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44話 師匠のお宝

ご覧頂ありがとうございます。

 師匠とのやり取りはその後も続いて、蜂蜜は別容器を用意して貰い大銀貨へと交換し四本で四枚と成った。


 師匠の住む所では蜂蜜を取る技術は特殊らしく、安定した供給はあまり出来ない為、貴重な甘味料でもあるのでそれなりに値段がするそうだ。

 残りの哺乳瓶一式は銀貨で釣り合わせるには問題があったので、師匠が持っていた“便利な道具”の中からの交換となったが、村の人が買う事の出来ない物を師匠が対価を払って手に入れて大丈夫なのか聞いてみた所、“一時的に貸し出す”だけで物は他に売る伝手があるらしく、流石自分で商人と名乗るだけはあるなと感心した。


「薬の料金は後で村から出るって事は了解したけど、本当に貰っちゃって良いの? 俺は師匠に仲介料を払う必要少しはあるんじゃない?」


「いやいや、かわりに今までの村の信頼を失わず更に深い絆を得られる事になるし、ワシの名声も高まるしの。問題ないわい! それではワシの持つ要素(エレメント)を付与した道具を選ぶとするか」


 師匠は椅子から立ち上がると、部屋の隅に置いてあるらしい商売道具の中から色々と目の前に持ってきてくれたが、あまり大きなものは無く少しだけ期待していた武器の類は影も形も無かった。……チョットだけ残念と思ったのは内緒だ。

 冷蔵庫の中の物を避けてそれ程大きくはない布が広げられ、その上に道具が並べられるが……知らない奴から見れば冷蔵庫越しの俺と師匠は、かなり不思議な光景に見えるんだろうな。


 並んだ品は五つ、パッと見最初に目が行くのはゴロンと出てきた、どっからどう見ても“手首”にしか見えない物、他には大き目の水晶みたいな塊と矢印に似た形の棒、それに師匠が嵌めていたような指輪に続き、最後は身に着けるには少しゴツイ腕輪だ。

 これら装飾品以外は置物か、良く知らない者が見れば単なるガラクタに思うかもしれない。

 もっとも俺も見ただけじゃ、どのような効果を秘めた物なのかは分からんので、師匠に説明をお願いした。


「うむ、それでは先ずお主が見ていたこの“手首”じゃが、使い方は簡単で触れた後にソウルの器から要素を込めて動くように念じれば良い。今の所はワシの物としてソウル文字を刻んでおるが、お主の名で上書きすれば問題なく動かせる筈じゃぞ」


「うわっ、本当に動くんだな。コレの動きは師匠の思考に合わせて動かしてるのか?」


 師匠は手に“手首”を持って要素を送り込んでまた布の上に戻すと、道具が少しだけ光って見える。

 すると光が収まった後その“手首”の指が徐々に動き出し、まるで生きているかのように手を広げた後、俺に向かって指でお辞儀した……本物とは違い滑らかさは無いので、造り物とすぐ分かるとは言え少し不気味だな。


「そじゃの、込める力に寄るらしいがワシもあまり使った事が無い。なんせコレも商品の代金代わりに押し付けられた様なもんじゃしの、何て言ったか……確か他国の変わった種族が作ってるとか言うてたの」


「師匠も良く知らないのか、まあ珍しい物なのは間違いなさそうだけど。そっちの水晶みたいなのは?」


「あ~、それは要素を貯め込むもんじゃ。触って貯めると他の道具を動かす補助に出来るそうじゃよ。使い方で言うなら、例えば貯めた分を自分の扱うのが苦手な要素に変換して使うとか出来るらしい。コレもつい最近手に入れた物で、ワシも使ったことないわ」


 そう言う師匠は何故か苦々しい顔をして、その水晶ぽい物を説明する。

 何か問題でもあったのだろうか? 口には出さないけど、そう師匠の表情が雄弁に物語っていた。


「さて、続いてはこの棒じゃが、これはある対象をこれに覚えさせて、それがどの方向に在るのかを指し示してくれる便利な物じゃよ。旅をする際に開始地点を覚えさせれば、早々迷ったりはせんからの」


