第7話
【詳しいダンジョンの仕様は、転生先でダンジョンマスターになった際、解る】
転生の間で、光の玉がそう言っていたことは、本当だったようだ。
ゆっくりと虹色の光に包まれて、視界は美しい光の乱舞に覆われる。
それと同時に、光が昔話を語るように、ダンジョンのあらゆる知識を、俺の中に広げ、染み込ませ、刻みつける。
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虹の光曰く、
【もともと、ダンジョンコアとは、亜神の魂の欠片のことである】
【遥か昔、神話の時代、その本質が悪へと傾いた亜神が、神に挑み敗れた】
【その時、亜神の魂がバラバラになったものがダンジョンコアへと変質した】
【ダンジョンとは、そのダンジョンコアを中心に、領域として形成されたものである】
亜神の魂?
俺と融合していると言う話だったが大丈夫か?
しかも、いままさに融合の最終工程中なのでは?
まあ、バラバラになった一部なら大丈夫なのか?
神様が行うわけだし、俺には最早どうにも出来ないし。
【亜神と神の戦いの後、神々に回収された亜神の魂である、ダンジョンコアは、転生の間にて、転生者にダンジョンマスターとしてポイント交換され転生者の魂と融合する】
【ダンジョンマスターに譲渡される際、亜神の魂に刻まれた、亜神の記憶、その他一切は消去されている】
良かった。
悪影響は取り除かれて、プラス効果だけと思っていいようだ。
いや、そう信じてますよ?
【しかし、回収されずに神々の手から逃げ切った亜神の魂の一部は、その記憶その他一切を不完全ながら保持しており、モンスターなどの魂と融合して、コアを形成し、ダンジョンを生み出す。これを、転生者のダンジョン、転生ダンジョンと区別して、亜神ダンジョンと言う】
俺は、転生ダンジョンのマスターという訳か。
しかし、亜神ダンジョンなんてものが存在するのか……。
【そして、ダンジョンは、成長する】
成長?
大きくなったり、強くなったりするのか?
でも、そもそもどうやって成長するのだ?
【通常、モンスターや魔物と呼ばれるものは、死ぬと魂は肉体から解放されるが、自らの持つ魔力は逆に凝縮され、体内に魔石として残る】
【しかし、それ以外の、人間やその他の亜人や動物などは、死ぬと魂は肉体から解放され転生の間に行き、自らの持つ魔力は死後拡散する】
【簡単に言えば、モンスター・魔物は、死後、魔力が凝縮し魔石化、それ以外の存在は、死後、魔力が拡散する】
【ただ、人間やその他の、魔力が死後拡散する者達。この者達の魔力は、正確には『聖力』と呼ばれる】
【一般的には区別されないし、死後、魔力の凝縮する者か拡散する者か以外、区別する必要も無いが、厳密には魔力とは若干違うものとされる】
【この人間やその他の、魔力、別名『聖力』を、ダンジョン領域内においては、拡散させずにダンジョンが吸収することで、力を得て、成長する】
【また、別の方法としては、他のダンジョンコアを吸収する方法もある】
『聖力』? まあ、区別の必要は無いといっている以上、魔力でいいか。
人間たちの死後拡散する魔力を吸収するのか……。
魂を吸収するとかではなくて良かった。
【そして、亜神ダンジョンは、理由は不明ながら、積極的に成長しようとする。人間などを集めて殺し、『聖力』を吸収するため、宝箱を用意したり、ダンジョンの機能として、特殊な鉱物を生み出す鉱山地帯をダンジョン内に用意したりする。
また、亜神ダンジョンは凶悪化しやすく、モンスターも強く、他のモンスターに比べて、残忍な戦い方をする。
更に悪いことに、他のダンジョンに遠征して、ダンジョンコアを回収し、自らのダンジョンに吸収することで、その強化を図る。】
他のダンジョンに遠征?
もしかして、俺のダンジョンも標的になるの?
しかも、ダンジョンコアの回収?
要は、盗むか、ダンジョンマスターを殺害して強奪ってこと?
ゆ、許せん!
全力だ!
全ての力を振り絞ってやるぞ!
