10%の女。
初投稿です。
昼休み。
時々、1人になりたくて、誰も残ってないオフィスでランチをとる事がある。
金欠とかそんなんじゃなくて、なんとなく大勢が鬱陶しい時にね。
社会に出て5年目。
27歳のお局ちょい前の私。
ときどき若い子達の話についていけない時があって、はぁ~~~って大きく息を吐きたくなる。
そんな時に ひとりランチ をとるようになったのは今年の春からだった。
弁当派の人も多いが、自席で広げる人はあまりいない。
大抵が気分転換にリラックスルームや屋上など場所を変えたがるからだ。
だから私はその逆手をとって、ほぼ無人のオフィスで伸び伸びとしてる。
今朝、出勤途中で買ってきたサンドイッチを食べながら、携帯でニュースサイトをみる。
会社のPCは外部サイトにアクセスできないから仕方がない。
小さな画面を眺めながら人差し指で下から上へとスクロールしていく。
気になるニュースといってもエンタメかスポーツなんだけどね。
”初キスの年齢ランキング(20代女性編)”
ん?
ふと目に飛び込んだニュース項目。
Q 初キスの年齢は?
1位 19歳 13.2%
2位 20歳 11.7%
3位 18歳 11.3%
3位 まだキスをしたことがない 10.6%
5位 9歳以下 7.9%
ふぅ~~~ん……割と遅いもんだね…それに、20代でキス未経験者って一割もいるんだ。
「10%…かぁ…」
どこかホッとしながら、つい口にだしてしまった。
ん?…ふっと背後に人の気配。
「牧田ぁ… お前、こういうの読んだりするんだ」
げぇっ…匡史だ。
背後から携帯を覗き込んできたのは、同期で唯一同じ部署の田上匡史だった。
…くすっ。
匡史が笑った。
「なによ?」
その笑い方が癇に障って、ちょっとだけツンとして尋ねると
「お前……まさか10%?」
!!!!! …こいつぅ…。
図星を指され私が答えずにいると、ギシって椅子の背もたれが鳴る。
匡史が手をかけたからだ。
「マジで?」
びくっ…と微かに震える。
左耳のすぐそばで匡史の声がする。
「……そういうの、やめてよ」
「”そういうの”って何?」
こいつは、時たまこういうことを仕掛ける奴なんだ。
まてまて、状況を整理しよう。
匡史のペースに乗せられないようにザワザワする心を鎮めようと、
自分の状態を確認する。
私の左手には携帯電話。
右手には食べかけのサンドイッチ。
背後には、右手を背もたれにかけて、
私の左後方から寄り添うように携帯を覗き込んでる匡史。
もう! …なんで、こんなに密着してんの?
「変に思われるから、離れてよ」
「・・・・・・ だな」
意外、すんなりと離れていく匡史。
音が出ないように ほぅ…っと息を吐く。
気づかないうちに息をつめていたようだ。
背もたれから手を離した匡史は、隣のデスクに腰を持たせかけて足を交差させた。
「お前、まだなの?」
そこ、掘り下げる?
答えたくないですオーラを放出しているのに、
絶対ワザとだろ。
「わざわざ聞くかなぁ? …悪趣味じゃない?」
呆れてそう答えると、匡史は肯定と受け取ったのか、それ以上は言ってこなかった。
「俺さ、ちょっと相談したいことがあってさ…」
「 ……何よ?」
「…今夜、飯ぃつきあわねぇか?」
「珍しいね、相談なんて…」
ちらっと匡史の方を見上げると、どことなく所在無さげに自分の髪をあたってる様子がうかがえる。
「…でさ、どう?」
「ああ、……うん、いいけど…」
相談っていうのは無かったけど、二人で飲みに行くことは偶にある。
「じゃ、7時に下で」
そう言って、ぽんっと肩を叩いて離れて行った。
ふわ…ん… と、匡史のいつもの香りがする。
その香りに意識が向いていると、
「あ、紗和」
行きかけに、匡史がもう一度声をかけてくる。
やめてよ、どきっ…とするじゃない。
「…仕事場では、名前で呼ばないでよ」
「ああ、ワリぃ… 」
「あぁ…… あのさぁ… 別に、いいと思うよ… 10%。」
「はぁ~?」
思いっきり、呆れた顔のまんま匡史の方を見やると、
すでにパーテーションの向こう側に行っていた。
「(もう!)……気にしてませんから~~(怒)」
声に怒りを乗せて言い返すと、匡史の背中が クックッ… と震えて笑ったように見える。
「無理すんなって」
む~~か~~つ~~くぅ~~~~!
どうして、匡史にはこんなとこばかり見られちゃうんだろ。
手に持ったままで少し乾燥してきたサンドイッチに、当たるようにガブっとかぶり付いても
発散できない恥ずかしさに少し顔が赤くなる。
もう!
息抜きしたくて独りになってたのに、匡史のせいで余計に溜めこんじゃったよ。
……。
でも、匡史の相談てなんだろ?
稚拙な話を読んでくださってありがとうございました。
本文内にも書かれてる「ファーストキスの年齢」についてのアンケートニュースを読んで思いついた話です。
勢いで、男性視点も書きたいな~~と思っています。