表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑顔、消えた日  作者: 明日奈 美奈
2/7

欠片

あたしたちが失った心の欠片という意味でのサブタイトルです。

「欠片」

――――1996年冬――――

クリスマスも近い寒い夕方、一人の赤ん坊が誕生した。

些か体重は軽い、女の赤ん坊。

それが、あたし。

まだ若い両親だったが、とても可愛がられ、大切に育てられた。

虚弱なあたしがいま、あまり健康上の問題がないのは二人のかけてくれた愛情の成せることだろう。

その点についてはあたしはまだ、恵まれた方だった。


――――1998年初夏――――

あたしに2つ違いの弟が生まれた。

家はあまり裕福ではないけれど、互いに切磋琢磨して成長できる。

一緒に遊んで、喧嘩して、あまり似てないけど、互いに言葉なんてなくてもわかり会える。

いまは、憎たらしい口を利いて可愛いげがないとか、たまに思っちゃうけど、家族のなかで一番近いそんざいなんだ。


――――2002年秋――――

あたしの目に異状が見つかった。

小学校の就学前検診。

あたしには物の輪郭しか見えていなかった。

このような状態は大変危険と判断を下したのか大きな病院への紹介状を書いてくれた。

大きな病院であたしの目は治ることはなく、治療で視力を回復することしかないといわれた。

そのときはまだ、その意味を理解してはいなかった。


――――2007年秋――――

あたしたち一家は隣町への引っ越しが決まった。

学校も当然、6年で転校するものだと思っていたけれど。

結局、あたしたちはあたしの卒業までもとの学校に通うことになる。

今思うと、この頃から母の異変は始まった。


――――2009年年明け――――

その一年は些細な約束が守られなかった事から始まった。

通学用のバスの定期を買うため、昼休みを抜けてくると言っていたのに。

何の連絡もないままに夕方近くになった。

このままでは定期を買えない。

危機感を覚えたあたしたちはお年玉片手に駆け出していく。

目的地はいつも定期を買っているバスセンター。

二人で学期中の定期を買う。

どうして連絡をくれなかったのか、帰った母を問いただしても釈然としない答えが返ってきた。

もう、この頃から母の意識下にあたしたちはいなかったのだろう――――。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