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3話

今回はグレジオラス侯爵夫妻の説明でほぼ終わるので、話の進展がないです。

この家の闇っぽいところが少しでも伝わればいいなと思います。

突然だがここで、グレジオラス侯爵一家のことをお話しようと思う。

お父様は淡い金髪と琥珀色の瞳を持ったを持ったタレ目の優しそうな美丈夫だが、常に表情が変わらず何を考えているかよくわからない。

お母様は栗色の髪と青みがった緑の瞳は大きく、つり目がち。立ち振る舞いは優雅で美しく、これぞ貴族という気品がある美人である。

そして私の容姿は、二人のなんとも言えないところを受け継いでいる。

淡い金なんだか茶なんだが分からない髪に、薄い黄緑色の瞳。

…正直、色彩が淡すぎて印象に残らない。

よくよく見るとタレ目がちの瞳は大きくて、パーツの位置も程よいし、髪もふわふわの綿菓子みたいなのだが今一歩何かが足りない。

多分私の顔を見ても1回で、顔と名前が一致しないだろう。

…さすがモブである。


家族仲は悪く、冷めている。

お父様は言わずもがな、私の瞳が青でない時点で興味がない。

一緒の家にいるのに、ほとんど姿を見ない。

お母様は私を産んだ時に次の子が望めない体になってしまった。

だから私に青目の子供を産んでもらおうと考えているようで、顔を合わせるたびに「貴方はこのグレジオラス侯爵家を背負っているのですよ」と説いてくる。

我が子というよりは、グレジオラス侯爵家のただ一人の血統という認識を持っているのだと思う。

2人の婚姻は政略だったが、グレジオラス侯爵家の消えかけた尊い血統を復活させたいというお父様の考えに、お母様は賛同し尊敬をしていた。

なので愛情はなくとも夫婦仲は円満に過ごせるはずだったと思う。

…でも、お父様は違った。

お母様に次の子供が見込めないと分かると、そうそうに離縁をしようとしたのだ。

次の妻に青目の子供を産んでもらうために。

そんなことを言ったお父様に周囲は納得しなかった。

跡取りとなる私がいるのに何故離縁をしなければいけないのかと。

この世界は家督を娘が受け継ぐことも出来るため、私が生まれている以上跡取りの為に後妻を娶る必要がないのだ。

何の問題を起こしていないお母様を離縁することは、お母様ひいてはグレジオラス侯爵家の名に傷をつけることを意味する。

誇り高い貴族の意思を持つお母様も周囲も猛反対し、この件を白紙になった。

この一件で是が非でも青目の子供を欲しがるお父様と、私という後継ぎに青目の子供を産んでもらおうと考えるお母様との間で考えに亀裂が入った。

そして後妻を迎えることのできなかったお父様の次の行動が、ディオルという貴族と無縁の子供を養子にするというものだった。

自分に何の相談もなく、且つ貴族の血筋でもなんでもないディオルをグレジオラス侯爵家に迎えるなどお母様は当然許さなかった。

この瞬間、お父様とお母様の間にあった亀裂は修復することのできない溝になってしまった。

侯爵夫人の意地としてお母様は離縁はしなかったが、お母様がお父様を見る目から敬意が消え、軽蔑するような視線を送っている。

どうしても一緒に参加しなければいけない催し以外は、2人が同じ部屋にいるのを見ることがなくなった。

このように夫婦としても、親子としてもこの家の仲は最悪ということがわかっていただけたかと思う。

なぜ、こんな長い説明をしたかと言うと…

グレジオラス侯爵家は今、内部分裂をしております。



ディオルと私のどちらを時期跡取りにするかでお父様とお母様が対立してしまったのだ。

現当主であるお父様に真っ向から意見してお母様は大丈夫なのかと思ったが、お母様陣営にはお母様のご実家と、前グレジオラス侯爵であったお爺様も加勢をしてるようでお父様は孤立状態。

