱う防具は相性が合わなそうだけどね。

宿屋に関しては、うちの食堂の裏手に一軒あるんだけど、そこはどうだい?」


「そうですね。明日行ってみる事にします」


 マサトはバーバラの意見を聞きながら、明日の事を考え始める。

そして子狐達に対して、そろそろボロが出始めていた

猫っかぶりのハルナを、部屋に戻る道すがら回収した。


 ◇◇◇◇◇


「明日は宿探しをした後で、街中の探索をしようと思う」


 マサトは全員が居る部屋の中で、自分の考えを伝える。


「宿屋は、ここの裏手に一軒あるらしいから、

そこで問題が無ければ、そこに決めても良いと思う。

その後は全員で街中の探索に出ようと思う。

それと明後日は、休息日にする。

なんだかんだと移動に四日費やしたからな。

一度区切りを付けて、疲労抜きをしておこうと思うんだけど、

何か意見はあるか?」


「私は問題無いにゃ」


「あたしは武器を見て回りたかったから、丁度良かったわ」


「ボクも良いと思うよ」


「わたしも大丈夫なのです」


「じゃあ、(おおむ)ね決定だな」


「それで冒険者ギルドには、明日立ち寄るので良いのかにゃ?」


「そうだな。イミュランを大量に抱えているから、

さっさと解体してもらった方が良いんだよな」


「あれを私一人で解体はしたくないのにゃ」


「オレもさせる気はないから、その点は安心してくれ」


「まぁ運ぶのは、あたしとダーハのマジックバックって事になるから、

ある程度は、まとめて解体を申し込めるけど、

数が数だけに数回に分けて出さないと変な目で見られるでしょうね」


「あと分かっていると思うけど、

アンテロープとバッファローの皮も全て回収にゃ。

イミュランを含めて角や羽毛は売って良いにゃ」


「バッファローのお肉は売っちゃダメだよぉ」


「アンテロープのお肉も欲しいのです。

あとオイルを作る為のイミュランの脂肪も残して欲しいのです」


「え~と、まとめると回収する物は、

アンテロープとバッファローの皮と肉。

イミュランの皮と脂肪

そしてその他は全て買取ってもらって換金する。

これで合ってるか?」


「合ってるにゃ」


「そうだねぇ」


「はいなのです」


「はいはい、覚えたわ。

ベス、回収するイミュランの皮が多い気がするけど、

二回目以降は売っても良いんじゃない?」


「ちょっと考えている事があるから、それの目処(めど)がついたら売る許可を出すにゃ。

それまでは全てストックしておくにゃ」


「そんなに何に使うつもりなのよ。

まぁ、売るのは何時でも出来るし分かったわ」


「それじゃあ、あとは子狐の事を少し考えるかにゃ」


「わたしの事ですか?」


 冒険者ギルドへの狩猟品の解体と買取りについての話がまとまると、

ベスがダーハの事を話題に出して来た。


「エセ商人は武器探しをするって言っていたにゃ。

ここは鍛冶が盛んな所らしいから、

この機会に子狐の武器の事を考えてみたらどうかにゃ」


「あのあの、あたしにはベスさんに作ってもらったラーテルナイフがあるのです」


「ああ、商業ギルドで話していたヤツか。もう出来てたんだな」


「この前のイミュランの事があったから、

護身用に急造で一本だけ仕上げて持たせておいたのにゃ。

でもあくまで護身用だし、これからの事を考えるなら、

覚える技能の事も考えて、武器の事を考えておいた方が良いと思うにゃ」


「なるほどな。それじゃあダーハに合いそうな武器って何があると思う?」


「ボクと同じ後衛だし杖か、そのまま短剣かな。

身を守る為の小型の盾なんかも候補になるんじゃないかなぁ」


「単純に武器として使うのなら、

あたしと同じようにクロスボウや弓を使うのも有りかしら。

これなら敵との間合いを詰めなくても攻撃手段が確保出来るわよ」


「ああ、それも有りだね。ボクもダーハちゃんも大雑把な魔法が多いから

たまに後ろで何も出来ない時があったもんね」


「ただクロスボウなどは、一見(いっけん)良さそうに見えても、

射撃と魔法の切り替えの判断が難しいと思うにゃ」


「オレには良く分からないが、そう言うものなのか?」


「どちらでも攻撃が出来るってのが問題にゃ。

咄嗟(とっさ)の時に判断を誤りかねないから、オススメはしないにゃ」


「あとはサンちゃんが使っているのを見た事は無いけど、

槍ってのはどうなの?」


「オレは候補としては良いと思うな。

刀で槍に勝とうとすると、相手の三倍の技量が必要とされる。

と聞いた事がある。

杖の代わりと思えば有りだろう」


「候補としては、長物の杖と槍。射撃武器のクロスボウと弓。

自衛用の短剣と盾。この辺りになりそうかにゃ」


「短剣ならベスにゃん、それ以外ならサンちゃんが先生って感じだね」


「あのあの、いきなり言われても決められないのです」


「それは明日、ギルドの練習場に寄って、一通り試してみてからの判断だな」


 武器のみではなく、それを扱う技能を教えられるか。

を考慮して、ある程度の目処(めど)を付ける。

 あとはダーハの興味と適正、そして判断に(ゆだ)ねる事になるが、

それらを含めて明日まで持越しとなった。

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