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痛みを喰らうことで、彼女は本当に定められた神になれるのか?  作者: 野間羊
長夜将明

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第七十五章

 暑い。


 洞窟の奥で、なぜこんなに暑い?


 モーリガンはアマラートの腕の中に横たわり、意識がぼんやりする中で、アマラートの唇が動いているのを見た——開き、閉じ、開き、閉じ。まるで砂浜に打ち上げられた魚のように。


 しかし彼女には何も聞こえない。


 周囲の気体がますます濃くなっていく。


 アマラートが急に身をひるがえし、彼女を壁際に寄りかからせた。


 壁は熱湯の沸く鍋の縁のように熱い。


 仮面は呼吸を閉じ込める枷となった。


 衣服は熱を逃がすための重荷となった。


 しかし彼女は動けない。呼吸をするだけでも苦しい。


 視界の中で、アマラートが再びあの恐ろしい姿に変わった——翼が衣を裂き、舌が二又に分かれ、眼球が溶けて再形成される——そしてぼんやりとした影に向かって突進していく。


 あれは死体が動いているのか、それとも別の何かか?


 モーリガンには見分けがつかない。


 アマラ……ト……


 最後の力を振り絞って、彼女の名前を呼んだ。


 しかし声は小さすぎて、自分にすら聞こえない。


 そして、暗闇がすべてを呑み込んだ。


 ◇◇◇


 糸がない。


 オネイリがいない。


 音もなく、色もなく、白も黒もない。


 死とはこういうものなのか。


「私の神選は本当に弱すぎるな」


 混沌の中から声が聞こえた。


 その声はどこかから聞こえるのではなく、直接意識の中で炸裂したかのようだ。


 お前は誰だ?


 言葉ではなく、ただの思いだ。


 モーリガンには相手に聞こえているかどうか確信が持てない。


「我々の計画はここで失敗するわけにはいかない。明明、閉じ込めてあったのに……」


 誰を閉じ込めた?


「苦痛は継続されねばならない。あと二回は助けてやれる、大事に使え——自分の下僕に殺されるわけにはいかないからな」


 何の下僕?お前は一体何を言っている?


 モーリガンはこの雲をつかむような話にますます混乱する。


 何の計画?何の下僕?二回——二回って何が?


「おやおや、ショートカまであるのか」


 言い終わらぬうちに、その虚無の中から突然、一群のカラスが湧き出した。


 それらは旋回しながらモーリガンの前に飛び、両側に散った——タナトスがそこに立っていた。


「お前の能力は本当に面白いな、モーリガン」


 タナトスは首をかしげて彼女を眺める。


「復活もできるのか?疑問だな、俺がこれを管轄している者なのかどうか、疑わしくなってくるぞ」


 タナトス?


 モーリガンの思いが一瞬止まった。


 さっきのはお前が話していたのか?


「ん?」


 タナトスは瞬きをした。


「俺は今来たところだ。面白い小羊に呼ばれてな」


 オネリ……


「そうだ、そんな名前だったな」


 どうやってここに入れた?


「小羊がこの山は自分が徴用したと言ったからだ」


 タナトスは極めて気軽な口調だ。


「そして彼女が俺に入ることを許した」


 徴用?


 モーリガンは呆けた。


 彼女にこの山を徴用できるなんて、知らなかった。


「とにかく、病因は見つかったのか?」


 お前が出れば分かる。


 タナトスは彼女を見て、口元を歪めた。


「というか、お前が出るべきだな。ここは俺の管轄区域だからな——ただお前は今、半死半生の状態だから、俺にはかろうじてお前が見えるだけだ」


 何?


 考える間もなく、タナトスは手を伸ばして軽く彼女を押した——


 ◇◇◇


 モーリガンははっと目を開けた。


 熱気が喉に流れ込み、むせて激しく咳き込む。


 仮面はまだ顔に被さり、息苦しくて窒息しそうだ。


 前方で、アマラートがあの少女と格闘している。


 彼女は荒い息を吐き、何度も何度も飛びかかって爪を振るう。


 しかし何度打撃を与えても、少女は痛みを感じていないかのようで、青灰色の体は一歩も後退しない。


 なぜ……アマラートは平気なんだ?


