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112話 夢は見れたか

ご覧頂ありがとうございます。


2/13 見直して抜けを確認したので、修正致しました。


 彼が起きる前に色々と話を聞いて、どうすればこちらに引き込めるかと考えていたのに、何を言いだすかと思えばあれだけの力を持っていて目標は商人?

 いったい何の冗談だ? 自分の秘めている価値をこの少年は分かって無い。

 ……だが、ここで協力する姿勢を取らず、こちらの意思を押し付けるような事は得策では無いだろう。

 やはりそこそこの恩を売りつつ、彼とはもっと“仲良く”なる必要があるな。

 丁度彼が求めている事は力を使う上での初歩の技術だし、修得の為の一環として恭弥と一緒にその仕事を手伝わせ、箱根崎君との確執も解しこちらの事もより知ってもらうのがベストか……。




「なるほど、確かに人生の目標を持つことは素晴らしいと思うけど、それが絶対だと決めつけるには、年長者の僕としては少し早いような気もするかな。さっき言ったように菅原一門の一応仮の弟子にとして、恭也から学ぶのは決定事項だし色々他にもやってみるのはどうかな?」


「父様が一度そう決めたのでしたら彼に技を教えるのは分かりましたけど、他にもと言うのはどういう事ですか? 彼が目指すのは商人と言いましたよ?」


 兼成さんの提案に恭也さんは疑問を感じたのか、改めて俺の希望を確認する様に聞きなおす。

 決めつけるのは早いって言われても、それを促すような力を貰っちゃったんだよね。

 使い方は未だ未知だけど、使用法をまかり間違って蝿とミックス怪人になったりしないよな? 物質転送って何故か事故が起きそうな響きがしない?


「うん、仮にも弟子と言うなら実際に悪霊(オニ)やその類の物を祓い、黄泉に送る方法とかも少しは学んだ方が、後々どこかで役に立つかもしれないじゃないか? だから恭也の仕事の現場にも連れて行ってあげなさい」


「その辺は彼に任せた方が宜しいと思うし、今直接本人に聞くのが速いし一番ですよ。今の話を聞いていて石田君はどう思うかな?」


 何だか変な雲行きになって来た。

 B級SF映画のネタを思い出してる場合じゃねえ。

 冷静に利害を比べると別に俺はそこまで関わり……って、よくよく考えたら一人じゃ無く本業の経験者がバックについてくれるわけだし、実はとても安全に対処の仕方を学べる良い機会なのか? 明恵の事もあるし教わっておいて損は無い?


「あまり危険な事をしないなら、教えて貰えるのは逆にありがたいかも。それと質問なんだけど、その技って出来るのにだいたいどのくらいかかるのかな? 余り時間が掛かるなら、念の為に抑える道具とかがあればそっちも欲しいんだけど、受け取る報酬からその分を引いて貰う事ってできる?」


「う~ん、技の習得に関してはその人に依るから何とも言えないね。あと流石に道具をもって石田君ほどの力を抑えるとなると、色々と厳選して素材から集め直さないと無理かな」


 やっぱり師匠に教わったみたいに、習いましたじゃあ即使えるようになるかと言えば、そんな事は無さそうだし割と難しいかもしれん。

 まあ、これは当然なんだろうけど今焦っても仕方ないか。


「それと個人に合わせて調整するとしたらかなり時間もかかると思う。瀬里沢君に渡したくらいの物なら本家に行けば在るが……恭也、お前の所には予備は在るかい?」


「予備はありませんね。もう一度作るなら他の事をせずに仕上げても、二週間は見積もって欲しいです」


 在庫もちゃんとあるようだけど、恭也さんは渋い顔でそう答える。

 勾玉自体は割と通販とかでも手に入りそうだが、二週間も掛かるって事はやっぱり作る手順や儀式? みたいな物を行う必要があるのかな?


「そうなると、一度僕が戻ってから選んで送ってあげる形の方が速いだろうね。と言う訳だから、早くて三日遅くても五日以内に送る事は出来るけど値段に関しては後で良いかな? 今直ぐはちょっと無理だね」


「確実に手に入る方がありがたいし、そっちでお願いします」


 瀬里沢が持っていた勾玉でさえ、伊周に感知されないくらいの効果を持っていたし、兼成さんが選んでくれるってなら明恵にも安心して持たせられる筈だ。

 これで一先ずの心配事は片付くかな?


