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031.盗品回収

 ──遠征6日目の朝を迎えた──


 前日に引き続き多弁草探しを始める。

 行く先々でロックバグやロックイーターと遭遇する為、採取量が稼げない。

 代わりに、この二種類の魔物に対してダーハの魔法が有効に働いていた。


 ロックバグこと巨大ダンゴ虫に対しては、スカリーラーテルの時に使った

トランポリン魔法の『飛諸魏(ひもろぎ)』で、仰向けに引っ繰り返し、

腹を見せた所を皆で攻撃する。

 ロックイーターこと巨大ミミズに対しては、砂塵操作魔法の『砂維陣(さいじん)』で、

体表の水分を吸収し、皮膚呼吸を出来なくして窒息死させていく。


 これらの魔物の対応速度が向上した事により、広範囲の探索が可能となった。

 そしてベスが盗賊団の形跡を発見する。


「さて、何度も往復して踏み固められた跡を見つけたけど、どこまでするにゃ?」


 マサト達が盗賊団を探していたのは、依頼を受けていたからでは無い。

 単にマサトの思い付きによる物で、盗賊団を仮想敵とした追跡訓練であった。

 ゆえにベスは、訓練としてどこまで踏み込むのかを訊ねていた。


「ひとまず盗賊団の拠点になっている場所を確認したいな。

可能なら特徴と人数も確認しておきたいな。

ギルドに情報を売った時に確認が取れ易くなるだろうからな」


「分かったにゃ。基本的に私の後に付いて来るにゃ。

何か見つけたら、その都度教えるにゃ。」


 先頭からベス、マサトとダーハ、サンディとハルナ。

 最後尾をガブリエルが少し離れた形で追尾する。


 ベスが不自然に倒された倒木や、密集する樹林を見つけて指差す。


 真新しい倒木は、侵入者を足止めし、その様子を監視して発見する為の物。

 密集している樹林は、成長が緩やかで風で胞子が飛散(ひさん)(がた)い特性の為、

山林の境界線の目印に使われている物だと言う。


 そしてこの樹林が、追跡している足跡の近くに頻繁に生息していた。

 つまりこれは盗賊団に目印として使われている可能性を意味している。

 その事から盗賊団には、山林に詳しい者が居て、

ここより高い位置に盗賊団の拠点がある事が推測された。


「少なくとも、地の利は向こうに有ると見とくにゃ」


 ベスからの注意を受けてしばらく進むと伸びた雑木(ぞうき)に隠された

洞窟の入り口を発見した。

 そこは特に見張りも無く、中への侵入は容易に見受けられる。


「洞窟内が気になるが、さすがに深追いしすぎだよな」


「そフね。戻って来た盗賊団ホ鉢合わせ。なんて事になりかねなヒわ」


「全員で行った場合はそうかもなのにゃ。

ここは私とエセ商人とで調べて来るってのはどうかにゃ?

証拠品が有った方がギルドと話を付けやすいにゃ」


「サンディは、どう思う?」


「そフね。マサト達に周囲の警戒をヒてもらって、

あたしとベスとで素早く調べて来るのハら有りね」


 サンディがベスに同意した為、計画を組み直してマサト達は二手に分かれた。

 マサトはベスとサンディが洞窟内に侵入するのを見送り、

ハルナ達と周囲警戒に努める。


 ベス達が洞窟内に潜ってしばらく経った頃、少し離れて周囲を見張らせていた

ガブリエルが戻って来る。

 それを合図にマサト達は警戒を強め、近くの茂みに身を潜めて様子を覗う。

 すると数人の人影が視界に入ってきた。

 その者達は周囲を見回しながら、ゆっくりと歩み寄って来る。


「(まーくん、盗賊団が戻って来ちゃったよぉ)」


「(このままだとベス達が洞窟内で鉢合わせになるな)」


 この時のマサト達のほんのわずかな会話が、機先を(しっ)した。


 マサト達が潜んでいた茂みに弓矢が放たれる。

 これが切っ掛けに戦闘に突入した。


「視認6、『刃路軌(ハジキ)』」


『ブライン』『砂維陣(さいじん)