「なるほどね、その覚える対象って何にでも出来るの?」


「……言われてみれば、ワシは今話したような使い方しかした覚えが無いから、何にでも使えるかまでは分からんな」


 髭を扱きながら棒を持って首を捻る師匠だが、使い方に関しては場合に寄りけりだし試してみないと分からないって事だな。

 残りの二つは指輪と腕輪はざっくりと端的に説明された。

 指輪は二つの言語を覚えさせて翻訳が出来るらしく、師匠の持つ“疎通の指輪”の劣化した物で、腕輪の方は件の“風邪精の核”を加工して造られた、周りを涼しく出来る“清涼の腕輪”だそうだ。

 清涼の腕の使い方の説明だと、個人で装備できる冷房のみのエアコンを思い浮かべると、分かりやすいかも? 今の時期に使うには良いかも知れない。

 師匠に普段使わないのか聞くと「ワシは風の要素を使うのは苦手じゃ」と返ってきた。

 詳しく聞いた事が無かったので、どういう事か聞いてみると五つの要素を全て万遍なく使いこなせる人は、かなり稀有な存在らしい。


「使える要素の得意な属性や苦手な属性、他に全く使えない属性を持つ者もおるぞ。ワシは空の要素と火の要素は得意じゃが、風と水はサッパリで土は全然使えんしの。こればかりは練習しようが無理な物は無理じゃの、練習で伸ばせるとしても使える属性のみじゃな。例えで言うならば空が五で火が四、風と水が二で土は一って具合かの。必ず誰でも一は在るが、一じゃと要素を使った道具は動かせん。仮に動かせても体のどこかに変調をきたし、倒れてしまうじゃろうな」


「それってやっぱりどこかで調べたりしたの? それとも師匠の経験から教えてくれたのか? 仮に自分で分かるならどう確認したら良いんだ?」


「ふむ、ワシは寺院にあるアカフに捧げる“祈祷の柱”で確認したの。寺院には五つの要素を司る柱が在っての、それに触れながら祈りを捧げるもんなんじゃが、ワシが触れて祈りを捧げれたのは四つの柱までで、土の要素の柱だけはどう頑張っても、うんともすんとも動かんかったの」


 その事を思い出したのか、師匠は目を瞑りながらうんうんと頷いている。

 結構と言うか、かなり昔の出来事なのかもしれない。


「へぇ~その柱に触れば分かるって事か……、でもそれだと俺は寺院には行けないし、確認するのは無理じゃね?」


「お主の場合じゃと、ワシが持ってくる道具が使えるか使えないかで確認するしかないかの? それか寺院に行った際に絵も持ち込んで……ダメじゃな絵が大きすぎて、持ち込むには不自然過ぎるしの」


 色々と話したが、やっぱり師匠に任せるしか俺の得意な要素、苦手な要素それに使えない要素が分かる方法は、今の所無さそうだ。


 途中で話がずれたがこの五つの中からどれを選ぶか、非常に悩む。

 最初に説明された“手首”これも面白いかも知れないが、ちょっと不気味なので除外して後は水晶は綺麗だけど、先ず要素を貯めるにしてもそれを使う道具が無ければ意味が無いので、コレもパス。

 後は矢印の棒と指輪に腕輪、矢印も特に必要なさそうだし腕輪は涼しくなるだけなら、家に入れば済む訳でここはやはり、劣化したとは言え疎通の指輪でしょ! 小さいし目立たないから、普段から付けてもおかしくないのが良い! これに決めた!!


「それじゃ、俺はこの指輪に決めます。師匠もその“疎通の指輪”を持って長年物品交換士をやっていたそうだし、俺も初めはこの指輪から徐々に勉強していくつもりだぜ」


「うむ、商いも言葉が分からなければ、お互いに分かり合う事は中々難しい場合があるしの。よし、お主にはこれからも色々と手伝って貰う事もあるじゃろうし、この要素を貯める水晶も授けよう!」


 俺が師匠に交換するものを指輪に決めた事を伝えると、オマケまでサービスしてくれた!

 俺はさっそく明日からこの指輪を嵌めて、先ずは翻訳させたい言葉を覚え込ませるべく、活動しようと思う。


つづく

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