でもお父様はそんなことまったくお構い無しに、ディオルに教育を行なっている。

貴族の血筋をなんだと思っているのかと、誰に問われてもお父様は「青の瞳を持つものこそが真のグレジオラス侯爵貴族」と返答するという。

その狂信と妄執に、侯爵は青の瞳に呪われていると囁かれているらしい。

お母様も負けじと私に教育をしているのだが、私は屋敷から一歩も出ずに教育を受けている。

それはもちろんお父様の差し金である。

どうやってかは分からないが、すべてのパーティやお茶会などの招待状をもみ消しているようだ。

ディオルはお父様と一緒に次期跡取りとして、パーティに出席することもある。

その一連に対してのお母様の怒りは凄まじく、いつかお父様を視線で射殺すのではないかと言う形相をしてをいる。

それにディオルに対する態度も日々悪化している。

ディオルがいるからお父様は娘の私を跡取りとして見ないのだと思っているようだ。

多分ディオルがいなくても、お父様は私を見ることはないと思うが…お母様はそう信じている。

どうやってディオルを追い出すかを考えているようだがうまく行かず、イライラしている。

ゲーム本編ではまったく語らなかったが、モブであるエミュレットも大変な人生だなとしみじみ思う。

ドロドロなお家騒動の惨劇を繰り広げ、家族仲は最悪。

お母様からは「跡取りは貴方」と洗脳のような教育を受けている。

おまけに外にも出れず、毎日勉強とお稽古。

まともな子供だったら気がおかしくなりそうだ。

…もしかしたら、おかしくなっていたのかもしれないな。

エミュレットがどんな子だったか分からないが、7歳児にこの環境は辛すぎる。

ゲームのディオルと同じで心を閉ざしたか、病んだのか…。

ディオルに『無関心』だったのではなく、すべてに『無関心』だったのかもしれない。

それを考えると胸が痛い。

幼い子供2人の心を壊した侯爵夫妻は辺境の地(処刑場)確定である。

なので、私は(エミュレット)の分も幸せにならなければいけなくなったのだ。

私の精神状態(メンタル)は平気かって?

意外に大丈夫で、お父様とお母様の争いを「よくやるなぁこの2人」って思うくらいの感じで眺めてる。

生前の自分をまったく思い出せないけどタフだったんだろうなぁ…。


こんな環境だが、私とディオルの仲はちゃんといい方向に進んでいる。

といっても私たちはお父様とお母様がいる時は、一言も喋らないし目も合わせない。

私とディオルが仲良くしているところを見られたら、お父様とお母様が何をするか分からないと思ったからだ。

なのでディオルと一緒に寝た次の日に、絶対に2人がいる時に私に話しかけては駄目と説明をした。

ディオルは上目遣いで目をうるうるさせて嫌という殺人的可愛さを披露したが、ディオルが痛い思いをするのは嫌だったので必死に説得した。

最終的に夜一緒に寝ることと、朝と夜のおでこのキスで首を縦に振らせた。

私たちが一緒にいられるのはお互いの教育が終わって眠る時だけなので、秘密の部屋を作ってそこで寝起きをしている。

秘密と言っても知らないのはお父様とお母様だけだ。

使用人達も思うところがあるようで、幼い2人が健気に身を寄せ合っているところを侯爵夫妻に伝えることはしていないようだった。

ディオルがお父様とお母様に辛い態度を取られていれば慰め、ディオルの出来ることが増えれば褒めてあげ、そして一緒のベッドで眠る。

姉弟らしいことが出来るベッドの中でだけ私はディオルを慈しんだ。

そして毎日私は、今は辛いだろうけど絶対に主役(ヒロイン)と幸せになれるからねと言う思いを込めてディオルのおでこにキスをする。

そうすると少し照れたようにはにかみながら、ディオルが私の胸元にすり寄ってくるのが可愛くてディオルのサラサラな白銀の髪を撫でる。

このひと時がこの冷め切ってギスギスしたグレジオラス侯爵家で唯一の私の癒しである。

なぜ娘であるはずのエミュレットが両親のこんな深い事情を知っているのか。

お母様が恨み言のように言い聞かせたからと、教育に来るお母様側の縁者が言っていたのをエミュレット的に噛み砕いて理解してると考えてください。

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