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39話 うつるんです

ご覧頂ありがとうございます。

 またもや俺の鼻が負傷する原因となった例のチラシだが、ワザと写真の男が誰なのか分からない様に顔を写さない事で、余計に人の好奇心や想像力を掻きたてたらしく、かなりの範囲で噂が広がっていた様だが、誰がそんなはた迷惑な事をしたのかまでは、秋山の話では分からないと言う結果だった。


 どうやら朝の生徒の登校時を狙って、屋上からばら撒かれた物だったらしいが、俺は結局静雄からビラを貰い『窓』を使う事で履歴を追い、巻いた人物の名前と学年を特定できた。

 相手は三年A組の瀬利沢舜(せりざわ みつき)、ハッキリ言って俺達はこの人物とは何の接点も無く、特に名前も聞いた事のない相手だ。

 俺からいきなりコイツの名前を出したとしても、理由も無く不審に思われるだけなので今は放置するしかない、精々関わり合いに成らないように気を付けようと思う。

 ……秋山の話していた非公式ファンの一人だろうか?


 そんなこんなで授業も終わり放課後になると、特に予定も無かったので途中まで皆と下校し、昨夜渡せなかった物を商店街で買い求めようと立ち寄る。

 すっかりここ最近は、駅前のショッピングモールでなくこちらばかり寄っているなと、そんな事を考えつつ青果店で果物を見るが、病気の時に食べる果物ってやっぱり桃かな? メロン? 俺だってまだ今年食ってないっての!

 ただ問題はまだ旬じゃないので、美味い桃はそれ程出回って無いらしくスーパーミラクル(店名)で桃缶を選ぼうとしたが、あっち側では缶切りなど無さそうだったし、開けられないと考え選んだのは果肉入りの桃ゼリー、これを八個ほどと明恵との約束のプリンを購入して帰る事にした。


「それにしても、昨日来た警察が更衣室の捜査であっさりカメラが見つかったって話を聞くと、日本の警察も中々やるもんだな。一応カメラは壊しておいたが、データの方は今更だが問題無かったのか?」


「あなたが倒れてる間、磐梯怜奈がD組に来て星ノ宮さんそうに言ってた。私は画像データをある程度しか弄って無い。全てのデータの解像度を落として上書き保存した。見ても分かり難い筈、でも多少は証拠になる」


「それって俺も詳しくは分かんないけど、プロパティとか開けば保存し直した日にちや、時間とか使用した機器が記録されて残るんじゃね? 黒川、本当に大丈夫なのか?」


「そこは改竄したから大丈夫、そう言ったツールもある。後は警察次第、バレても私達のやった証拠は無い。……それより」


 俺の隣を歩きながら言葉を途中で止めて、黒川が見てくる。

 なんとも表現しがたいが、どうしてそんな不安そうな目で俺を見るんだ? 俺達が仕組んだと分かる痕跡は残したつもりはないぞ? そもそもカードを取り外す為のカバーさえ触ってない訳だし。

 そう言ってやれば黒川も安心するかと考えていたら、昨日見た“あの”看板が目に入りまたもゾクッと悪寒が走った気がする。

 そう言えば丁度あの死亡事故多発の交差点だ、もしかして黒川はこのせいで不安を感じて俺を見たのだろうか? ……誰も見てない、俺も何も気づいてない!


「だ、大丈夫。心配ない俺は何も見てないし見えてもいないぞ? 本当だからお前も不安になる必要は全然ない」


「……そう、あなたがそう言うなら。けど、どうしてそんなに吃っているの?」


「へっ? べ、別にドモッて何て無いぞ? 今は人気もあれば昼間だし。兎に角、黒川の家まで送るから早く移動しようぜ」


 俺がそう言うと不安そうな顔だった黒川は、打って変わって不思議そうな表情を浮かべるが、家まで送ると促すと素直に歩き出す。

 うん、やっぱり黒川もあまりこの道は好きじゃないのかも、と言うか誰だって事故が多発している場所なんて、長く居たいなど思う筈がないに決まっていると帰結した俺は、少しだけ早足でその場を離れおかげで昨日よりも、一時間も前に家に着いた。


 今日は玄関に鍵が掛かっていたので、俺がどうやら一番に帰ってきたらしい。

 丁度良かったので居間のテーブルに買ってきた荷物を置くと、部屋へ戻り着替えを済ませ割符を持って冷蔵庫を開けようとして、そう言えば昨日の時間でも早すぎた事を思い出すが、結局ゼリーもプリンも冷やす必要があるので、そのまま開ける事にした。

