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37話 深夜の通販番組って、つい見ちゃうよね

ご覧頂ありがとうございます。

 師匠は俺に“物品交換士”の特性の説明をした時、この御業は偉大だって誇らしげに言っていた筈じゃないか、それなのにまだ起きてもいない諍いを気にして、今助けられる人を助けないほうが間違っている。


 そう感じた俺は何とか上手く師匠を納得させて、薬を使って貰う事が出来るような良いアイデアを見つけないと、絶対後悔すると思った……だけど、良い案はそう簡単に思い浮かばない、直ぐに思いつくぐらいなら師匠だって悩まずに、既に助けているに違いない。

 それと気になるのは高価な“水の要素の秘薬”とか言っていたが、そんな病に良く効く薬が在るのか? 思い出してみると昨日の俺の鼻の怪我も、師匠から貰ったあの凄く不味い薬を飲んだらすぐに治ったっけ。

 アレも結構な値段がする、高価な物だったりしたんだろうか?


「師匠、秘薬ってそんなに高価な物なのか? どうも価値が分からないと“どのくらいの理由”が在れば問題ないのか、悪いけど必要って聞いても俺はピンと来ないよ」


「そうじゃの、水の要素の秘薬は比べるのにあまり適しているとは思えんが、ワシが店を構えている場所じゃと、それなりの伝手が在れば手に入らん事も無い。それでも小さな壺に入って大体服用5回分位で、ガラム銀貨三枚で銅貨に換算して言えば四十五枚かの?」


「……えっと師匠、その銅貨と銀貨って見せてもらえます?」


「なんじゃ、アキートは銅貨も銀貨も見たことが無いのか? まあ構わんがちょっと待て」


 師匠は懐から小袋を取り出し、中から小さな硬化をじゃらっと取り出す。

 どれも似たような色をしているが、形も疎らで中には黒ずんで俺の良く知る十円硬貨とは比べ物に成らない物もあるけど、小さく顔が彫り込まれどれもきっと銅貨なんだろう。


「これが、この地域で使われているロシナフ銅貨じゃよ。それとこっちがロフレス銅貨で、この二回り大き目の物がガラム銅貨じゃな。一番価値が低いのはこの小さいロシナフ銅貨じゃ」


「交換比率は? このロシナフ銅貨とガラム銅貨の差はどれくらい?」


「比率? 急にそんな事を聞いてどうしたんじゃ? ロシナフ銅貨じゃと、ガラム銅貨とは誰も交換はしたがらないの。ロシナフ銅貨は最低価値のお釣りみたいなもんじゃし。まあ、強いて言えば二十五枚くらいかの?」


「こっちのロフレス銅貨は?」


「ロフレスと比べるなら、ロシナフは十枚が良いところじゃよ。銀貨は別に分けてるでの少しまて」


 そう言って冷蔵庫から少し離れると、師匠は先程の小袋とは違ったかなり良い作りの“財布”と呼んで差支えない物を持ってくる。所々綺麗な色の糸で刺繍とかが入り、勝手に開かないように組紐で巻いて留めてあった。


「今持ってきているのは先程と同じ種類の銀貨じゃよ、やはりガラム銀貨が一番大きいの」


「これの差も枚数的に同じくらい?」


「いやいや、銀貨はもっと差が大きいぞ。ロシナフ銀貨でロシナフ銅貨と交換する者は、あまり居らんと思うが、だいたい二百枚くらいかの。逆に二百枚集めても銀貨に交換する場合は、両替の手数料を取られると思って間違いないわい。ガラム銀貨じゃと、計算が面倒じゃな」


「二百枚分の価値……因みに一時間の労働で得られる報酬はどのくらい?」


「なぜ一時間なんじゃ? そんな時間で報酬など出る訳がなかろう? 大体ワシの店で一日働くとガラム銅貨一枚くらいかの」


「じゃあそのガラム銅貨一枚でパンを買うとしたら、どれ位買える?」


「パンと言っても、どんなパンを買うんじゃ? 普段食べるようなパンで良いなら……約二十個とお釣りが来るくらいかの? ワシの持って来とる、日持ちする硬いパンならもう少し数が減るの」


 基準にしていいのか分からないけど、単純に考えると秘薬一個で労働報酬一カ月半の収入で買える物なのか……けど伝手が必要とか言ってたし、そんな物と同等の価値が在ると思われてたんじゃ、確かにタダで配るにはちょっと問題在るのか……。


