第5話:出会い
「沙月っ…」
「兄様大丈夫?…さつきって誰?」
どれだけ寝ていたんだろ、沙月?無意識の内に出た言葉だった。
「…誰だろ。」
「変な兄様。
体の具合は大丈夫?」
妹のマリーが俺の顔に近すぎるくらい顔を近づけて来て、心配そうに見つめてる。
「大丈夫。」
マリーの体を少し離してそう答えた。
「父様のところに行きましょ。目が覚めたら話しがしたいって言ってたわ。」
「マリー、連れて行ってもらえるか。」
まだ体がだるかったが、この城の事・皆の事・今どういう状況なのか全て記憶にない俺は、父親にいろいろ聞いてみようと思った。
「ここよ兄様。私はまだ母様のお手伝いが残ってるから行くね。」
「ありがとうマリー。」
ブロンドの髪をなびかせながら歩いていくマリーを見送った後、父の部屋のドアをノックした。
「…」
返事がない。
ノックを何回か続けた。
「父さんノワールです。いないんですか?」
また返事がない。
何回かノックしたけれど返事がないのでドアノブに手をかけようとした。
その時、ドアが勝手に開き体が部屋の中に引き込まれた。
暗闇の中に入ったと思ったら一瞬にしてロウソクに火が灯り目の前に父親が立っていた。
「ノワール元気そうだな。お前が戦闘でこんなになるなんて珍しいじゃないか、なんかあったのか?」
父は俺の心を見透かしたような目で俺を見ている。
「すいません…何もかも記憶にないんです。気付いたら変な所で立っているし、変な奴に襲われるしで何が何だか…。」
「記憶がないか。まぁ時間が絶てば記憶も戻るだろ、それまでは過去に捕らわれずこれからの記憶を大事にしなさい。」
もっと何か聞きたいはずなのにその一言で十分だった。
「俺はこれから何をすればいいのでしょ?」
「お前の好きな事をすればいい。そう言えばお前はピアノを弾くのが上手かった。屋敷を出て、庭を北に少し歩いた所に置いてある。久々に聞いてみたいものだな。」
「そうですか、ありがとうございます。早速行ってみます。」
父の部屋を出て、庭に向かうことにした。
庭を歩いていると木々が変なん形をした所を見つけた。そこに向かってみると、純白のピアノが置いてあった。
「ドラキュラ城には合わないな。」
そう思いながらもピアノの前に座る。
記憶が無いため何をどう弾いていたのかわからなかった。
鍵盤に指を置いてみる。懐かしい感じがし心が澄んでいく…その時、指が勝手に動き曲が頭の中に次々に浮かんできた。
「弾ける。」
喜びと感動から夢中になってピアノを弾いていた。
気付いた時はもう日が落ちようとしていた。
「素晴らしい曲ね、何て曲かしら?」
後ろを振り向くと美しい純白の女性が立っていた。
「あなたは?」
「私はルミエール。光族の者よ、あなたとは敵同士になるのかしら。」
純白の女性はそう言うと微笑んだ。
「タイトルはないんだ。ただ頭に浮かんだ曲を弾いていただけだから。」
その女性からは殺気が感じなかったから普通に話せた。
「なら…終焉なんてどう?」
「終焉か…。」
この曲でこの戦争が終わってくれるといいけどな。
俺は微笑みながらそう思った。




