第五話 神器と力 その1
静かに雪の降り積もる中、白い縦に長く伸びた車。所謂、リムジンが走っていた。
その車内では、5人程が座れる大きなソファーが二つ向かい合って並んでいた。
そこには、二人の初老の男性と少年と少女が向かい合っていた。
「お前達には、奴らに対抗するためにとある物を扱えるようになって欲しい。それが何かは後で教えるぞ。」
「じーちゃん、このくるまはどこへ向かってるの?」
「今は、わしの別荘という扱いになるのか?そこへ向かっておる。決して人目につかない深い森の中に。」
「ふーん。そこで、二人でコーパスクさんにそのとある物をを扱えるように教えてくれるの?」
「理解が早くて助かる。」
しばらくして、森が近くなったとき、リムジンは大きな通りをはずれて、森の方へと向かった。
森の近くには、一つの巨大な施設が建っていた。リムジンは、その前で停止した。
近くで見ると、首が痛くなる程の高さの塔が二本と士官学校よりも広大な施設、戦闘機が多数配備された軍事空港が広がっていた。
「ここは?」
「ここは、軍の総司令部だよ。」
そう答えたのは、パルゥシアの父親である、総司令官だった。
彼は、ユーキがこの広大な軍事施設を見て、驚愕しているのを満足そうに眺めていた。
「そろそろ行くぞ。」
フィアルに急かされて、司令部の中で最も大きい施設へと入った。
中には、広大なエントランスホールが広がっており。天井は吹き抜けとなっており、上の階を歩く人々が点のようになっている。そして、横と正面に三つずつのセットでエレベーターが並んでいた。
中央には、円形になって、受付となっている場所があった。
正面のエレベーターの前に向かうと、ボタンの下に、手の形をした板があった。
司令官が手を当てると、青く光ってエレベーターが開いた。
中は、二十人程入っても結構余裕のある広さだった。
その中に四人が入ると、ゆっくりと扉が閉まった。
10Fのボタンを押すと、ゆっくりとエレベーターが動き始めた。
エレベーターが停止した先には、さっきまでいたエントランスホールが上から眺められる。
「こっちだ。」
そう言って、奥につながる横幅が5メートル程もある道を歩いて両開きの大きな扉がそびえていた。
そこの扉が、エレベーターと同じ様な板に手をあてると、自動で扉が開いていった。
その部屋には、正面に大きな執務用の机が置かれていた。その机の上には、書類の山が三つ程出来上がっていた。
「はあ。こっちだ。」
司令官は大量の書類を見て大きくため息をついた。
そして、四人が向かったのは左側にある小さな扉がついた部屋だった。その中にある、本棚の一冊を手前に引くと本棚がゆっくりと動き一つの梯子のついた穴が広がっていた。
司令官、フィアル、ユーキ、パルゥシアの順で降りていった。
一分くらいおり続けたのだろうか。そのとき、地面は目前に迫った。地下には、一台の車が置かれていた。
その車に乗ると、司令官はハンドル横の指一本分の穴に指を入れるとゆっくり事捻力を流し始めた。
すると、燃料のメーターが上昇し始めた。
満タンになると、穴から手を離し、アクセルを踏んだ。エンジン音は一切せず、聞こえるのは僅かなモーターの音だけだった。
そして、車に乗って三十分程したときに、車が停車した。
「着いたぞ。」
そこに広がっていたのは、一軒の豪邸と言っても過言ではない家と、果てしなく広がる草一つない地面だった。
「でっかい。」
ユーキは目を輝かせながら、豪邸を見上げた。
そのときにふと見えた空は、合金で囲まれた無骨な金属光沢を発する板だった。
「汚い空?天井?ね。」
「そうだな、これはどうだ。」
そう言って司令官は、リモコンのような物を持ち出して、南国と書かれたボタンを押した。
すると、家以外のすべてが動き出した、無骨な天井は青い空へ、草一つない地面は白い砂と青い海へと。
「すごい。」
ふと、ユーキは、暑さを感じた。
気温が少しずつ暖かくなっていったのだ。
「家に入るか。」
そう言って、四人は家へと入った。
その家に付いていた電子時計に付いている温度計は、30℃を超えていた。
「ここは、気温や環境を自由に変えることができる空間なんだ。これも魔族と協力したからこそできる技術だね。着替えや、食料などの生活必需品は、後続のトラックに積んであるからね。」
「もう渡しておくのか?」
「いやまた後でいいだろう。」
司令官とフィアルが小声で話していた。
そのあと、ユーキとパルゥシアに声をかけた。
「外に行ってもいいぞ。」
「「いいの。」」
二人は、目を輝かせながら確認をとり。
頷くのを確認してから、駆け出していった。
それを眺めながら二人の初老の男性は話していた。
「こんな平和な世界が続けばいいのにのう。」
「そのためには、各国の馬鹿共を止めなければなりませんね。」
「そうじゃな、あの方の息子であるあの子と、お前とあの者の娘である彼女を狙う彼奴らを軍に仕官するまでの間に殺しておきたいのう。」
「そうですね、魔族の元族長、フィス・コーシュ・ローデシア・フォン・ルックの父親であるあなたからしてみれば、あの少年は、七英雄の第一位『纏神』トゥウィンクル・コーシュとの間に生まれた、大切な孫ですからね。」
「そうじゃな。」
読んでいただきありがとうございました。
誤字脱字あったら教えてください。