最高の力で、全速力で逃げてやるんだ!
良かった、動く天空島で。
地上のタワー型や地下の洞窟型だったら、逃げるに逃げられん!
転生の間での俺、偉い。
【ダンジョンコアが取り除かれた天空島は墜落する】
……え?
……いまとんでもない事が聞こえたような?
…………し、仕方あるまい。
そりゃ、天空島型だけ有利ってことは無いよね?
弱点ぐらいあるさ。
……人生甘くないってことだね。
【ダンジョンレベルは、ダンジョンマスターのレベルと同等である】
【なぜなら、ダンジョンはダンジョンマスターの一部と解されるからである】
【ダンジョンマスターのレベルを上げるには、原則的に、ダンジョンの成長、すなわち『聖力』を吸収するか他のダンジョンコアを吸収する以外、方法は無い】
ダンジョンは俺の一部なのか。
俺がダンジョンの一部だと思っていたが。
それよりも、レベルの上げ方が問題か。
おれ自身のレベルを上げるとしたら、領域内で、人間やそれに類する者、ここではエルフやドワーフの亜人かな? を、殺すか、他のダンジョンのコアが必要なのか……。
……重いな。
まあ、地球でも、他の牛や豚の命を頂いて、自分のエネルギーにしていたわけだが……。
あれ、『聖力』ってことは、ダンジョン領域内で死ぬのは、動物でもいいのかな?
魔物やモンスターでなければ、魔力は拡散するわけだから、たぶんそうなのだろう。
でも、魔物とモンスターって、区別あるのか?
同じものなのか、明確な違いがあるのかさっぱり解らない。
まあ、どうでもいいことだが。
【ダンジョンマスターは、魂の融合、最終工程において、ダンジョンに運営に必要なダンジョン魔法を覚える】
【まず、モンスター創造魔法】
【ダンジョンで生まれるものはモンスター、それ以外で生まれるモンスターを魔物と言うため、この名がついた】
……いきなり、答えが出たよ……。
しかし、ダンジョン魔法か?
運営に必要なって事は、他のタワー型や洞窟型とかと、ダンジョンの特色上、各々、違う魔法もありそうだな。
【ダンジョン領域内すなわち、天空島の中であればどこであろうとも、ダンジョンマスターが指定する場所にモンスターを生み出せる】
【これは、天空島型ダンジョンは城だけでなく、島自体がダンジョン領域である事を意味する】
【創造できるモンスターの頻度・強さ・数などは、ダンジョンマスター自らの魔力量に依拠する】
便利そうだ。
後でどれほどの規模で可能なのか要確認だ。
【そして、ダンジョン移転魔法】
【ダンジョンコアルームに、ダンジョンマスターは転移できる。ただし、転移には本人の魔力などが必要とされ、魔力量により距離などに制限がある】
これも便利そうだが、どれほどの距離が可能か……
やはり、要確認か。
【念動魔法、手に触れることを必要とせず物その他を……】
【浮遊魔法、魔力を効率的に使い物質その他を……】
【ダンジョンコアに、外の様子を映し……】
【ダンジョンの宝物の間は・・・・・・】
【ダンジョ・・・・・・】
光の玉のように、長々と続く虹の玉の説明。
――玉系は説明長いのかな?
などとため息交じりに考えていたら、急に不思議な力が俺の中に流れ込んでくる。
その力は、じんわりと俺の中に広がって行き……。
まるで、最高のマッサージを受けるかのような、気持ちよさ。
それは、真冬に暖かい布団に包まれるかのような、気持ちよさ。
あたかも、極上の湯船に浸かっているかのごとく感じる、気持ちよさ。
……どれほどの時が流れたのか。
もう、時間すらも解らなくなってきた。
大きなエネルギーと自分が混ざり合う不思議な感覚が続く……。
……。
ゴウンッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
爆音と共に、衝撃が俺の体を駆け抜ける!
と、同時に視界が変わる。
頭がクラクラとして、眩暈がする。
上手く焦点が合わない。
強烈な熱さが足を襲う! なんだっ!
何が起こって……。
俺が混乱の極みに達しようかという時、視界に現実離れした光景が入って来た。