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終わらない話

作者: 設楽 優

「…ほ……瑞穂! 起きてよ!」


私は重い頭を上げて声の方へ顔を向ける。そこにはいつもいっしょにいる友達が私の顔を覗き


込んでいる。


「どうしたの? あんた4時間目ずっと寝てたのよ」


だからこんなにも頭が重いのか、でもなんだろう怖い夢を見ていた気がする。


「ぼうっとしてないで早く行こうよ」


と、友達は私の腕をぐいぐい引っ張っていく。


「行くってどこにいくの?」


と慌てて聞くと、何言ってるの?と云うような顔と共に「体育館よ」と答えが返ってきてまた


腕を引っ張られる。見るとクラスの子達も一様に教室から移動してどこかに行くようである。


なぜかとても嬉しそうだ。


人ごみにまぎれて体育館にたどり着くともうすでにほとんどの生徒が集まっていた。やっぱり


みんなどこか嬉しそう。


生徒が大方集まると舞台の上にはいつの間にか校長が立っていて先生たちが静かにしろと生徒


に向かって怒鳴り静かにさせる。


集まった生徒を見渡して校長は話し出した、


「おはようございます! さっそくくじ引きを始めます、今日も元気にいきましょう」


と言って教師の一人が持ってきたなにやら大きな箱のなかに手をつっこんだ。私は何をしてい


るのか私を引っ張ってきた友達に聞こうとした、そのとき


「木村瑞穂さん、木村さんはいませんか?」


くじが引かれたのだ。校長がそう言ったとたんそれまで静かにしていた生徒が一斉に私の方を


向いた。


「でわ、30秒の間に逃げてくださいね」


いきなりそう言って校長はイ〜チ、二ィ〜イと数え始めたのだ。


私は何がなんだかわからずに近くにいた友達に「みんなで私をからかってるの?」と冗談混じ


りに話しかけると相手は真面目な顔で「早く逃げなよ」と私の背中を押し出した。


ニ〜ジュゥ、ニジュゥイチ、と校長はまだ数え続けている。私は尋常じゃないみんなの様子に


怖くなって一歩ずつ出口に向かって後退し始めた。ニジュゥキュウ、サーンジュゥ!そう校長


が数え終わったとたんそれまで静かにしていた生徒が一斉に私に向かって襲い掛かってきた。


私は慌てて体育館の出口に向かって走り出した。


しかしすぐに足の速い生徒の一人に捕まり私は床に引き倒され集まってきた生徒に激しい暴行


を加えられた。中にはさっきまで私と話していた友達までもがその中に加わっている。


・・・急に暴行が止まった。


痛みに呻きながら目線を上に上げたその時、体育館備えつきのパイプ椅子が私の頭に振り下ろ


された。






「…ほ……瑞穂! 起きてよ!」


私は重い頭を上げて声の方へ顔を向ける。いつもの友人の顔だ。


「どうしたの? あんた4時間目ずっと寝てたのよ」


「私そんなに寝てたの? 怖い夢見てたのよ」


「え〜、なにそれ?それはともかく早く行こうよ」


と言って友達は私の腕を引いた。なんだか夢と同じ展開だ。


「行くってどこにいくの?」


と聞いてみると「体育館よ」と答えが返ってくる。また夢と同じだ。きっと朝に聞いた連絡事


項が夢に出てきたんだろう、と無理やり自己解決して夢は思い出さないようにする。


体育館に着くともうほとんどの生徒が集まっていた。みんななんだか嬉しそうだ。


私は少し嫌な予感がした。


先生がいつものように生徒を静かにすると校長が舞台に出てきた。


「おはようございます! さっそくくじ引きを始めます、今日も元気にいきましょう」


いよいよ可笑しい気がしてきた。校長が引いたくじを読み上げる。


「木村瑞穂さん、木村さんはいませんか?」


生徒が一斉に私のほうを向く、怖い。


「でわ、20秒の間に逃げてくださいね」


そう言って校長はイ〜チ、二ィ〜イと数え始めた。


私は短くなった制限時間に驚き、体育館の出口に向かって走り出す。振り返っても誰も私を止


めようとしない。


体育館から出て校舎に続く渡り廊下を一気に渡り、一階の長い廊下を走る。


後ろのほうで生徒のたくさんの足音が聞こえる、校長が数え終わったのだ。


私は捕まった後の事を思い出して余計に怖くなった。


やがて昇降口が見えて安心したところでいきなり何かに足をとられて転んでしまった。見ると


誰かが投げたであろう箒が近くに転がっていた。


その間に生徒が詰め寄ってくる。私はその中に友達を見つけ叫んだ


「どうしてこんなことするの!?みんな可笑しいよっ!!」


しかし、誰も私の叫びには反応せずより間を詰めて寄って来る。よく見るとみんな手にバット


や箒などそれぞれ凶器に成りえる物を持って今にも飛び掛ってきそうだ。


「お願い、もうやめてよ!だれか助けっっ


そこで私は意識が途切れた。


視界の端に銀色に輝くバットと赤い何かが映った。











「・・ほ・・・瑞穂! 起きてよ!」


私は重い頭を上げて声の方へ顔を向ける。もう何度目になるんだろう。


「ほら早く行くよ!」


また行かなきゃいけないのか、確か10回は超えた気がする、それ以上は覚えてない。


「楽しみだね」


それはあんたがやってる側だからだよ。


体育館に着くといつものようにほとんどの生徒は集まっていて先生がそれを綺麗に整列させ


る。


すると校長がくじを引き始める。


どうせ私の名前が呼ばれるんだけど一応覚悟をしておく


「え〜、端野美樹さん、端野さんはいませんか?」


・・・・自分の名前じゃない!


すぐ横で「えっ、私?なんで!!」と言う声が聞こえる。


「では、30秒の間に逃げてくださいね」


そう言って校長はイ〜チ、二ィ〜イと数え始めた。     


美樹は目に見えて驚いている


「瑞穂、どうしようっ! 助けて!」


「早く逃げなよ」


前に言われた言葉をそのまま返す。


私の事助けてくれなかった癖に、


「楽しんでね」


そう笑顔で言った私の言葉に美樹は絶望の色を顔に浮かばせながら覚束ない足取りで私に背を


向け駆け出す。


ニジュゥキュウ、サーンジュゥ!


遠くで校長が数え終わった声がする。


「それでは、今日も元気に生きましょう!」




前に見た夢を基に書いてみました、

こんな拙い小説を読んでくれた人に感謝です!




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― 新着の感想 ―
[良い点] 夢を基にした話、集会のような雰囲気、エンドレスな展開の3つがとても面白かったです。 [一言] 良いと思ったものはどんどんネタにして下さい。
[一言] 面白い! けど、文章作法が……。周りの描写がもっとあった方が怖いのでは、と。月並みな意見でスンマセン。
2008/03/21 20:30 乳飲み子撃墜
[一言] とても良いと思います。 ストーリーの構成も良く出来ていたと思います。 今度はもう少し長い小説を書くよう頑張って下さい。
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