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痛みを喰らうことで、彼女は本当に定められた神になれるのか?  作者: 野間羊
長夜将明

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第八十章

「スタシスは私の友達です。あなたが何があったか教えてくれれば、私は自然とお手伝いできます」


 モーリガンの声は平静だったが、左目の隅の数字はすでに5412に跳ねていた——それは彼女が迷っている時の目盛りだ。


「本当ですか?」


 エコーは彼女を見た。


「でも……私には分からないんです」


 彼女は確かに分からなかった。追いかけなければならないこと、あの言葉を叫ばなければならないことだけを知っていた。その理由は、自分でも理解できなかった。


「モーリガン——どうしてそんなに急いで出て行ったんだ?」


 カリオペの声が遠くから聞こえた。


 彼女とヘマリスは一路追いかけてきて、息を切らしながら墓地の端に降り立った。


「ヘマリス」


 モーリガンは彼女に向き直った。


「彼女の記憶を見てあげて」


 ヘマリスはそのエルフの女に近づき、視線を彼女に注いだ。


 その顔はスタシスのものだった。その声もそうだ。


 しかしあの細かな動作——あまりに細かく、あまりに頻繁で、まるで無数の人間の癖が同じ一つの体に押し込められているかのようだ。


 スタシスではない。


 彼女は手を差し伸べ、霧が相手の意識に探り入れる。


 空白。


 記憶が消されているのではない。そこには最初から「自分自身」のものが何一つなかった。ただ無数の借り物の破片だけが、形だけの殻を寄せ集めていた。


 しかしその破片の奥深くに、彼女はスタシスを見た。


 それらの記憶は新しく、体温を帯びていた——流雲城のこと、虹蛇のこと、あの「二つで二つに替える」という言葉について。


 ヘマリスは手を引っ込め、顔色を曇らせた。


「モーリガン」


 彼女の声はとても軽い。


「悪い知らせです。それでも聞きますか?」


「心の準備はできています」


「スタシスは……死に赴きました」


 ヘマリスは一瞬間を置いた。


「虹蛇に食べられたのです。何かの代償を払うために」


「何の代償ですか?」


「エコーという人を助けること。空のエルフに出兵させてアイセロンを援護させるために」


 モーリガンは沈黙した。


 戦争。また戦争だ。


 彼女は目の前のそのエルフの女を見た。


「エコー」という名前を聞いた瞬間、その女の目つきが一瞬止まった。


「……つまり、あなたがエコーなんですね?」


 沈黙。


 とても長い、長い沈黙。


 長く、タナトスが思わず頭をかくほどに。長く、パシュースが爪先で地面に円を描き始めるほどに。


「……はい」


 その声はとても軽く、誰かから借りてきたかのようだ。


「だからさっきから話してて……」


 タナトスがとうとう我慢できずに口を開いた。


「スタシスって、一体誰なんだ?」


「神の欠片です」


 モーリガンが答えた。


「私が以前出会った仲間です」


「彼女の能力は何だ?」


 パシュースが突然口を挟んだ。


「美しい瞬間を留めたり、創り出したりすることです」


 モーリガンは彼女を一瞥した。


「彼女自身がそう言っていました」


「美しい瞬間?」


 パシュースは眉をひそめた。


「それはむしろ愛の神の欠片のものじゃないのか?」


 モーリガンは一瞬呆けた。


 パシュースはこの話題を続けなかった。


 彼女は視線を外し、気軽な口調で付け加えた。


「私の記憶違いかもしれません。とにかく——」


 彼女はモーリガンを見た。


「あなたは随分と冷静ですね。仲間じゃなかったんですか?」


 モーリガンは彼女の質問には答えなかった。


 彼女はただ振り返り、ずっと傍らに立って「これ、俺に関係ないだろ」という顔をしているタナトスを見た。


「タナトス」


「うん?」


「あなたなら彼女を救えるはずですよね?」


 タナトスは瞬きをした。


「救う?」


 彼は自分を指さした。


「俺は死神だぜ?どうやって人を救うっていうんだ?」


 パシュースはそれ以上何も言わなかった。ただその濁った目が彼の顔に一瞬留まり、それから外れた。


 その眼差しは何も語っていないようで、しかし何もかも語っているようだった。


 タナトスは言葉に詰まり、頭をかき、少し落ち着かなくて視線を逸らした。


「神の選民と雖も、死を免れず」


 虹蛇の声が低く響いた。タナトスの腕に巻きついた体が微かに締まる。


「諦めよ、苦痛の選民。彼女は再び生を受けることは叶わぬ」


 エコーの呼吸が一瞬止まった。


 彼女はうつむいて自分を見た。


