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1st day

 チームのテントに戻り、エディに事のあらましを説明したら、大爆笑されてしまった。

「ま、向こうも誰にも話さないってことで納得してくれたんだろ? ならいいじゃないか」

「まあ、そうなんだけどさ」

「細かいことは気にするな。どうせ明日にはお披露目なんだ」

「予選か……緊張するな」


 一週間に渡って開催されるリノ・エアレースの初めの三日間は、民間エアロバティックスチームによる演技や、米空軍による模擬空戦や『炎の壁』のショー、大戦機と現行機による編隊飛行などといった各種のエアショーとが行われる。それと並行して、出場チームによる予選が進められるのだ。

 忍とエディが参加するアンリミテッドクラスは大会の目玉なので、初日にコース一周のタイムアタックによる予選が行われ、四日目から最終日にかけて本選が行われる。中二日間は、敵チームの情報を集めたり機体の調整を行ったり、パイロットによっては複葉機限定クラスのレースに参加したりと、各チームが思い思いに過ごすことになる。

「シノブにとっては、初めてのアンリミテッドになるな」

「ああ、そうだね」

 去年は複葉機クラスで出場している。成績は、十八機中の三位。初参加にしては健闘した方だ。

 そんな忍が今年はアンリミテッドに出場するというのでレース通は注目している、とはエディの弁。

 しかし、どちらかと言えば、注目されているのは機体の方だろうと忍は思う。

 エディが愛機ベアキャットで大会に参加することは知れ渡っているし、スポンサーのエディ・シニアは有名な大戦機復元プロジェクトのスポンサーだ。ライトニングフライヤが二人のパイロットをアンリミテッドに投入するというニュースにいつの間にか尾ひれがついて、プロジェクトの新たな復元機がお披露目されるのだという噂が広まるのはある意味自然な流れだった。

 もちろん、忍としても機体の引き立て役に徹するつもりはない。

 やるからには、エディとのワンツーフィニッシュくらい狙っていくつもりだった。

「おい、二人とも、機体のことは任せて早く寝るんだ。そっちの調子は責任が持てんからな」

 大会前日の静かな興奮に浸っていつまでも話し込む忍とエディの背中を叩いて促したのは、おやっさんだった。

「わかったよ、おやっさん」

「おやっさんこそ、もう歳で辛いんだから早く寝ろよ?」

「大きなお世話だ、ジュニア!」

 茶化すエディに向かって、おやっさんがスパナを振り上げる。

 今度こそ、二人してテントから追い出されてしまった。


「なあ、シノブ」

 ホテルを取ったリノの街へ向かうレンタカーの中、エディが前を向いたままつぶやく。

「やるからには、真剣勝負だ。ゴールドクラスで待ってる。絶対に来い、いいな?」

「分かった。約束する」

 車一台通らないリノへの道筋。

 会話は、それきり途切れたままだった。



 そして、リノ・エアレース、開催一日目。

 アンリミテッドクラスの予選も含めた全日程が終了し、出場各チームには予選の結果と本選のクラス分けが記された紙が配布された。


1st day UNLIMITED QUALIFIER(大会一日目 アンリミテッドクラス 予選結果)

1. エドワード・R・エドワーズ

2. ジョン・ランダース

3. レジーナ・J・ミッチェル

4. リチャード・ボング

5. ジョニー・ジョンソン

6. ピエール・クロステルマン

7. チャールズ・ダンダス

8. ライル・ダンダス

9. ジェームズ・サザーランド

10. エイノ・イルマリ・ユーティライネン

11. ディートリヒ・フラバク

12. シノブ・サイカ

13. ジャック・イェーガー

14. ロアルド・ダール

15. ロバート・S・ジョンソン

16. フランコ・ルッキーニ

17. リディア・リトヴァク

18. ニール・A・カービィ

19. トーマス・マクガイア

20. デイヴィッド・マッキャンベル

21. セシル・ハリス

22. ハンス・ウィンド

23. クリブ・コールドウェル

24. ヤン・レズナク


1~ 5位 ゴールドクラス

6~11位 シルバークラス

12~17位 ブロンズクラス

18~24位 メダリオンクラス



 エディに、思い切り背中を叩かれる。

「……ガッツだ。『ガンバレ』シノブ!」

「……頑張るよ」

 それ以外に返せる言葉など、あろうはずもなかった。

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