 モーリガンはぼんやりと思う。


 しかし彼女には問い詰める力はない。


 そしてその時、彼女は背後に何かを感じた。


 違う——背後ではない。


 彼女の体内から、何かが這い出てきているのだ。


 引き裂かれるような痛みが背骨の奥から炸裂した。


 その痛みは腕を失った時とは違う。傷口が痛むのではなく、体全体が内側から押し広げられ、砕かれ、引き裂かれているのだ。


 彼女は口を開いたが、声が出ない。


 一本の手が彼女の背中から突き出た。


 青白い。細長い。


 続いて肩、頭、半身——


 タナトスがモーリガンの体から這い出てきた。


「なんだここは、けむたいな?」


 彼は自分の体についた見えない埃をはたき落とし、周囲を見渡した。


 アマラートの烙印が激しく明滅する。


 彼女は慌てて振り返り、モーリガンの後ろに人影が増えているのを見て、声が一変した。


「烙印が……おい!主人に何をした?!」


「彼女が死にかけてたのは、俺のせいじゃないぞ」


 タナトスは肩をすくめた。


「でも、確かに少し血が欲しいところだ」


 彼の視線はモーリガンの肩に落ちる。


「お前の肩からもらおう。長く渇望していた」


「主人から離れろ!ああ——!!」


 アマラートは飛びかかろうとしたが、病源の少女が呼び出した地蛇に絡みつかれる。


 それらの蛇は既に病で目が見えず、舌もないが、なお毒牙を彼女の皮肉に深く食い込ませる。


 アマラートは叫びながら一撃で蛇の頭を切断した。毒牙はまだ足に食い込んだままだったが、彼女はそれを抜く余裕もなく、ただモーリガンの方へ突進しようとする。


 そしてタナトスはもう頭を下げ、モーリガンの肩口に噛みついていた。


 ◇◇◇


 次の瞬間、異変が起きた。


 血が喉に流れ込んだ瞬間、タナトスの体が激しく強張った。


 さっきまで満足感に浸っていた血管が突然激しく脈動し始める。まるで何か異物に侵入されたかのように。


 発熱。腫瘍。咳。嘔吐。


 一連の病変が彼の身に炸裂した。まるで加速された疫病のように速い。


「うっ……くそ痛いな……」


 これがタナトスの「死ぬ前」の最後の言葉だった。


 彼は倒れた。


 肩に止まっていたあの橙色の羽毛のカラスも同時に地面に落ち、数回痙攣し、そして腐り始めた。


 羽毛が抜け落ち、皮肉が溶け、鼻を刺す病気の臭いを放つ。


 空気が数秒間静まった。


 そして、その腐乱した死体の山から、一人の人間が這い出てきた。


 タナトスだ。


 彼は全身が粘液にまみれ、まるで生まれたばかりの嬰児のようだ——しかし顔色は前回よりずっと青白い。


 肩には新しいカラスが止まっている。深緑色の羽毛、翡翠のような目だ。


「これまでで一番つらい死に方だった」


 彼は強張った首を動かし、その声には本当の疲れが混じっている。


「酷すぎる」


 新生したカラスが翼を広げ、鋭い鳴き声を発した。


 音波が洞窟中に広がる。


 あの粘つく灰綠色の霧が、見えない手に引き裂かれたかのように、瞬時に大半が消え去った。


 病源の少女は衝撃によろめき、足元がふらつき、危うく倒れそうになる。


 タナトスは彼女を見て、指さした。


「お前が病源だな?」


 彼の口調はとても気軽だ。今日の夕食を尋ねるかのように。


「勝手に死ぬ権利を奪うのは、重罪だぞ。分かっているか?」


 少女の皮膚がまた一枚剥がれ落ちた。彼女はうつむき、半分だけ残った脚の骨で立っている。その骨はもう踏み潰されたように砕けている。


「だから?」彼女は顔を上げる。「私に死ねと?」


「ん?じゃあ他に何がある?」


 少女は一瞬間沈黙した。


 その濁った目の奥で、何かがちらりと光った。


「私が誰だか知っているか?」


 タナトスは一瞬間呆けた。


 そして彼は笑った。


 その笑みはとても短く、一瞬で消えた——嘲りではなく、面白い質問を聞いたかのような反応だ。


「知らん」


 彼は言う。口調は依然として気軽だ。


「でも、それは重要じゃない」


 彼は手を上げて自分の二本の牙を掴み——力を込めて引き抜いた。


 血が歯茎から溢れ出し、指の隙間を伝って滴り落ちる。


 しかし彼は眉一つ動かさず、むしろ口を歪めて、あのまだ血が滲む牙の穴を露出させた。


 牙が彼の掌で一回転し、一本の流れる血の鎖が虚空に現れ、二本の牙を繋いだ。


 両頭牙鎌りょうとうがまが形作られた瞬間、空気が数度冷えたかのようだ。


 タナトスは鎖を振り回し、牙鎌が空気を切り裂く音を立てる。


「大事なのは——」


 彼は一瞬間を置く。


「お前は今、俺の管轄下にあるってことだ」


 彼は顔を上げる。その血色の瞳孔の奥に、洞窟の奥の無限の闇が映っている。


「お前のあの、死を待つ仲間たちを全部呼び出せ。奴らはこの瞬間を長く待っていた」

モーリガン視点に戻りました。病の神の欠片に遭遇したからには、病にならずに済むわけがありません。でも、そうなるとモーリガンが弱く見えすぎちゃいますよね?だからこそ、この“預言の子”には、まだまだ成長の余地がたっぷりあるってことなんです。

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