 あのスタシスの顔がゆっくりと消えていき、五官はぼやけ、最終的には見知らぬ女の顔に定まった。


 誰かを模倣したわけではない。


 ただ自己を持たない存在が、ようやく自分の本来の姿を現したのだ。


 彼女は泣かなかった。


 ただ顔を上げ、そのカラフルな目で虹蛇を見た。


「本当に他に方法はないのですか?」


「ない」


 虹蛇の声には何の感情もない。


「他に方法はない」


 タナトスは何も言わなかった。


 彼はパシュースを見、それからあの頑固な蛇を見、最後にあの見知らぬ女の顔に視線を落とした——その顔には涙はないが、涙よりももっと重いものがあった。


 彼はため息をついた。


「はいはい」


 彼は手を伸ばして虹蛇の頭を軽く叩いた。


「そんなに断定的に言うなよ。彼女の魂は見えなかったんだ。もし彼女がエルフならな」


「はい。アイセロンのエルフです」


「やっぱりな、見えなかった」


 タナトスはまた叩いた。その口調は気軽だ。


「もしかしたら、お前の体の中に引っかかってるのかもな」


「何を言う?」


 虹蛇の声に珍しく動揺が走る。


「我が胃に入りし者、生還した例なし」


「万一ってこともあるだろ?」


 タナトスの手が少し下に移動し、虹蛇の体を軽く摘まんだ。


 虹蛇の全身が強張った。


 その感覚は奇妙だった——何かが喉に引っかかっていて、上がらず下がらないかのようだ。


 次の瞬間——「オエッ」


 粘液まみれの荊冠いばらかんむりがその口から転がり出た。


 虹蛇は目を見開いた。


「これは?!」


 タナトスは腰をかがめてその冠を拾い上げ、手の中で軽く量った。


「荊冠?面白いな」


 彼は首をかしげた。


「このものの使い方、聞いたことがあるような気がするな」


 彼はしゃがみ込み、適当に地面に穴を掘り、冠を放り込み、土をかぶせた。


 その動作はまるで花を植えるかのように気軽だ。


 全員がその小さな土の盛り上がりを見つめる。


 一秒。二秒。


 土の盛り上がりが動いた。


 一本の荊が土から顔を出し、目に見える速さで上へと伸びていく。


 それはますます高く、ますます太くなり、枝を広げ、棘を交差させ、ついには人の形を成した。


 一対の青白い手が荊の茂みから伸び、棘のある枝をそっとかき分けた。


 カリオペが最初に反応した。


 彼女は自分の上着を脱ぎ、早足で歩み寄り、その影に背を向けて差し出した。


「とりあえず、これで隠して」


 荊の茂みから、裸の影が這い出た。


 スタシス。


 彼女の肌には荊の紋様が這っていた——額から頬へ、首筋から鎖骨へ、それらの深い青色の跡は蔦のように彼女に絡みつき、決して消えることはない。


 最も目立つのは額の傷跡だ。


 荊冠が残した、永久的な傷跡。


 彼女は上着を受け取り、身にまとい、横を向いて手を伸ばし、それらの荊を撫でた。


 荊は彼女を刺さなかった。


「やはりな」


 彼女の声は少し掠れている。


「父が私に残してくれたものは、私を守るためにあったのね」


「スタシス——!」


 エコーが駆け寄り、彼女を抱きしめた。


 スタシスは硬直した。


「……あの」


 彼女はうつむいて腕の中の見知らぬ女を見た。


「私たち、まだそんなに親しくありませんよ、エコー」


「わ、私には分からないんです」


 エコーの声は彼女の胸にこもって聞こえる。


「ただ、そうしなければならない気がして……もしかしたらあなたのお母さんもそう思ったのかもしれません」


「どういう意味ですか?」


 エコーは手を離し、一歩後退した。


 彼女の顔が変わり始める——その佇まいは老け、アイランサーの姿になった。


 そして彼女は口を開いた。アイランサーの声で、アイランサーが生涯で初めて口にしたあの言葉を。


「ごめんなさい」


 スタシスは呆然とした。


 ◇◇◇


 焚き火のそばで、一同は輪になって座った。


 スタシスは流雲城で起こったことを包み隠さず話した。


 婚礼、虹蛇、アイランサーの庇護、エコーの録音、そして彼女の「犠牲」。


 モーリガンは静かに聞いていた。左目の隅の数字が一跳びし、また5412に戻った。


 カリオペが皆に酒と飲み物を注いだ。


 スタシスは杯を手に取り、うつむいて揺れる映り込みを見た。


 映る自分は、額に傷跡があり、頬には荊の紋様がある。


 永遠の不完全さ。


 彼女はしばらく見つめ、それから杯を置き、顔を上げた。


 エコーは彼女の隣に座っている。


 自己を持たないその女は、今は静かに彼女を見つめ、何かを待っているようだ。


 スタシスはその視線から逃げなかった。


 こんな存在でさえ、自分を受け入れてくれるのだ。


 この傷跡くらい、何だというのだろう?


