第六十八章
洞窟の前に立つと、モーリガンは中から時折、悪寒が漂ってくるのを感じた。
その冷たさは、普通の洞窟の陰気さとは違う。もっと深いところからくる何か——まるで何かが腐敗し、息をひそめ、待ち構えているかのような。
ほとんど全員がそれを感じ取っていた。
「本当に全員で入るの?」
オネイリの声が髪の間から聞こえる。不安の色を帯びて。
「入るのは確定だな」
カリオペが言葉を引き取る。
「ただ、ヘマリスと俺は実体化しておく。中に即座の反応が必要なものがいた場合、ネックレスから出るのではワンテンポ遅れる」
ヘマリスは彼女を一瞥したが、反論しなかった。
スタシスに拒絶されてから、オネイリの性格は少し変わっていた。
水に落ちる事件を経験してから、彼女はさらに上の空になりがちだ。
言い換えれば、彼女は少し臆病になっていた。
しかしモーリガンはそれが普通だと思った。
本来の銀羊族は、こんな経験をするべきではなかった——もし悪夢の神の欠片が彼女を選んでいなければ、彼女は今頃、無限の美しい夢の中でおとぎ話を紡いでいただろう。
「オネイリ、あなたはここに残ったら?」
「でも、僕は……」オネイリの声が止まる。
「そう、私から離れるとあなたは眠ってしまう」
モーリガンが代わりに言った。
「たとえ夢を見なくても、あなたにとっては悪夢でしょ。悪夢とミントの地はあなたの糧。あなたは二つに一つを選ぶしかない。でも少なくともここに残れば、少しは安心できる」
オネイリが口を開く前に、モーリガンは続けた。
「一番の理由は、あなたの能力範囲は広くて、夢を通じて他人と連絡が取れることよ。もし私たちが中でずっと動きがなかったら、あなたが一番早くタナトスや村人たちに連絡できる唯一の人なんだから」
モーリガンがこれほど自分を信頼してくれているのを聞いて、オネイリも断れなくなった。
彼女は髪の間から転がり落ち、地面で体を丸め、銀羊の姿に戻った。
ほとんど即座に、彼女は欠伸をし始めた。
その開かれた口から、モーリガンは見てはいけないものを見てしまった——銀羊のイメージとは全く合致しない、細かな牙がびっしりと並んだ恐ろしい口内を。
「オネイリ、なぜあなた……」
「行きましょう、御身。時間は待ってくれませんよ」
アマラートがそっとモーリガンを押し、洞窟の入り口へと送り込んだ。
洞窟の外で、オネイリは木の幹に寄りかかり、丸くなった。
すぐに、彼女の体は微かに震え始めた——またあの海だ。あの永遠に逃れられない悪夢。
海よ……また海か……なぜ……お前は……俺を呼ぶんだ……
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洞窟は予想以上に深かった。
ケーリスの胸の星の渦が最も明るい照明となり、幽かな藍色の光が岩壁に揺らめく影を投げかける。
彼女が先頭を歩く。影でできた体が光と闇の中でくっきりと浮かび上がる。
ヘマリスとカリオペは実体化して後ろに続く——彼女たちが自ら実体を保ったまま場所に入るのはこれが初めてだ。
モーリガンは列の最後尾を歩き、アマラートがそのすぐ隣に付く。
足音が狭い通路に反響し、単調で気が滅入る。
前方で、カリオペが何か小声で言った。ヘマリスはほんの少し横を向いただけで、応えない。
しかしその沈黙には、他者が立ち入ることのできない何かが含まれていた。
「アマラート」
モーリガンが突然口を開く。声は極めて低い。
「教えて、なぜすぐに私を押し込んだの?」
「だって、みんなもう中に入ってましたから」
アマラートの答えは歌でも歌うように軽い。
「私たちが遅れるわけにはいかないでしょう?」
「みんな待ってくれるわ」
モーリガンは横を向いて彼女を見る。
「あなた、何か知ってるんじゃない?オネイリのこと。彼女に会った時から、あなたは少し拒絶してた」
「拒絶なんてしてませんよ。彼女がいきなり御身に抱きついたから嫉妬しただけです」
