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45話 バレちゃった

ご覧頂ありがとうございます。

 師匠から大銀貨四枚と、劣化版だが“疎通の指輪”モドキを手に入れたのは良いけど、睡眠時間はたったの三時間ちょい、今日も明恵に起こされてしまった。一応一回で起き上がる事はできたが、瞼が重く開こうと思っても中々目を開ける事ができん。

 今日の授業中と昼食後は絶対に寝る自信があるな、と覚醒しきってない頭でぼんやりとそんな事を考えながら、シャワーを浴びてスッキリ目を覚ますべく風呂場へ向かう。

 昨日は風呂に入らず夜中は自転車で汗を掻いた上に、寝る前にはべっとべとだったしな。


 シャワーを浴びて心身ともにスッキリして朝食を食べていると、丁度階段を降りてきた親父に「明人、ちょっと聞きなさい」とおはようも無く始まった。

 なんだろう? 来月から小遣いUPとか?


「お前最近夜中に起きてTVを見ているか、誰かと電話しているだろ? しかも昨日なんて一度家から出てどこかに行く始末。上手く誤魔化せていると思ったら間違いだからな、いったい何をしていたんだ?」


「明人、お父さんと昨日早めに二階に上がったのは、その事を心配して話していたのよ。夜更かしを絶対しちゃダメとは言わないけど、そのせいで体を壊したりなんてしたら、母さんにも父さんだって考えがあるわよ?」


 何てこった! 流石に絶対バレてない等とは思ってなかったけど、やっぱり俺と師匠の声は煩かったらしい、それに昨日の夜中の外出もバレバレだったようだ。

 何て答えようか困って食べかけのパンを皿にゆっくり戻し、砂糖1杯の少し苦いコーヒーを一口飲み、なんて答えようか頭を巡らせていた。

 向かいに座る明恵も両親と同じく、じーっと俺を見ている……いい案が浮かばないぜ! こうなれば素直に謝って、開き直るしかない。


「ごめんなさい。実は最近夜中に起きて話声がする理由は、外国に住む友人が出来て時差のせいで会えるのが夜中に成っちゃって、昨日夜中に家から出たのもちょっとコンビニまで行っただけなんだ。喋るにしてもあまり長くはしないし、なるべく早めに切り上げるようにするから、許してほしい」


「……お兄、友達ラーゼス?」


「明恵、お前は明人の友人とか言うその、らーぜす? って子を知っていたのか? 明恵は知っているのに、明人は父さん達に一言だってそんな風な事話してなかったよな? ……まあ、明人に友人が出来るのは良い事だが、夜中に長話をして睡眠時間をあまり削るのはダメだ。それに電話代は大丈夫なのか? あまり言いたくはないが、電話使用料金が多すぎる場合は、明人の小遣いからカットするからな」


「えーと、電話代は無料だから大丈夫。今はそう言ったアプリが在るんだよ、それに長話もなるべく控えるようにするから」


 俺としては、電話料金よりも開けっ放しの時間が増えている、冷蔵庫の電気料金の方が怖い。

 折角シャワーを浴びたのに冷や汗がでるぜ、……絶対先月よりも変に支払額が多いと思うが、その差がどれくらいになるか予想もつかないと言うか、考えたくない。

 それと思わぬ明恵からのアシストもあって、あれ以上の親父追及もお小言も収まった。……母さんはまだ納得して無いようで、何か言いたそうだったけど俺は目を逸らして、食べかけだったパンの攻略にかかる。


 明恵の奴うっかりだろうけど、師匠の名前をだしたらプリン同盟的条約は違反じゃないのかな? 何て言ったら明恵は怒ってきっと例の如く「鬼、お兄の鬼!」と言われるに違いないので、今回はノーカンだな。

 そう言えば、明恵はソウルの解放をしても反動と言うか体調を崩すような感じは全然見られない、やっぱり俺見たく七歳を十年も過ぎてたせいであんな風になったのか? それにいつの間にか、冷蔵庫のあっちと繋いだ時の時差も消えていたな……要は前より繋がりやすくなったって事だろうか? 最初は狙ったんじゃなく偶然だったみたいだし、今は割符で強化? もしている訳でそうなっても不思議じゃ無いって事か。


 そう考えると人と人を繋ぐ“(えにし)”って奴はスゲーな、切っても切れないとは昔の人は上手い事行ったもんだ。

 朝食を食べ終わった俺は、まだモグモグと食べている明恵の頭をぐりぐりと撫でると、迷惑そうな顔をするが「さんきゅ」と言ってやるとコクンと頷いた。我が妹ながら愛い奴め。

