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痛みを喰らうことで、彼女は本当に定められた神になれるのか?  作者: 野間羊
長夜将明

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第七十八章

 三日間あれば、災厄を生き延びた村が活気を取り戻すには十分だった。


 ベッドの上で死を待つばかりだった人々が再び立ち上がり、固く閉ざされていた窓や扉が再び開き、どの家の煙突からも炊煙が立ち上るまでには、十分な時間だ。


 そしてモーリガンにとって、初めて「お祭り」というものを本当の意味で体験するにも、十分な時間だった。


「アマラート、旗を飾って」


「旗を飾るって言うのに、どうしてこんなに怖いのを飾るんですか?」


「今日は鬼驚祭おにぎょうさいだからだ」


 アマラートは一瞬呆けた。


「今日でしたか。もうそんなに経ったんですね」


 彼女は手にしたあの凄絶せいぜつな鬼の面の旗を見つめ、そしてモーリガンを見た。


 主人の顔にはあまり表情はない。しかしその目の端の数字は、ここのところいつもよりずっと輝いている。


 彼女は本当に喜んでいるのだ。


「本当にありがとうございました、モーリガン様」


 老婆が家の中から出てきて、自分の家の入り口があれこれと華やかに飾られているのを見て、モーリガンの手を握り、離そうとしない。


 皺の間に満ちた笑みは、生き延びた者だけが持つ、真に迫ったものだった。


 モーリガンはこういう親しみには慣れていないが、手を引っ込めもしない。


「当然のことをしたまでです」と彼女は言った。


 ◇◇◇


 鬼驚祭。


 村中が、この病が去った後の最初の祭りを楽しんでいた。


 どの家も物凄ものすごい飾りを掲げ、子供たちは面をかぶって街を追いかけ合い、老人たちは入り口に座り、これらの若い命が再び生き生きと動き出すのを見つめている。


 それに、鬼驚祭にはそもそも呪いを解き、病を払うという意味がある。当然この度、灰燼村は最も盛大な厄除やくよけの儀式を行った。


 オネイリは初めて、自ら進んでモーリガンから離れた。


 彼女は村はずれの古い木の枝に縮こまり、毛むくじゃらの体を丸めている。


 銀白色の産毛が陽光の下で柔らかな光を放ち、まるで忘れ去られた雲のようだ。


 ケーリスはいつしか、また彼女のそばに来ていた。


「どうして君も来たの?」


 オネイリが顔を出す。


 ケーリスは答えない。


 彼女はただ静かに木陰に丸まり、胸の星の渦がゆっくりと回っている。


 その光は、以前よりずっと暗くなっていた。


「君の光の渦、暗くなってるよ、ケーリス」


 オネイリは気づいた。


「どこか具合でも悪いの?」


 ケーリスはうつむき、自分の胸を見る。


「分からない……なぜ……暗くなったのか……」


 彼女の思念が途切れ途切れに届く。


「明明……つらくは……ないのに」


「まさか君も病気になるなんて思わなかったよ」


 オネイリは首をかしげた。


「でも、もしかしたら良いことかもしれないよ?例えば病気への抗体ができて、弱点が減ったとか?」


「私は……元々病気にはならない……」


 ケーリスの思念が一瞬間止まる。


「でも……この病は……精神的なものだった……私の罪悪感が……限りなく増幅された……私の孤独が……私自身を蝕み始めた……」


「蝕む?」


 オネイリは一瞬呆けた。


「君にそんな感情があるなんて思わなかったよ。君がいつも僕についてくるのは、僕の孤独がモーリガンのとは違うからだろ?」


「うん……」


「じゃあケーリス、なぜ君は罪悪感を感じるんだ?」


 長い沈黙があった。


「私の種族は……私一人だけが残った……」


 ケーリスの思念には、重く滞ったような響きがあった。


「なぜ……私一人だけが残ったのか……一体何が起こって……私と仲間たちを……永遠に出られない木の洞に閉じ込めたのか……」


「木の洞?」


 オネイリは瞬きをした。


「モーリガンは木の洞で君を見つけたの?」


「そう……彼女が木の皮を押し開けて……私を見つけた……」


「じゃあ、彼女はどうやって君を見つけたの?」


