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大竹 明菜の非日常な日常  作者: Keola
非日常の入り口
3/7

日常

あらすじ:石を拾った


小鳥の歌声、射し込む朝日、そよぐカーテン。


爽やかな朝を彩る見事な三大要素。

しかし…


はだけたパジャマ、ずり落ちた布団、ぐちゃぐちゃのシーツ。


三大要素が台無しである。


もう一度言おう。


台無しである。


そしてそんな三大要素を台無しにする要素をまとめ上げるだらしのない恰好をした美少女。


この美少女こそがこの部屋の主人、大竹明菜その人なのだ。


「うっ…ううん…カレー食べたい…」


今日もうだつのあがらない、大竹明菜。




そんな彼女の運命が大きく変わるまで、




あと8時間。


「ふわぁぁ…眠…


あっ!宿題やってなかったああ!

とりあえず落ち着いて宿題を終わらしt…ん?うわあああもうこんな時間だあああ!」









ちなみに彼女が、遅刻して怒鳴られるまであと1時間である。



ーーーーーーーーー



「うげぇ…ちょっと遅刻しただけでプリント運ばされるなんて…疲れたな…」


あまりの疲労に腕を伸ばして机に突っ伏した。

その腕は僅かに震えており、それがいかに帰宅部の私にとって重労働だったのかを物語っている。


「寝坊したのになんでまた寝てんのよ遅刻常習犯」


「んぅ…?その声は麗奈か!このイケメンヴォイスめ!」


このイケメンハスキーヴォイスは塚峰麗奈。私がいつも一緒にいる友達の一人だ。

所属は演劇部。ショートよりも少し長めの黒髪に切れ長の瞳。そしてしなやかな肢体はスポットライトの下で夢幻的な輝きを発し、彼女の声は老若男女全てを惹きつける…と、ファンは言う。


「フッ…照れるじゃないか。」


「なぬ!?」


こやつまさか読心術を…


「今自分でイケボ言ったでしょーが…」


ああ…そゆことね…


そうやって麗奈と取り留めのない話をしているとやや大人びた雰囲気の子(と言ってもいつも一緒にいる友達その二だ)が、こちらに歩いてきた。


「おはよう二人とも。明菜は特にね。また夜更かしでもしたの?」


この大人っぽさを擬人化したかのような子が水原凛花。

一切の枝毛を許さない艶のある黒髪を腰まで伸ばし、目元にちょこんとついている涙ほくろが色気を漂わせる。

所属は華道部で、白磁のようにきめ細やかな手先からは大人顔負けの作品が生み出される…らしい。見た事ないけど。


「あ、凛花の作品見たいかも!今日部活終わった後いいかな!?」


知り合いの新聞部に聞いて、見たいと思っていたのに…きっと三歩歩いたからかな…


「ごめんなさい。今日はちょっと…」


ぐぬう、予定ならしょうがないか

こうなったら麗奈とデートでも…!


「あ、そういえば今日はミーティングで一緒に帰れないかも」


「謀りおったな…」


「いや何がよ」


ーーーーーーーーーーーー



なんやかんやで時は流れ、明菜は一人帰路についていた。


今日は一人かぁ…


まぁ、なんてことはない。こうして一人で歩くことにも慣れた。

一人が嫌いな訳でもないし。


なんだかこの普遍的な日常に逆らってみたくて、今日は別の道から帰ることにした。


確かここの坂を上がるとスーパーがあるから…

カレー粉でも買って行こうかなー


カレーは好きだ。

そして単純な明菜は好物を連想しただけで自然と足取りが軽くなるのであった。

今月ももう終わりだし、月制のお小遣いも惜しみなく使える。


だが、どういうわけか坂を上がれば上がるほど明菜はギュッと息の詰まるような感覚に陥っていく。


なんだろう…まるでスーパーに行くなと言われてるかのようだ。


すでに明菜の呼吸は荒くなり、尋常じゃないほどの汗をかいていた。


あまりの暑さに長袖を脱ぎ、ワイシャツを捲ったところで、明菜は異変に気付いた。



なんだろう…このブレスレット?



明菜はあまりアクセサリーを持ち歩くほうではない。

憧れることはあれど、可愛らしいのが自分に合う気がしなくて、いつも買うまでには至らない。


なのに。


透き通るような雫型の水晶がついたブレスレット。

装飾もシンプルで、非常に明菜好みのデザインなのだが。


それはアクセサリーというよりかは、手錠のようなものに明菜には感じられた。



心が、ざわめく。


明菜は言いようのない不安に当たりを見回した。



そうだ、私なにか大事なことを忘れ…て…


チリ、と。

記憶に蓋をしていたものの端が焦げていく。

やがてその炎は勢いを増し、明菜の中に眠る記憶を呼び覚ました。否、呼び覚ましてしまった。






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