「この村の人の現金収入ってどのくらいか、師匠は知ってます?」


「あんまり無いのが現実かの、そもそも家と畑もあればこのような土地じゃと、それこそ物々交換で済むし、金銭はあまり必要では無いんじゃ」


「物々交換で済むんだ……いやでも少しは持ってる筈でしょ?」


「そうじゃな、少しは持ってるじゃろがワシらの様な商人へ作物を売りつけたり。後は村で作った小物細工、近郊で取れる価値のある物等、例えば毛皮とかを数人で運び、大きな街で売ったりして金を手に入れてるんじゃ。だから必ず決まった現金が在る訳でも無い、精々各家庭でガラム銀貨で一~二枚を貯めていれば、かなり良い方じゃろ」


 さっきの秘薬の値段を考えると、バイトの時給八百円を例として計算すれば、一日八時間働いて六千四百円が四十五日でほぼ二十九万と考えたら、赤の他人から二十九万もする物を、行き成り貰ったら吃驚するだろうし、何かあるんじゃって普通は疑うよな。

 逆に喜んで使いたがるように持っていくには、どうすればいいか? 無料お試し? それじゃあタダで配るのと変わりがないし、確かに師匠も困っていた訳だ。


 最終的に師匠に納得させつつ、薬が欲しい村の人には“買って貰う”様にする。

 言うのは簡単だが、どうやってそれをすればいいのか? 村人の貯金は一銀貨あれば良い方って話だし、結構師匠の居る世界は物価が高い?

 幾ら頭を捻っても今すぐ良い考えなんて、サッパリ浮かんでこない。

 今日の所は予定していたポ○リの粉末と、ピッタリ熱冷ましーるを渡して寝る事にした。


 果物はどうやら俺が部屋に居た間に、両親が食べちゃったようなので、冷蔵庫の中にはもう無かったから学校の帰りにでも買って来よう、そう思いながら師匠へ粉としーるの使い方を説明して、熱が下がっても結構水分を消費している筈なので、あの子に飲ませろと言って押し付けると、明日も夕方に会う約束をして冷蔵庫を閉じる。

 ……どうでも良いけど、二時間近く冷蔵庫を開けっ放しにしてたので、夏だから良かったものの冬なら寒くて凍えていただろうな、結構体が冷えてた。

 それに、中の物温くなって大丈夫かな? これはやはり早急に新しい冷蔵庫を買う資金を貯めなければいけないと、改めて考える。

 ……途中で冷蔵庫が壊れない事を祈るが、本当に壊れたら母さんよりも親父が泣きそうだなと思った。


 一息ついて時計を見ると、もう深夜の二時半を過ぎていたのに色々あって、眠気がまだ来ないのでココアでも飲もうと牛乳を温めつつ、ソファーに座りTVを付けるが、通販番組の紹介しかしてない……この時間だと、流石にもうたいして面白い番組も放映してないか。

 美容とか健康の商品の説明をしているが、こんな時間にTV見てる方がよっぽど不健康だし、健康を考えるなら起きてないで寝るに限ると思う。


 まてよ? こんな時間まで起きてる奴だからこそ、こう言った物が必要と言う事か? いや確かに若く見えるけど本当にこの人達、五十代とかなの? ふーん、今すぐ電話だと初回のみ半額以下で販売ねぇ、あれ? 初めて飲む分は半額以下の料金? むしろタダに近い値段? ……もしかしてこれって使えるんじゃね!?


 牛乳が温まったのでマグカップを取りだし、大盛りで三杯ココアを投入しゆっくりかき混ぜると、甘い香りがあたりに漂う。

 両手でカップを掴みふーふー言いながら、熱いココアを飲むと冷えた体にじんわりと沁み込むようだ。

 俺はさっき通販番組からヒントを得た(まんまだけど)方法なら、多少お金を出しても村の人にあまり負担を掛けず、きっと師匠なら売ってくれると考え、安心して部屋に戻りベッドに横になった。


※後に変更するかもしれないけど、今の所目安


ガラム銀貨1枚=ガラム銅貨15枚=ロフレス銅貨約150枚=ロシナフ銅貨約375枚

ロフレス銀貨1枚=ロフレス銅貨50枚=ガラム銅貨約5枚

ロシナフ銀貨1枚=ロシナフ銅貨200枚=ガラム銅貨約8枚


大きさ的呼び方として

ガラム銀貨、銅貨=大銀貨、大銅貨

ロフレス銀貨、銅貨=中銀貨、中銅貨

ロシナフ銀貨、銅貨=小銀貨、小銅貨

※一応金貨もありますが、普通の庶民は金貨を持ちません(基本使う事が無い為)


1日の労働賃金(ラーゼスさんのお店)=大銅貨1枚=中銅貨約10枚

1日の日雇い賃(口入屋的斡旋の肉体労働)=中銅貨8枚(内1枚は斡旋料で抜かれる)


都市部の一番安いパン1個の値段、小銅貨2枚

まとめ買いや、お得意様になれば値段が下がることがあります

その際は4個で小銅貨5枚、普段都市で暮らす庶民はこちらを買います

ですが、味の方は……


つづく

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