「あ~石田君、話も良い感じに済んだようだしちょっと良いかな?」


「んあ? 瀬里沢、お前そろそろ俺に君付けなんて要らんぞ? 学年一個上だけど俺なんて最初から呼び捨てだしな。それで急にどうした?」


「僕は相手に君付けしちゃうのは、癖みたいなものだし今度から君の事は親愛を込めて、明人君と呼ばせて貰おうかな!」


「あ、ゴメンやっぱ最初のままでいいわ。言われてちょっとゾワッとした」


「……そうかい。ええとだね、その君が眠っている間に僕らで少し話をしたんだけど、君が試合に出てそれを応援して見ながらどこか安易に、危険は無い物と思っていたけど結果的には割と酷い目にあっただろ? それで楽しんで見ていた事に罪悪感を覚えてね。君がどう思おうと自由だが、これだけは言っておきたかったんだ。止めもせず見ていただけで済まなかった」


「そう言う事だ。ただ明人、俺はどちらかと言うとお前の強さを計れると思って、止める気は更々無かったから謝らんぞ」


「どうしてそう安永君は意地を張るのかしら? あの試合の最後で石田君に必死に“避けろっ”て叫んでいたのは誰だったのかお忘れ? 私はそのどちらでもなく、貴方の事を少しだけ本当に危険な人物で無いか見るいい機会だと思ったくらいよ。私の結果を言うのなら貴方は“合格”って所ね」


「奏さまがこう言うんだ、お前は誇っても良いぞ。私も試合を見ていて、いつお前が我慢の限界を超えるか見ていたが、そんな事は無く勝ったしな。だから謝らん、寧ろ良くやった褒めてやろう」


「あはは、宇隆さん何それ。試合の時解説しながら随分驚いていたわよ、私も止めなかった事は悪いと思ったけど、謝るのは止め! あんたも良い経験になったんだし、それに最後で逆転勝ちした時は、本当に私も凄いと思ったわ。やるじゃない! だけど舞ちゃんを心配させたのはダメダメだわ。あんたはもっと強くならなきゃね」


 瀬里沢を代表として、何だか口々に酷い理不尽な事を言われている気がする。

 確かに試合中に楽しそうなお前らを見てイラッとはしたけど、別に試合を止めなかった事に恨みごとは無いんだし、どっちかと言うと痛めつけてくれた箱根崎の方に腹立ってたしな。

 ……今の話で俺に謝ったのって瀬里沢だけじゃね?

 つか今も口は塞がったままだが、あからさまに不機嫌そうな顔を隠しもせずガン飛ばしてきてるし、いい加減眼疲れんのかね?


「あ、あの。あなたの話を信じないで馬鹿にした人に、あなたが勝つところが見たかった。けど、そのせいで痛い思いをさせてごめんなさい」


 ……俯き加減で上目使い&涙目の女の子に謝らせる俺って、傍から見ればえらい悪役に見られね? これで許さんとか言おうものなら、星ノ宮や宇隆さんからの侮蔑の視線は勿論、黒川の隣で“分かってるわよね”と目で語る秋山には必殺の拳が俺を襲うだろう。


 静雄と瀬里沢に視線を移すとごく自然に目を逸らされ、菅原さん親子には生暖かい目で見られる始末。

 唯一一向に態度の変化が見られないのは、最初から一貫して俺を敵視している箱根崎だが、こいつを見て変な緊張が解けた自分が無性に腹立たしい。

 須美さんと珠麗さんは、秋山と違った“分かっていますよ”とでも言うような優しい眼差しで俺と黒川を見ていて、何か心の底から叫びたい気分だ。


 何なの? この分かり切った返事をさせられる感たっぷりの面前での羞恥は。

 被害者は、何処まで行っても被害者で終わるしかないのか!

 されど、ここで無言や許さないのは死に等しい選択だろう。

 ……何と言うか、人の見ている前で言うのが恥ずかしいのだ。


「あ~、えっと。何か謝らせてすまん。気にするな、試合をした事は何とも思っちゃいねえ。その辺の野良犬に噛まれたようなもんだから、と言うか俺にって欲しかったんなら、お前の願いも叶ったんだ。もっと喜べ」


 そう言って照れ隠しに目を瞑り、思いっきりニカッと笑ってやった。

 こうすりゃ文句なんて、誰も言う事ないだろうしなっ!

 こっぱずかしいが、顔には出なかった筈だ。


「……うん、石田君ありがとう。私の願い、一つ叶ったよ」


 そう返事をした黒川に目を開いて視線を戻すと、あの時以来二度目となるふわっとした可愛らしい笑みを浮かべていた。


つづく

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