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御輿


 ドラゴンの要求に応えられるのは、自分のほかにいない。


 涙が零れそうだ。しかし、ほかに該当する者がいないとなれば、自分が行かなければならない。



 唇を噛み締め、涙を堪えて恐怖を押し殺そうとする。


 そんな彼女の姿に、村の者たちは肩を震わせて悔し涙を流す。


 ……自分たちが不甲斐無いばかりに、彼女を失うのかと。








 輿に乗り、生贄の祭壇へ向かう彼女は美しかった。


 豊かにうねる艶やかな髪、丸くて愛らしい目元に形の良い丸い鼻、ふっくらとした赤い唇。吸い付くような柔らかな肌は恐怖の為だろうか青ざめており、結い上げられた頭部からこぼれた髪が、普段はしっとりとしている顔に張り付いている。

 恐ろしさのあまり、冷や汗をかいているようだ。そのため、いつもよりも彼女の香りを感じる。

 少し離れた場所にいる自分にも彼女の芳しい芳香は届いているので、彼女の輿を担いでいる者たちには堪らないほどだろう。

 しかし、彼女を生贄に差し出すことは村の決定なので、覆すことはできない。

 覆すことはできないが、それでも、彼女の為に出来る事はある。


 だからこそ自分たちは、彼女の輿を追いかけているのだ。

 










 ドラゴンを倒し、彼女を助けるために。




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