 マサトが放たれた弓矢を迎撃すると同時に、ハルナとダーハが、

向かって来る集団に対して目くらましを仕掛ける。

 視界を遮られた集団の足が鈍り、そこにマサトが刃路軌の追撃で

集団の行動に制限を掛けていく。


 視界を(さえぎ)られ、視認出来ない攻撃に(さら)された集団が、

背中合わせに密集して防御陣形を取る。

 集団が密集した事で刃路軌の吹き飛ばし効果が激減し、

その衝撃からマサトの位置を推測して、弓矢と魔法の反撃が繰り出された。


 互いに防御を固め、接近が困難な状況に推移して行く。

 だがマサト達にとって、それは問題にならない。


『アクアケージ』『砂維陣』


 ハルナが集団を水牢結界に閉じ込め、ダーハがその足元の地面を砂状化して、

まとめて埋没させて拘束する。

 その結果、地面から首だけが生えている集団が誕生し、口々に(さえず)り始めた。


「くっ、盗賊共め。お前達のアジトはすでに割れている。俺様達を解放しろ!」

「今こっちに後続が向かっている。逃げられると思うなよ!」

「俺達を敵に回すって事は、ギルドを敵に回すって事だぞ!」

「わかってんのぁ。ゴルァーッ!」

「すみません。ボクだけでも出してもらえませんか? も、漏れそうです……」

「おい、バカ、ヤメロッ!」


 どうやら盗賊団御一行様では無かったようだ。


 一応こちらの姿は、水牢結界でハッキリとは見えないように細工をしてもらい、

集団に声を掛けてみる。


「最初に言っておきますが、オレ達はアナタ達からの先制攻撃を

受けているんですからね。当然反撃するに決まっているでしょう。

そしてオレ達は盗賊じゃありません。

アナタ方が見向きもしなかった採取依頼を受けて、ここまで来た来た冒険者です。

確認も無しに襲撃して来たアナタ達を、こちらからギルドに差し出します。

覚悟しておいて下さい」


 マサトの声に集団が動揺する。

 しかし現状を理解していない集団は、自分達のランクより低い、

ランク制限になっていた依頼を受けているパーティだと(あなど)り、

尚も罵声を上げ続けた。


「バカめ。オマエ達の言い分などギルドが聞くものか」

「後からやって来る冒険者達がオマエらを捕まえてお終いだ」

「今なら見逃してやっても良いんだぜ」

「さっさと出しやがれゴルァーッ!」

「ゴメン、もう無理……」

「うぎゃーっ、生温かい物が伝って来たぁーっ!」


 おバカな集団にモラルハザードが襲来する。

 あまりにも頭が悪いやり取りに疲れて、一つだけ確認をする。


「この後、盗賊団退治の依頼を受けた

他の冒険者パーティが来るのは間違いないんですね?」


 放心状態になっているハザード君(仮)に訊ねてみる。


「素直に答えてくれたら、その不快感が取れる魔法を掛けて上げますよ」


 と言ったらアッサリ教えてくれたのでハザード君(仮)にだけ

『清拭』を掛けて上げた。


「それでは、アナタ達が言う後続のパーティを待ちますね。

念の為に立て札を立てておこうか。」


 マサトが『この者達は、冒険者を襲撃したギルドの敵対者である』

 と書いた立て札を地面に突き刺しいると、ベス達が戻って来る。

 そしてサンディが顔をしかめた。


 どうやらハザード君(仮)以外は、

以前ガブリエルに追われていたサンディを見捨てた

例の置き去りパーティのメンバーだったらしい。


 リーダーの名はギスノフ。


 腕力自慢のお調子者の脳筋と言うのがサンディの評価で、

多少強い魔物相手の狩猟であるなら有能と言う事らしい。


「共同依頼になってヒた盗賊団退治の依頼で、単独先行なんて有り得なヒわ。

大方、この辺りに盗賊団のアジトがあると分かって、

他のパーティより良ヒ品を懐に入れようとヒたのでしょうね」


 サンディは、ギスノフ達が鑑定に類する能力を所有していない事から、

見栄えのする物を抑えて置きたかったのだろうと、彼らの浅はかさに呆れていた。

 当然、その間サンディは彼らに見つからないように身を隠している。


「それで洞窟の中を見て来たんだけど、盗品の隠し場所になってたにゃ」


「こんな街道から離れた場所にか? 斜面もあるのによく運べたな」


「ここの盗賊団ハ、マジックバックなどの収納持ちを仲間にしてヒるみたヒね。

だから運搬能力と逃走能力を生かヒて逃げ続けれたみたヒよ」


「ところで、この盗品はどうなるのにゃ?」


「ギルドに報告ヒて、可能な限り持ち主に戻されるハよ。

その為の討伐依頼だヒ、ギルドの信用問題だハらね」


「どうせ一度無くした物なんだし、少しの間借りるくらいは……」