「彼女が……神殿の暗室あんしつで……私の気配を感じ取った……」


「神殿?」


 オネイリの耳が立った。


「モーリガンの家は神殿って言うの?」


「そう……」


「うーん……」


 オネイリは考え込む。


「じゃあ、彼女はどこの神殿の遺跡いせきなのかって話はしたことある?どの神様をお祀りしてるのかって」


「彼女は……父が言ってた……そこは……いずれ神となった彼女をたてまつるための場所だって……」


 オネイリは呆けた。


「旧神があれほど輝かしい時代を築きながら、それでもなお、いかなる神も祀らない空の神殿を残していたっていうのか?」


「分からない……」


 オネイリはしばらく沈黙し、それから体を伸ばした。


「まあいいか。今日はこんなに楽しいお祭りだもの、こんな話はやめにしよう……」


 彼女はあくびをした。


「あああ~眠いしお腹も空いた……ここで寝てても、誰かに影響しないといいけど……」


 彼女は体を丸め、毛玉になった。


 ケーリスは静かに彼女のそばで見守っている。


 ◇◇◇


 村の別の場所、二人がかりでやっと抱えられるほどの古木の下。


 タナトスが一連の凄絶な鬼灯を提げ、一番高い枝を見上げている。


「パシュース、手伝ってくれ」


 パシュースは三歩離れたところに立ち、腕を組んで、まったく動く気配がない。


「お前の方が背が高いだろう」


「俺は死神だ」


 タナトスはもっともらしく言う。


「この木に触れたら死んだらどうする?」


 パシュースは彼を一瞥した。


「欠片ごときが、そこまで強くはない」


「万一ってこともあるだろ?」


「万一はない」


 パシュースは近づき、灯を手に取り、枝に軽く掛けた。


 その動作は実に手際がよく、まるで「何かに触れば病気を移す」ようにはまったく見えない。


 タナトスは隣でそれを見て、ふと笑った。


「お前、結構できるじゃないか」


 パシュースは無視して、背を向ける。


「おい待てよ——」


 タナトスは残りの灯を提げて追いかける。


「まだ他にも何本かあるぞ」


「自分で掛けろ」


「俺は届かない」


「ならもっと背を伸ばせ」


 タナトスは笑った。


「お前って奴は、ちっともお祭り気分ってものがないな」


 パシュースは足を止め、横を向いて彼を一瞥した。


 その濁った目からは何の感情も読み取れない。


「祭りだからって、お前の灯を掛けてやらねばならんのか?」


「いや、そういうわけじゃないけど……」


 タナトスは頭をかく。


「ただ、二人でやる方が面白いかなって思っただけだ」


 パシュースは二秒間沈黙した。


 それから彼女は向き直り、次の木へと歩き出した。


「ついて来い」


 タナトスは一瞬呆け、それから笑顔で後を追った。


 ◇◇◇


 ケーリスはいつの間にか近くまで漂ってきて、木陰から半身を乗り出し、二人を見つめていた。


 タナトスはうつむいて彼女を見て、目を輝かせた。


「おや、小さな君、どうしたんだ?」


 ケーリスは答えない。ただ二人を見つめている。


 パシュースはケーリスを一瞥し、またタナトスを一瞥した。


「知り合いか?」


「知ってるさ、モーリガンのとこの子だ」


 タナトスは軽く答えた。


「なかなかいい子だ」


 パシュースは視線を戻し、何も言わなかった。


 二人は次の木へと歩き続ける。


 ケーリスは二人の背中を見つめ、ふと思念を送った。


「お二人の……仲は……本当にいいですね……」


 タナトスの足が止まった。


 パシュースも止まった。


「どこがいい?」


 パシュースの声には抑揚がない。


「こいつがただのしゃべりすぎなだけだ」


 タナトスは瞬きをし、声を出して笑った。


「向こうは俺のことがいいって言ってるんじゃなくて、二人の仲がいいって言ってるんだぞ」


 パシュースは無視して、また歩き出す。


 タナトスは追いかけて、気軽な口調で言う。


「ケーリス、その言葉はパシュースに誤解させちゃいかんな。彼女は元々俺を鬱陶しいと思ってるんだから」


 ケーリスの思念は困惑を帯びている。


「でも……あなたが喋ってない時も……彼女はあなたを見ていましたよ……」