 彼女は杯を手に取り、一口飲んだ。


 ◇◇◇


 もう一方では、モーリガンが目の前の巻物をじっと見つめ、眉をひそめていた。


 町を示す光点の多くが、既に黒く変わっている。


「御身、戻るべきかお考えなんですよね?」


 アマラートの声が隣から聞こえる。その口調にはあのいつもの、何でもお見通しだという笑みが含まれている。


「ええ」


 モーリガンは否定しなかった。


「父はこれが予言の進行を乱すことだと思っている。私もまだ準備はできていない。でも——」


 彼女は一瞬間を置いた。


「巻物には、多くの町がこの戦争に加わったと示されている」


「みんな加わったんですか?」


 アマラートが近づいて見る。


「まだ数日しか経っていませんよね」


「確かに奇妙だ」


 モーリガンの指先が黒い光点に触れる。


「でも巻物は嘘をつかない」


「他の町に加わる理由があるのでしょうか?」


「ディスコルディアを覚えているか?」


 アマラートは瞬きをした。


「彼女の『誤解』は、至る所に存在する」


 モーリガンの声が沈む。


「私たちが通った町で、偏見のないところは一つもなかった。誤解がちょっとした扇動を加えれば、彼らは自然と戦う理由を得る」


「そしてこれこそが…」


 アマラートが言葉を引き継ぐ。


「戦争が見たいもの、ですね」


 モーリガンは一瞬間沈黙した。


「ならば戻りましょう、御身」


 アマラートの声は軽やかだ。


「もしかすると戦争は、苦痛がどれほど強いかを必要としていないかもしれません。しかし戦争はより多くの苦痛をもたらす——そしてそれが、御身を強くするのです」


「しかし……」


「それに、私たちには死と病があります」


 アマラートはタナトスとパシュースの方に顎をしゃくった。


「彼女たちが旧神だった頃の文献は少なくありません。少なくとも戦う力はありますよね?」


 モーリガンは答えない。


 彼女はただアマラートを見つめた。あのいつも笑っている目を。


「ずっと考えていたんだ」


 彼女の声はとても軽い。


「彼女たちはなぜ私についていくことを選んだのか?ただ私が予言の子だから?私の能力はこんなにも受動的で——旧神にすら見放されているというのに」


 アマラートの睫毛が微かに震えた。


「いつですか?」


「死にかけた時に聞いたんだ」


 モーリガンの視線は遠くに注がれる。


「彼女は言った。『我々には計画がある』と。『あと二回だ』と。『下僕』……と」


「ふうん」


 アマラートの笑顔は変わらないが、その目の奥で何かが一瞬走った。


「面白いですね。御身が過剰に自信をなくされているのかと思っていました」


 モーリガンは彼女を見つめる。


 アマラートの反応はあまりに自然だった。


 自然すぎて、まるで彼女がそう言うのを予め知っていたかのようだ。


「やっと分かりましたよ、彼女が洞窟から出た後、どうしてあんなにじっと私を見ていたのか……」


 アマラートはパシュースの方に一瞥し、自分にしか聞こえない声で呟いた。


「何て?」


「いえ」


 アマラートは視線を戻し、再びモーリガンを見た。


「ただ、御身が成長されているなと思ったんです。権威を否定することは、飛躍の始まりですから」


 彼女は一瞬間を置いた。


「御身が決められたなら、どこへでも、私はお供します」


 モーリガンは彼女を見つめる。


 その目はキラキラと輝き、八年前に初めて会った時と変わらない。


「アマラート」


 彼女は言った。


「ありがとう」


 アマラートは答えない。


 ただ微笑み、そして静かに彼女の隣に座り続けた。