「止めてよ。そんな事がバレたらギルドに目ホ付けられるハよ。

どうヒても欲しい物があるハら、ギルドに申請しなさヒ。

ギルドも慈善事業では無ヒから、持ち主に買い戻させてヒるの。

でも全員が全員、ギルドから全てを買い直し出来るとは限らなヒから、

場合によっては、後々報酬とヒて融通されるハよ」


「分かったにゃ。それならエセ商人、ちょっと中古鑑定を使って物色するにゃ」


 ベスはサンディを連れてウィンドウショッピングに向かう。

 サンディも自身の中古鑑定の特性である、

通常の『鑑定』では確認出来ない能力を持つ品物を探す事に抵抗が無い為、

稼ぎ所と了承していた。


 そして残ったマサト達が昼食の準備をしていると、

盗賊退治の依頼を受けた後続の冒険者達がやって来た。


 こちらがたった三人と一匹で、

のんびりと昼食の準備をしているのを確認した彼らは、

リーダーを名乗るマウリシオが代表して、

親切に盗賊団への注意勧告をしてくれた。


 その対応を見て、こちらも今までの経緯と、

地面に埋没させておいた二次盗賊団の下に案内すると、

彼らは驚きと同時に感謝の意を伝えてきた。


「まさかギスノフ達を捕縛してくれているとは思わなかった。感謝する。

コイツらは、実力はあるのだが素行が悪く、ほとほと手を焼かされていたんだ。

その上、抜け駆けをしやがったんで慌てて追い駆けていた所だったんだよ」


「ああ、その事なんですが、オレ達の連れが、あと二人いるんです。

その内の一人が同じく迷惑を掛けられた事があるんですよ。

フェレースのギルド長のヒュージィさんにも報告してあるので、

その事を伝えてもらえれば適切な処分が下されると思いますよ。

ブラックリスト入りするとか言ってましたから」


「そ、そうか。分かった」


 フェレースのギルド長の名が出た為、彼らの間でマサト達に対する扱いに

わずかばかりの緊張感が生まれる。


 その後はベスとサントスと合流して、

マウリシオ達が連れていた鑑定持ちの立会いの下、

回収品の一部をこちらに融通して貰えるように交渉した。


「キミ達は最初の発見者なのに、本当にそれで良いのかい?」


「はい。オレ達では多くは持てませんし、この後も採取依頼が残っています。

すぐにギルドに戻れないオレ達に今必要だった貴重なマジックバックと、

いくつかの品を融通してもらえたので十分です。

ギルドに戻って報告した後で、買い戻されるような貴重な品だと、

持ち主の手に戻るのが遅れそうですし、それらの事は正式に依頼を受けている

皆さんにお任せします」


「そ、そうか、なるほど。まだアイアンランクと言っていたが、

フェレースのギルド長と面識を持てるだけあって、

いろいろと気が回るようで助かる。

これは我々と現場でやり取りした活動証明書になる。

ギルドに報告した時に提出すれば、問題なくキミ達の活動が認められる」


「ありがとうございます」


 マサトはサントスに確認してもらい活動証明書を受け取る。

 その後、ハルナとダーハに用意してもらった遅めの昼食を一緒にとり、

マウリシオ達との親交を深めた後、

マサト達はその日の活動を切り上げて廃村へと撤収した。


 ──廃村サス──


「このマジックバックは、誰が持つ事にするにゃ?」


 夕食を取りながら、今日入手出来たマジックバックについての

話し合いが持たれる。


「ベスとサンディ以外となると、やっぱりダーハで良くないか?」


「ええっ? わたしがもらって良いのです?」


「そうだね。まーくんとボクは、こっちをもらうね」


「まぁ、妥当かにゃ。そんでもって駄犬にはコイツにゃ」


 ダーハは、いきなり貴重なアイテムであるマジックバックを譲渡され困惑する。

 しかしながらハルナは上機嫌で、マサトとお(そろ)いの

年季の入った腕輪を手にして左腕に身に着けた。

 そしてガブリエルにもまた別の腕輪を二つ与えられる。


 今回、盗賊団の洞窟から回収して来たのは、八個の腕輪である。

 その内、サンディの中古鑑定で発掘して入手した一(つい)二組みの腕輪は共に

『収納』に分類される中古能力があり、

残りの四個は、なんの能力も有しないダミーだった。


 ガブリエルの両方の前脚に着けさせた二つの腕輪は、『盗賊の腕輪』


 その名の通り、盗賊が使っていたお古の腕輪で、

【触れた物体を対象にして腕輪に回収出来る】と言う中古能力を宿していた。


 この中古能力が宿るという事は、噂の盗賊団にかなり腕の立つ者が居たようだ。

 