 パシュースの足が一瞬止まった。


 そして彼女はさらに速く歩いた。


 タナトスは頭をかきながら追いかける。


「ちょっと待ってくれよ——」


 ◇◇◇


 村の中央広場。


「カリー……本当に……モーリガンにこの格好が似合うと思うの?」


 ヘマリスの声には不確かさと、それから「これ、本当に大丈夫なの?」という心配が混ざっている。


「もちろんさ」


 カリオペは手に奇抜な飾りの数々を持ち、その目は興奮に輝いている。


「俺はモーリガン独特の魅力に合わせて選んだんだ。絶対似合うよ」


 ヘマリスはその数々を見る——どれもこれも度を越していて、言いたいことがあっても言い出せない。


 モーリガンは傍らに立ち、なされるがままに任せている。


 彼女はさっきアマラートを追い払い、こっそりと抜け出してカリオペとヘマリスに手伝ってもらっていたのだ。


 カリオペの美的感覚は……時々あまりアテにならないが、今日はお祭りだ。彼女は普通の人みたいに、思い切り楽しんでみたかった。


「出来た!」


 カリオペは満足そうに手を叩く。


「完璧」


 ヘマリスの表情は何とも言えない。


 モーリガンはうつむいて自分を見、それから何か言いたげなヘマリスの目を見て、内心何となく嫌な予感がした。


 しかし彼女は意を決して、この格好のまま、待ち合わせの場所へと歩いていった。


 ◇◇◇


 広場の向こう側、ケーリスはもう戻っていた。


 タナトスとパシュースも灯を掛け終えて戻ってきた。


 アマラートはその場に立ち、主人を待っている。


 そして彼女はモーリガンを見た。


 アマラートの口元が引きつる。


 タナトスは村人が差し出したばかりの温かいお茶を手に取った——


「ぷっ——はははははははははは!」


 茶を噴き出した。


 パシュースは離れたところにいたので、難を逃れた。


 彼女はモーリガンのあの格好を見て、口元がほんの少し上がったが、すぐに引っ込めた。


「御身……」


 アマラートの口調は複雑だ。笑いをこらえているようにも見える。


「もしその格好を怖いとおっしゃるなら、確かにそれは……かなり驚かされますね」


「怖いっていうか、笑えるって感じか?」


 モーリガンは慌てて振り返り、街の店のガラス窓を見る。


 そこに映る自分——


 顔には奇妙な化粧が施され、頭にはでたらめな飾りを載せ、服の合わせ方は……まあ、非常に「創造的」と言うほかない。


 タナトスは腹を抱えて笑い、涙まで出ている。


「今日はお笑い祭りか、それとも鬼驚祭か?ははははは——」


 彼は笑いながら、急に声が詰まった。


「モーリガン」


 その口調が変わった。


「後ろのあれも、お前の飾りの一部か?」


「何がだ?」


 モーリガンは振り返る。


 一匹の蛇。


 全身が赤く、白い斑紋はんもんを帯び、村の上空を旋回している。


 高く、高く飛んでいる。輪郭だけが辛うじて見えるほどだ。


 それは何の音も発していない。ただ静かに、下方の賑やかな人々を見下ろしている。


 村人たちはちらりと見上げ、笑いながら指を指す。


「誰かが作った飾りか?なかなか本物らしいじゃないか」


 そしてまた自分のことに戻る。


 その蛇も、攻撃する気配はない。


 その目は、ただ一人だけを見つめている。


 目尻を拭いているあの人を。


 タナトスの手が宙で止まった。


 彼はその蛇を見つめ、その目を見つめる。


 その目には、彼には言い表せない何かがあった。


 まるで、ようやく見つけた、というかのように。


 パシュースは眉をひそめた。


 彼女はこの蛇を知らない。


 しかし彼女は覚えている。三日前の、ある瞬間、似たような影を一瞬見たような気がしたことを。


 その時は気に留めなかった。


 今、それが来た。

せっかくのお祭りですから、楽しい時間を過ごすのが一番ですよね?というわけで、今回はちょっと軽めの、ほっと一息つけるような章をお届けしようと思います。だって、モーリガンたちはこれからどんどん忙しくなって、ゆっくり休める暇もなくなっていくでしょうから。

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