未練
父からの形見のような形になってしまった時計を投げ捨てたまま、私はうつ伏せになったまま寝てしまった。
夢の中でも私は泣いていた。
旧友に背中をさすられている。
夢を見ながら私は過去に実際あったことだと
気付いたのだ。
私は22歳のとき別れた彼氏とのことで泣いている。
『もう会えないのかな。なんで離れちゃったんだろう』
『仕方ないよ。そういう運命だったんだよ。』
運命、という言葉に弱い。
人生はすべて運命で決まってしまうのか。
大好きで仕方ない彼ともう二度と会えない。
それって亡くなったお父さんと一緒で、死んでしまった存在のようなものじゃない。
私をいつも誰かが置いていく。
どうして運命は私の味方をしてくれないのだろう。
どうして
どうして
チチチ…
眩しい、朝だ。
仰向けになっていた。まばたきをすると涙が出ていた。
自分で思った。私は寂しいんだな、と。
朝の光に照らされて窓際のサボテンが輝いてるように見えた。この世で一人っきりみたいな、いや私はこの世で一人だ。
一人暮らし、彼氏はいない。
父もいない。母を守るといったのに母の元から荷物を引き出し、飛び出してきた。
私が飛び出したのは、母を守るためだったんだ。
『久々に彼氏と別れたときのことを夢みたなぁ。22のときか。』