第七話 神器と力 その3
私事で更新が滞ってしまいました。
すみません。
ユーキが、静かに目を開けた。
「ここは...」
ユーキは、まだ僅かに微睡んだ意識のを徐々に覚醒させていった。
「そうだ、白いタクトをもらって...それから...」
ゆっくりと意識を失う前の出来事を思い出していった。
祖父であるフィアルが、魔族であり、自分に母親も魔族であった事を、自分が魔族の血を引く者だと。
「じいちゃんって何族なんだろう。魔族には、幾つかの種族があるって本に書いてあったっけ。」
「悪魔じゃよ。」
そう言ってきたのは、白を中心とした静謐とした一室に入ってきたのは白い髪をした初老の男性だった。
「じいちゃん...。じゃあ僕はハーフディアブルなの?」
「そうじゃ。起きたなら早く下へ来い。皆が待っておるぞ。」
「うん。」
そう言って、出て行ったフィアルの後をユーキは付いて行った。
二人が居たのはこの広大な屋敷の二階の一室だ。廊下も白を基調とした空間だった。
少し進むと、大きな階段が広がっていた。其処を下へ降りると、まず見えるのは、広大なリビング。その奥には、両開きの大きな扉。右側にはダイニングが、その奥にはキッチンが、繋がっていた。
左には、トイレや広大な浴場などが広がっていた。
時計を見ると、どうやら一日経ってしまっており、既に9時を回っていた。
「おはようございます,,,」
「おはようユーキ。」
「おはようユーキ君。」
リビングにはパルゥシアとその父親のフェファーンがソファーに腰掛けていた。
フェファーンは、40インチの大型テレビでニュースを見ていた。
パルゥシアは、何か考え事をしているようだった。
「まず飯を食え。」
そう言ってフィアルがキッチンの冷蔵庫からラップをかけられた皿とお茶碗を取り出した。
それらを電子レンジにいれ、待っていた。
出来上がったのは、今まで見た事のない白いつぶつぶした物と鯵に黒っぽい液体のかかった香ばしい匂いのする料理だった。
「このつぶつぶは、米と呼ばれるかつて日本国と呼ばれた統一連合領の地域の主食じゃ。鯵にかかっているのは、それまた旧日本国で生産されていた調味料の醤油じゃ。」
そう言って説明しながら、ダイニングにある机に並べていった。
「いたただきます。」
そして、ちょっと警戒しながらゆっくりとユーキは口に運んだ。そして口に入れると、目を驚愕によって丸くし、次いで口元を緩ませた。
「うまい...」
そう言って、次々と口に運んでいった。いつの間にか、皿の中はきれいさっぱり空っぽになっていた。
ユーキは、もう料理がなくなった事に肩を落とした。
「二人ともちょっといいか?」
そう言ったのは、フィアルだった。
「うん。」
「今日から三ヶ月間昨日渡した神器を使いこなす訓練を行うぞ。」
「「はい!」」
二人は、フィアルに連れられて外へと向かった。
外では、先日の南国のような気候ではなく、今まで感じていた肌を刺すような寒さを感じた。
二人は、思わず身をすくめた。
「まず、力の流れを読み取るために目を瞑るのじゃ。」
二人は、その場に腰を下ろし目を瞑った。
ユーキは、静かに自分の意識の深層へと潜っていった。
聞こえてくるのは、自分の心臓の鼓動と体を巡る血液の音だけだった。
周囲の音は一切聞こえず、自分の体内を外面から見ているかのような錯覚に襲われた。
血液の流れる中に白く発光する力と深紅の力が巡っていた。
それらは、決して鬩ぎあう事も交わる事もなく、体内を巡っていた。
静かに目を開けると、既に日は西へと傾き始めていた。
「おっ終わったかのぅ。」
「はい。」
その後もう一度先ほどの状態へと入っていった。
暫くして、パルゥシアは、目を開け、喜びを口にした。その声によってユーキは意識を覚醒させた。
「よし、次はその流れている力を腕へと収束させるんじゃ。」
「はい!」
パルゥシアは、元気いっぱいに返事をして取り組み始めたが、ユーキはというと首を傾げていた。
「白と赤どっちのやつ?」
その発言を聞いてフィアルは目を丸くし、次いで納得したような顔になっていた。
「やはりそうじゃったか。お前はハーフだもんのぅ。おそらくお前の中には事捻力と魔力両方を備えておる。今回は、事捻力を使うぞ。」
魔力とは、魔族が魔法を行使するときに消費する力だ。
フィアルにそう言われたユーキは、白色の力である事捻力を右手へと収束させ始めた。
すると体から力が抜かれていく錯覚に襲われた。
今にも失いそうな意識をなんとかつなぎ止め、右手を凝視した。
「召喚と言うのじゃ。」
「召喚!」
すると、白い力ーー事捻力が体内から流れ出て、収束しタクトを形作った。
そのタクトは、先日同様に、白い光を放っていた。
「できた...」
「よくやったのぅ。何度かやって直ぐに出来るようにするのじゃ。」
「はい。」
その後何度か繰り返しタクトを召喚していると、少しずつ速度が上がってきた。
そして、繰り返すごとに事捻力を抜き取られる感覚は、再びタクトを収納すると滝のように事捻力が流れて戻ってきた。
しかし、力の流れ込んでくる感覚によって少しずつ精神が疲弊してきた。
そして、精神疲弊寸前までそれを繰り返した。
最終的には、一秒足らずで召喚する事が出来るようになっていた。
パルゥシアもなんとか十秒あれば片方を召喚できる程度に成長した。
そんな二人を見て、フィアルは満足そうに頷いてた。
読んでいただきありがとうございました。