 生きている人や動物、大きな物体の回収が不可能な点があり、

その収納容量は、二つ合わせてもベスの持つマジックポーチに及ばない程度。

 その事から持ち主は、スリの類だったのかも知れない。


 次にマサトとハルナが一つずつ分けた一組みの腕輪で、こちらも『盗賊の腕輪』


 通常の鑑定では、共に同じ表記にされるが、その内在する能力が

異なる物が存在するのが中古鑑定で発見される中古能力である。

 これは以前、ベスが職人として言っていた、

自身の手で育ててオンリーワンの商品を作る、と言う考え方に通じる現象である。


 そしてこちらの中古能力は、

【対となる腕輪と収納空間を共有する】と言う物だった。


 左右の腕に身に着ければ手品師として食っていけるのでは? と思える能力。

 もしかしたら逆で、手品師から身を落とした者の所有物だったのかも知れない。

 こちらの収納容量的も、ガブリエルの物と同程度である。


 結果的に収納能力で言えば、


 サンディ>>>ダーハ>ベス>ガブリエル=(マサト+ハルナ)


 となっている為、ダーハが申し訳なさそうにしていたのであった。


 しかしマサトが考えるに、子狐のダーハの小柄な身体に

負担が掛からないようにした方が良いだろうという判断と、

「ボク達はこっちで良いんだよ」と、

ちょっと変な雰囲気を(まと)い始めたハルナの事を察知したダーハが、

場の空気を読んで、マジックバックを受け入れた事で分配は終了となった。


「この腕輪なんだけど、鑑定したら『盗賊の腕輪』って出るのか?」


 ただ、鑑定の類で腕輪を見られた時に、

自分達が盗賊として扱われないかが気になり、サンディに確かめてみる。


「そフね。ギルドに戻るまでハ、そのままになるハね。

マウリシオのパーティから受け取った証明書と一緒に

ギルドで再鑑定ヒてもハって、正式に自分達の物になったら

ギルド立会ヒの下で鑑定洗浄をしてもらって、

元の名称に戻ヒてもらうか、改名するかになるハね」


「なるほど」


 一応区分の為に、ガブリエルの腕輪を『収穫の腕輪(ハーベストリング)

マサトとハルナの腕輪を『共有の腕輪(シェアリング)』とする事にした。


 そして盗賊団を気にしなくて済むようになった事と、

全員が収納持ちになれた事で、移動速度が上げられる事を考慮して、

採取範囲を予定より、もう少しだけ広く見積もる事にした。


「予備日を一日取ってハるけど、増やせて半日が良ヒ所かしら」


「食料は現地調達が出来ているのです。もう少し探してはどうなのです?」


「それの判断が出来ないんだよなぁ」


「多弁草の成長速度の問題だよねぇ」


「私は、あのスカリーラーテルってのが狩れるなら、滞在するのも有りにゃ」


「あと少し、あと少しってズルズルしている時に限って、

トラブルを引き寄せるものなんだよなぁ」


「明日になって、最初に採取に行った場所ホ見てから考えましょう。

昨日から一日置ヒて、成長ヒた物があるよフなら予備日を使って、

もう一度回れるかの判断をヒましょう」


「最悪の場合サンディの分を後回しにして、

先に依頼だけ達成させても良いかもな」


「マサト、ヒドイ……」


「そうすれば、後からもう一度戻って来て、

ベスも好きなだけスカリーラーテル狩りに集中出来るぞ」


「あっ、それは良いかもにゃ」


「ベス、ヒドイ……」


「サンちゃんは、黙っていれば美人さんだよぉ」


「ハルナもヒドイ……」

 

「サンディさん、薬湯をどうぞです」


「ダーハちゃん、ありハとう」(うるうる)


「ワウッ!」


「バック!」(こっち来ないでよっ!)


 サンディが寄って来たガブリエルを足蹴にあしらうも、

ガブリエルの方は従順に指示に従って後退する。

 結局、マサト達は結論を明日に持ち越し、早目に就寝するのであった。

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