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026.夜

【ガタァーーーンッ!】


 マサト達が立て篭もる古民家のドアがぶち破られる。

そこには、差し込む月明かりで照らし出された、【黒毛の四足獣】の姿があった。


「「「『ライト』・『狐火』・『モスライト』」」」


 ハルナ、ダーハ、スーランの魔法により周囲の光源が確保される。


「間違いあるません。私達が遭遇した大型のブラックウルフ、いえ人狼です」


 スーランが光源で囲んだ魔物を確認し叫んだ。


「お、大きいのです」


「じゃあ、いつものいくよ。『バインド』」


「ヤァでちゅ!」


 ハルナの足止めからのサントスの遠距離攻撃が始まる。

ただし今回サントスが使っているのは、毒を付与した矢弾。

これで人狼の自然治癒能力の阻害を狙っていく。

 サントスの矢弾をうっとおしく感じた人狼が、

ハルナのバインドに力尽くで抵抗する。


『ヴェノムズラッシュ』


 しかしながら、そんなスキをベスが逃さない。

ベスの両手に握られた二本の短剣が人狼の死角から襲い掛かる。


 それはベスの宝剣であるチキンナイフの

宝玉の能力を開放して得た複合技であった。


 その能力とは、

 一つ目が、宝剣を複製する能力。

 二つ目が、宝剣をイルネスナイフへ(不快な刃)と変化させる能力。


 一つ目の宝剣の複製とは、ベスが手にしている自身の宝剣を複製した

二本目の武器を出現させると言う能力である。

 複製された武器の方は手元から離れると、

短時間でその攻撃力を激しく減衰(げんすい)させて消失する。

 その為、実戦を想定した場合、

両手に宝剣を持った二刀流も考えられたが、ただでさえ攻撃力が劣る短剣を、

片手分の腕力しか掛けられない状態で攻撃したのでは、

魔物にまともなダメージが入らなかった為、狩猟時には敬遠されていた。

 また、投擲武器としても使いづらく、

二本以上を複製する意味を見出せ無かった為、

こちらの手段でもやはり実戦で使用される事は無かった。


 二つ目のイルネスナイフとは、状態異常を促進させる能力を有する短剣である。

 最初は毒の効果しか有していなかった為、

狩猟品の食肉をダメにし兼ねなかったので、こちらも封印状態だった。

 ただ現在では、毒と麻痺の状態異常の効果を有しており、

使用時に刀身から流し込む液体を切り替える事で

状態異常の効果を選択出来るようになっていた。


 ベスはイルネスナイフに、サンディの矢弾と同じ毒の付与効果を与え、

ヴェノムナイフと化した二本の宝剣を以って、

人狼の死角から二刀流での連撃を叩き込む。

そして人狼の自然治癒能力に対し、毒の状態異常を上書きしていった。


 一瞬の内に全身に毒が回った人狼が、床に膝を付く。


 それを見切りつつ、ベスは深追いをせず躊躇(ためら)い無く引く。

 何故なら、今回の戦闘で前衛は、

傷を負って再び人狼化を発症させてはいけなかったからだ。


 人狼は毒に犯されながら、忌々(いまいま)しげにサントスを(にら)みつける。

 そして魔法と射撃の遠距離攻撃に耐え、

バインドの足止め効果に抵抗し、効果切れと同時にサントスを強襲する。


「あまいっ!」


 頭に血が上り、単調に突っ込んでくる人狼の前にマサトが割り込み、

宝刀・蒟蒻切(こんやくぎり)を振り抜く。


 マサトの宝刀が、人狼に届く事無く空を切る。

 しかしながら、人狼はマサトとの距離を詰める事が叶わず、

逆に後方に吹き飛ばされ、その距離を開けてしまっていた。


 それはマサトが遠征前に身に付けた、

不可視の打撃攻撃を遠距離に放つと言う技【刃路軌(ハジキ)】による

吹き飛ばし(ノックバック)攻撃。


 距離を離された人狼は、再びハルナのバインドで足止めを()いられる。


 ◇◇◇◇◇


「ひどい戦いを見ました」


 スーランが見た対人狼戦。それはあまりにも一方的な戦いだった。


 人狼は、常にバインドでの足止めを強要(きょうよう)され、

バインドの効果切れに出来るスキを突き、強襲を掛けるも

マサトの刃路軌による吹き飛ばし攻撃で距離を詰めきれず、

再びバインドに(とら)われる。


 バインドの基点であるハルナの方を狙えば、

そこには事前に、設置型のバインドを始めとしたトラップが仕込まれており、