 ◇◇◇


 焚き火の炎が次第に弱まっていく。


 モーリガンは立ち上がり、座る一同を見渡した。


 タナトスは墓石に寄りかかりうたた寝し、パシュースは隣でぼんやりと火を見つめ、カリオペとヘマリスは寄り添い何かを小声で話し、スタシスとエコーは並んで座り、誰も言葉を発しない。


 誰が足りない?


 彼女はもう一度見回した。


「オネイリは?」彼女は尋ねた。


 一同は顔を見合わせる。


「彼女はいつもあなたと一緒にいるんじゃないか?」


 カリオペが顔を上げた。


 モーリガンは首を振り、ケーリスの方を見た——あの影の中に縮こまる小さな者を。


「ケーリス、彼女を見なかったか?」


 ケーリスの体が動き、影から顔を出した。思念が途切れ途切れに伝わる。


「彼女は……さっきまで……あっちの木の下で寝てた……」


 彼女の尾びれが村はずれの方向を示した。


 モーリガンの心が沈んだ。


「連れて行って」


 ケーリスは影から滑り出し、先導する。


 モーリガンは早足で従い、アマラートは無言でその後ろに付く。


 村はずれ、あの古い木の下——


 がらんとしている。


 月明かりだけが葉の間からこぼれ、斑模様の影を落としている。


「オネイリ?」


 モーリガンが呼びかける。


 応えはない。


 彼女は目を閉じ、意識の奥深くに沈み、皆を繋ぐ「糸」を探る。


 オネイリのものは……まだある。


 しかしそれは薄れ、ぼやけ、何かに引っ張られ、遠い方向へ伸びているように見える。


 その方向は——戦場の方角だ。


 モーリガンは目を開けた。


 彼女はオネイリの最近の様子の異常を思い出した——


 ——水に落ちた後の恐怖、ますます上の空になる様子、そしてあの悪夢から覚めた後に「海が……なぜ……」と呟いて言い終えなかったこと。


 彼女が言い終えなかったのは何だったのか?彼女は一体何に悩まされていたのか?


 モーリガンには分からない。オネイリは彼女に一度も話さなかった。


 しかし今、薄れゆくその糸はまだある。かすかな導きのように、頑なに遠くを指し示している。


 その方向は、まさに戦場だ。


 彼女はあそこへ行った。なぜ?


 モーリガンには答えが分からない。


 しかし彼女は知っている。オネイリはもういない。


 そして彼女は、追いかけなければならない。


「御身?」


 アマラートの声が背後から聞こえる。


 モーリガンは振り返らない。


 彼女はただあの夜空を見つめ、もう消えた影が去っていった方角を見つめる。


「戻る」彼女は言う。


「どこへ?」


「戦場へ」


 アマラートは一瞬間沈黙し、そして微笑んだ。


「はい」


 モーリガンは最後にもう一度あの空っぽの古い木を見て、振り返って歩き出した。


 夜風が吹き、木の影が揺れる。


 オネイリはもういない。しかしあの糸はまだある。道を示している——あの、まさに戦火の燃え上がろうとする場所へと。

スタシスの「荊冠」という伏線、ついに回収です!……あまり唐突にはならなかったでしょうか?


何と言っても「荊冠」には、本来“苦難”と“代償”という意味が込められていますから。「荊冠」がスタシスの魂を守り抜いたからこそ、彼女は再生を遂げることができたんです。


ただし、代償として――スタシスの全身には永遠に、茨の紋様が刻まれることになりました。


完璧主義の彼女にとって、今や全身が“不完全”だらけです。でも、これこそが、ある種の“成長”と言えるのではないでしょうか?

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