 さて、昨日手に入れた指輪をどう使おうか? やはりここは何処でも通用する英語を使える方が便利だよなと考えながら、それを胸ポケットに入れると少々浮ついた気分で俺は登校した。





 ――今日は屋上からビラが撒かれる事も無かったようで、昨日話に聞いたような騒ぎは起きてはなく、あまり視線も感じない為安心して校門をくぐり、玄関で上履きに履き替えたところで後ろから「ちょっとキミ、少し良いかな?」と誰かに話しかける声を聞いたが、相手の声に俺は全く聞き覚えは無いし、当然ながらそのまま教室へ少し早足で向かう。


「……聞こえなかったのかな? ん、んん。そこのキミ少し良いかな? できれば立ち止まりこちらを向いて欲しいな。それとも何か急いでいるのかい?」


 誰だか知らないけど、少しくらい話を聞いてやればいいのにと、頭の隅で考えながら時計を見る。朝のHRまではまだ余裕があるし、せっかちな奴も居たもんだと思いつつ俺は廊下を進む。

 そう言えば今日は静雄に合わなかったな、きっと途中のコンビニでも寄ってまたメロンパンでも買ってるに違いない。

 そのまま今日の弁当のおかずは何だっただろうと、考えていたら後ろからタタタッと足音が聞こえ、誰かが直ぐ横を通り抜け俺の前方で止まり、壁に手を突いて息を整える男子生徒が一人、……あの距離で息切れとは結構虚弱っぽい気がする。

 そいつは壁に寄しかかり、妙なポーズでこちらを振り向き笑みを浮かべると、俺を指さした。


「ふ、ふふ。さっきから呼んでいるのに僕を無視して通り過ぎるなんて、随分と酷いじゃないか二年C組の石田明人君」


「なあ? ……俺の名前知ってるなら、最初から名前で呼べば良かったんじゃね?」


 若干……いや、とても関わり合いに成りたくなかったが、そいつはどうも俺の事を知っているらしいけど、俺は面識があったかどうかコイツには悪いがサッパリ覚えが無い。

 誰だっけと思いながら、上から下まで確認するがやっぱり知らん相手で、分かった事は磐梯の兄の方も整った顔をしていたが、それより目の前に居る奴はやたら美形だって事と、ネクタイの色でコイツが三年だって事くらいだ。

 え?『窓』使えば一発? いやあまり知りたいと思わなかったしね。

 

 それにこの三年、俺が誰だろうと確認していたら「止めたまえ、僕にそんな趣味は無い。幾ら僕が美しいからって熱い視線で見られても、答える訳には行かないんだ」なんて片手で顔を隠しながら頭を大げさに振ってるような、フザケタ事をぬかすアホだぞ? 関わり合いにならないのが一般人としての常識だろ?


「あ~誰だか知らんけど大した用が無いならそう言う事で」


「待ちたまえ、まだ僕の要件が……何だって!? 僕の事を知らないだと! この完全無欠、超絶美形と揃った。この僕を知らないと言うのかい!?」


 奴は本気で驚いた顔をしているって言うか、俺の方が驚いたわ! ヤバイ、こんな頭のネジが飛んだ奴がこの学校に居た事さえ、俺は知らなかった……知らない方が幸せだったけど。

 秋山みたいに少しは周りに注意を払った方が良いのかもしれん、今度アイツに校内の『関わり合いになりたくないランキング』って物が、在るかは分からんが聞いてみるかな。


「悪いな本当に誰だか知らん。じゃそう言う事で」


「待てっ! この僕の名前を知らないと言うなら、今ここでその頭に刻み付けると良い! 僕の名は瀬里沢舜。この学校で僕の名を知らぬ者など、これで居なくなった筈だ!」


 それはどうだろう? と言う突っ込みはしたら負けっぽいので無言で立ち去ろうとすると、通り過ぎる瞬間「僕はキミの持っている物に興味がある、秘密をバラされたくなければ放課後に、旧校の部室棟の美術室の倉庫まで来てもらおうか」そう呟き俺の胸にトンと指を突いて、奴は去って行く。


 俺の秘密? それに俺の持っている物だと!? 奴は俺が指輪を入れていた胸ポケットを確かに指し示していた。

 単なるアホと思っていたのに、瀬里沢舜あいつは一体何者なんだ?


つづく

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