 開いたその先には、切羽詰った様な表情の酷く顔色の悪い師匠がこちらを睨むかのようにして立っていたが、俺が目に入った途端にヘナヘナと床に崩れおちる。


「あれ? 師匠どうしたんだ? 約束の夕方には少し早いけど。丁度今帰って着たところで、あ、コレ少し冷やした方が美味しいから、一旦出直しますね」


「ま、待つんじゃ! 折角繋がったとアカフに祈ろうと思ったワシの気持ちを裏切る出ない! ワシは今か今かとアキート、お主を待っておったぞ!」


 師匠はそう言いながら、ゼリーとプリンの入ったビニール袋を持った手をがっしりと握ってきた、俺にはよく状況が掴めないがどうも何か在ったらしい。

 よくよく師匠は不運な星の下に在るんだなと思い、俺もその手を握り返すと頷いた。


「えっと、それで何があったの? 俺に分かりやすく説明して貰えると助かるんだけど」


「おお、そうじゃった! 実はあの熱が下がった子なんじゃが、最初に熱を出してた子と同じように赤いぶつぶつが出来てきて、今は安静にしとるんじゃが他の村の子供と、大人数人が似たように高熱を出して、バタバタ倒れてるんじゃ! 幸いワシは何ともないが、今すぐ熱冷ましの薬が沢山必要なんじゃよ!」


 薬が必要って、タダで配っちゃまずいんじゃ無かったっけ? だから昨日俺も頑張って良い方法が無いか考えたのに、大丈夫なんだろうか? もしかして、師匠も焦って混乱しているとか? とりあえず少し落ち着いて貰おう。


「師匠、薬が必要なのは分かったけど、いきなり村の人が倒れたって、皆同じ症状で倒れたとしたら何故師匠は平気なんだ? 皆何か変な物を口にしたとか、原因は何か思いつくことは無いのか? 熱を下げても原因が分からないとまた繰り返すかもよ? それに」


 一度言葉を区切り、師匠を見ると俺の言った事を反芻して「原因?」と呟いてる。

 何か心あたりでもあるのだろうか? もし何か知っているならそれも話して貰いたい。


「それに俺は薬を用意する事はできても、根本的な解決は師匠がするしかないんだぜ? 昨日話したタダで配るのは不味いって事に関しても、村の人を直接助ける事も」


「その事ならもう、つべこべ言うとる場合じゃ無いかも知れん。お主に言われて思い着いたのは、この風邪に似た熱は人にうつる病魔やも? もしそうならその事に気付き、恐れて逃げ出す者が出ん内に何とかせねば。仮に逃げだした者がその先で新たに病魔を広めれば、最悪“軍”が出て道の封鎖と合わせ、この地は燃やされ村ごと消されるじゃろう。そうなればワシは逃げ切る事は出来ん……」


「村ごと燃やすって……冗談、だよな? いくらなんでもそんな事ある訳無いだろ? だって病気だって言ったってまだ生きてるんだぜ?」


「生きていようがいまいが、それが他の大勢の人の命に係わるのであれば、躊躇なく燃やされるじゃろ。お主だって果実を食べるとき傷んだ部分があれば、その部分は切って捨てるじゃろ? 同じように極論を言ってしまえば、誰であれ犠牲は少なくする方を選ぶ筈じゃ」


 そこまで話すと「だから急がねばならん」と最後に着けたし、俺の瞳を真正面から見つめる。さっき師匠は“ワシは逃げきれん”と言った、ワシ『は』だ、師匠は暗に逃げるなら俺だけは逃げ切れると言っているに違いない。

 俺の事は村の人も知らなければ、あちら側の人間では師匠しかその存在を知らないのだから。


 俺は逃げても……あれ? 待てよ? “ワシは何ともない”、“人にうつる病魔”俺って既にさっきがっちりと師匠に触れてるよね?

 あんな事言っておいて、謀ったなしぃぃいぃぃしょぉぉぉおおおおおぉぉぉぉ!


今現在の明人の心境として↓


謀った? 謀ったね師匠!? 親父にだって謀られた事無いのに!


もしくは……


謀ったなラーゼフっ(師匠)!!


アキート、お主の父上が悪いのじゃよ。妻の尻に敷かれ冷蔵庫を買った不幸を呪うがええ。


ガン○ムネタ、知らない人には申し訳ない。


つづく


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