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第2話

 現在、俺は見知らぬ空を見ている。

 空と言っても、見覚えのある地球の空ではない。


 温かな光で満たされた輝く空だ。

 周囲は白一色で地平線が見えない。

 足元は、柔らかい綿の大地を踏みしめているようにフワフワしている。


 ――ここが所謂、天国だろうか……?


 ――まさか地獄ではないだろうな。人助けをして地獄行きでは、死ぬに死ねない。


 俺がキョロキョロト辺りを観察していると、目の前で光の奔流が起こった。

 咄嗟に避けようとするが、……避ける間もなく、光の奔流は収まり、目の前にバスケットボール大の光の玉が出現したと思ったら、突如、頭に声が優しく響いた。


有栖類ありするい。隠し神級クエスト『不遇なる者、その困難に負けず、高潔なる精神を宿し、見知らぬ幼き命を、自らの命と引き換えに救う』クリア】

【クリア報酬3,000,000ポイント】

【有栖類。地球における生。終了確認】


「ほへっ……?」


 いきなりの事に俺は、間の抜けた返事をしてしまう。

 ちなみに、有栖類という、俺の名前を急に呼ばれたことも、そのことに拍車をかけた。


「あの、……何が何やら……?」


【私はこの場所、転生の間において、神々の代理執行を成すもの】

【有栖類。あなたは、地球における生を先ほど終えました】

【これにより、現在、この転生の間において、転生を行います】

【また、その前段階として、準備をここで行います】

【準備とは、前世、ここでは、有栖類あなたの地球での生の中で獲得したポイントにより転生先での能力、環境、その他一切のボーナス……】




□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■




 あまりに長々と続く光の玉による説明に、頭が混乱する。


 取りあえず、頭を整理するために、簡単にまとめてみる。


 まず、俺はやはりあのトラックによって、死んでしまい、いまは、転生の間という場所にいる。

 トラック事故の際、命と引き換えに子供を助けたため、期せずして、隠し神級クエストをクリアした。

 そして、クエストクリア報酬として、ポイントをもらった。


 クエストやポイントとは何か?


 地球では、様々な隠しクエストが神様によって設定されているらしい。

 そして、そのクエストは、基本的に、善行を前提とした行動によるものである。

 たとえば、『周りの人を笑顔にする』といったクエストから、『生まれたばかりで弱っている動物を助ける』と言ったものまで様々ある。

 生涯を通じて、全ての人が、知らず知らずに、この隠しクエストをクリアすることによる評価にさらされている。

 そして、クエストクリア報酬はポイントとして与えられ、死んでから転生の間で、クリアポイントの清算が行われるらしい。

 当然、クリア難易度、善行の大きさによって、与えられるポイントは増減する。

 また、このポイントは、不品行(バッドビヘイバー)により減点される。

 ちなみに、最も難易度が高い、言い換えればポイントの大きいクエストは、神級クエストである。


 いま俺がいる場所、すなわち、死んでから来る転生の間における、人々のポイントの平均値は大体の期間において100ポイント。

 戦争など、歴史の時期によって、多少上下するらしい。


 俺のポイントは、総計で、3,132,670。


 格段に多いらしい。

 地球の歴史上では、12位の多さで、ここ1000年では3位。

 直近300年では、1位らしい。


 自分とはまったく関係のない、血の繋がりもなければ、知り合いですらない、生物的に、助ける必然性のない命、特に未来ある子供を命をかけて助ける行為が高く評価されたようだ。

 それと、どうもあの不遇な俺の状況では、ああいった行動は、天文学的な数値でありえないらしい。

 普通ならば、ただ見ているだけで精一杯の精神状態だったらしく、それでも行動できた事により評価が更に上がった。

 あと、クズ上司や、ブラック企業で耐えながら、真面目に、会社、上司、周りの同僚などをフォローしていた点も、いがいに高く評価されていた。

 見ている人は、見ていると言うことか。いや、ここでは、見ている神様は見ている、と言ったところだろうか。


 そして、俺の魂は輪廻の中にあるらしく、地球での生を終えれば、転生することになる。

 その時、地球でのクエストクリア報酬たる、ポイントがやっと日の目を見る。


 ポイントの範囲内で、次の転生先での、生まれる環境、能力、その他もろもろが、前もって獲得できるらしい。

 当然、ポイントが多ければ多いほど、様々な能力を獲得したり、特別な環境を獲得したり出来る。


 これらの獲得可能なものは、リスト化されて先ほど渡された。

 俺の目の前で、半透明のウィンドウ画面に映し出されている。


 ちなみに、ポイントの範囲外、俺の場合、3,132,670ポイント以上を、獲得に必要とする能力その他は、始めからリストから除外されている。


 また、転生先の世界で獲得不可能な能力などの場合も除外される。

 たとえば、地球が次の転生先の魂の場合、物理法則を無視した魔法などのスキルを獲得することは出来ないといったことだ。


 ちなみに、俺の次の転生先は、魔法があるらしい。獲得可能な能力として、リストに記されている。

 さらに、……不老という能力が、500,000ポイントで獲得可能らしい。どんな世界なのだ……。

 しかも、不老で、500,000ポイント。……俺の3,132,670ポイント以上を要するものがあるのだろうか?

 興味はあるが、光の玉に質問しても、知ることは出来ないようだ。


 ……王族に生まれる、10,000ポイントなどもある。

 偶然、王族に生まれる者もいるだろうが、ここで選択した結果、王族として生まれる者もいると言うわけだ。


 以上が光の玉による大体の現状説明なわけだが。

 ……、いま俺は、転生の為にポイントによって能力その他を、選ぶ作業を行うように光の玉に指示されている。


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