スキを見せた人狼にベスが不意打ちを仕掛けてくる。


 時折、マサトの刃路軌を()(くぐ)りサントスに迫る場面もあったが、

ハルナの引き寄せ魔法マージによって、緊急回避が成される。


 つまり事前に拠点化が(ほどこ)された古民家内であれば、

マサトとハルナが完全に空間を支配していた。


 スーランの目の前で、哀れな人狼が毒に犯され、火に焼かれ、

矢でハリネズミにされながらも、

持ち前の生命力が(あだ)となり、生き地獄の中を生き長らえている。


 スーランは、自分が人狼化しなかった幸運に心底感謝した。


【ウオォォォーーーーーンッ!】


 人狼が最後の力を振り絞って雄叫びを上げる。

 そしてバインドを強引に振り切り、壁をぶち破り逃走した。


 こうしてスーラン達の、この夜の戦闘は終了した。


 ◇◇◇◇◇


 古民家の壁を破壊して人狼が逃走する。


「サントス、ちゃんと撃ち込んであるな?」


 マサトは事前にサントスに指示しておいた追跡用の蛍光弾の確認をする。

 サントスは首を縦に振り、仕込み済みである事を伝えてきた。


「それじゃあ今度は、こっちの狩りの時間にゃ」


「まーくん、本当に容赦ないよね。きっと狼さん涙目だよ♪」


「わざわざ襲撃に来てくれたんだ。

仕留められなくても、しっかり観察一回分のチップを支払ってもらうさ」


「あなた方は本当にアイアンランクなのですか?

私のモスライト(光の蛾)を光源として使いつつ、

その燐光(りんこう)を追跡用に人狼に貼り付けておくとか、抜け目が無いですよね」


「こっちは、魔物の相手を専門にしようと思っているんで、

いろいろと考えているんですよ。

追跡の予備手段が欲しかったので、良い魔法が知れて勉強になりました」


 マサトはスーランに答えると、先行しているベスの後を追う。


【ウォ、ウオォォォーーーーーンッ!】


 再び遠吠えが響く。


 立ち止まったベスの背中に追いついた時、ベスは短刀を納め、

目の前で物言わぬ物体と化した人狼を踏みつけている

【白毛の四足獣】と対峙している事に気づく。


「ベスっ!」


 マサトがベスに声を掛けると、

白毛の四足獣は、ゆっくりと反転し闇夜に消えて行った。


「人狼は二匹居たのですか!」


 遅れて来たスーランが、白毛の大狼を見て驚愕する。


「う~ん、あれは違うのにゃ」


 しかしスーランの言葉をベスが否定する。


「ベスにゃん、どう言う事?」


「あれは【ダイアウルフ】にゃ。

人狼みたいに噛まれて人狼化する事は無いから放って置くにゃ」


「何を言っているんですか。

手負いとは言え人狼を倒す魔物ですよ。危険すぎます」


「そうにゃ、危険にゃ。

そこの人狼みたいになりたくなければ、ちょっかいを出さない事にゃ」


 ベスは無残に踏み潰された人狼を指差す。


「ダイアウルフは、強力な魔獣ではあるけれど、

繁殖力が低い為、絶滅したとも言われていたにゃ。

だから自分達に危害を加えて来る相手には容赦無く襲って来るにゃ。

逆にさっきのように、こちらが危害を加えない意志を見せれば引いてくれるにゃ。

話しが通じる相手にまで敵意を向けない事にゃ」


 そう言ってベスは、潰された人狼を調べる。

 その時、遺体から白煙が上がった。

 そして次第に人狼の身体が崩れていき、中から見覚えのある姿が(あらわ)となる。


「マーカス!」


 人狼の外皮が溶け落ち、中のマーカスの姿か現れた。


「あれっ、本当にこの人だったよ」


「意外と呆気(あっけ)なかったな」


「まさか本当にマーカスだったとは……

マーカスは直情的ではあっても、心根(こころね)は真っ直ぐな人間だったのですが……」


「スーランの知るマーカスとの違いが有るのなら、

それは人狼化の影響ってのがあるのかもしれないな」


「そうですね。

それでは、さっきのダイアウルフの事もありますし、

村の中を一度見回っておきましょう」


「じゃあ、私がひとっ走りして『人狼遊戯』が解除されたか、

外に行ってみて確認して来るにゃ」


 マサト達は他の者達の確認に向かい、ベスは閉鎖空間の解除の確認に向かった。


 ──そしてモーリスの無残な姿が発見された──

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