記憶
あらすじ:思い…出した!
紅に彩られた記憶が鋭い痛みと共に心の底から噴き出る。
怪獣
炎
そうだ…私はあの炎に焼かれて…ならなぜ今日はベッドに…
一際強い痛みが頭に生じた。
狂いそうなぐらいの痛みが炎の記憶を呼び覚ます。
覚束ない足取りで、明菜は坂の上を目指した。
私の予想が正しければ…スーパーは…
やがて坂の上に着いた明菜の前に広がったのは、
主婦で賑わうなんの変哲もない《いつも通り》のスーパーだった。
ああ…やっぱり…
明菜は、確信した。
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時は明菜が炎に包まれたところまで戻る。
暗闇に蝕まれる意識の中で、明菜はあの水晶を拾ったのだ。
それは現実なのか夢なのか。
ただ、炎に包まれた黒い影が何かを握りしめるような動きをしたのはたしかだ。
その瞬間。
明菜を燃やしていたはずの炎が螺旋を描きながら水晶に吸い込まれた。
透き通るように透明だった水晶が、まるで炎を充填したかのように赤く染まる。
水晶を握りしめ、高々と上に突き出した手は既に焼け焦げていた。
だが、生きているのかさえ疑問に思える状態で、
焼けただれた喉で明菜はこう叫んだのだ。
「へ…ん…しん!」
その叫びに呼応するかの如く、先ほど吸い込まれた炎が再度明菜を包み込む。
しかし炎が明菜を焼くためではない。
明菜が敵を焼くためだ。
そうして明菜を包み込んでいた炎が彼女の首元で収束した時。
明菜はゆっくりと閉じていた瞳を開けた。