アマラートは首をかしげ、笑顔にわざとらしい哀しみを混ぜる。
「御身、私が嫉妬するのをご存知でしょう?」
「じゃあ、オネイリの口の中は?」
モーリガンははぐらかされなかった。
「銀羊族に、あんな恐ろしい場所があるはずない」
アマラートは一瞬間沈黙した。
「もしかすると、神の欠片の影響かもしれないですね」
彼女の声は軽さを失い、低くなる。
「ご覧なさい。ケーリスは孤独の力のせいで、全族が彼女だけになってしまった。ヘマリスは明明、記憶の女神の欠片なのに、忘却の力を背負っている。カリオペの顔の烙印は、居場所を見つけた後も癒えていない——これらは全て、半神になるための代償です」
彼女は一瞬間を置いた。
「御身も同じです」
アマラートの視線がモーリガンの顔に落ちる。
「御身は、自分を欺く苦痛を背負っている。ご覧なさい、明明は苦痛を享受し、もたらすべき存在なのに、ずっと正義すぎる善行を続けている。もしまだ生きている苦痛の神がこの全てを見たら、どれほど苦しむことか」
モーリガンは呆けた。
アマラートがここまで知っているとは思わなかった。
彼女はすぐには答えず、ただ黙って前に進み続けた。
視線は前方の二つの影に注がれる——カリオペがまた何か言い、今度はヘマリスがそっと首を振った。しかしその口元には、極淡い弧が浮かんでいる。
その弧には攻撃性はない。ただ何か言葉にできないものが含まれている。
自分とアマラートの会話とは正反対の光景だ。
もしかすると、アマラートの言う通りかもしれない。
悪夢がオネイリをあの恐ろしい姿に変えた。
もし自分がオネイリなら、きっとあの傷跡に触れられたくないだろう。
「そうね」
モーリガンがようやく口を開いた。
「もしかするとあなたの判断は正しかったのかも、アマラート」
「うふふ」
「だからこれからは」モーリガンは彼女を見る。「あなた自身が決断する場面をもっと見せてくれない?」
アマラートの表情が一瞬固まった。
「それは……難しいお願いです、御身」
彼女の声は低くなり、先ほどの余裕は消えた。
「こう言ったのは、御身がもう全てお分かりだろうと思って口にしたまでで、決して御身に逆らおうという意味ではありません。御身がおっしゃったように——私はただの僕です。必要な時に提案し、不必要な時は黙っている。それが僕の役目です。そして決断は、御身だけのものです」
その言葉が終わると同時に——
ケーリスの星の渦が激しく瞬いた。
彼女は足を止めた。
カリオペも声を潜め、話すのをやめた。
空気が突然静まり返った。
その静けさはおかしい。
がらんどうの静けさではなく、何かが暗がりで息をひそめている静けさだ。
次の瞬間、巨大な黒い影が脇の通路から猛然と飛び出した!
ケーリスは瞬時に反応し、跳躍して間一髪でかわす。あの一撃は彼女を粉々にするのに十分だった。
彼女の体は空中で折れ曲がり、その巨物の太い腕の上に着地する——
しかしその腕の表面は粘つく膿液と爛れた瘡蓋で覆われ、滑って全く掴まれない。
ケーリスは滑った。
巨物は躊躇なく口を開け、自分の腕に噛みつこうとする——自分が傷つくことを気にせず、ただ自分に這い上がったものを引き裂きたいだけだ。
「ケーリス!」
カリオペの氷の柱が危機一髪で巨物の口内に突入し、無理やり上下の顎を支えた。
ケーリスはその隙に脱出し、よろめきながらモーリガンの足元に落ちた。
しかし彼女は立ち上がれなかった。
彼女の体は激しく震え始め、星の渦の光が明滅する。
モーリガンは手を伸ばして支えようとしたが、触れた瞬間に慌てて手を引っ込めた——
熱い。
かつてないほどの熱さだ。
その温度は、普通の生物にあるべきものではない。
「ケーリス?!」
前方では、カリオペとヘマリスが巨物と格闘している。
星の渦の光はますます弱まり、視界が急激に低下する。彼女たちは音だけを頼りに相手の位置を判断するしかない。
ヘマリスは一片の灰色の霧を放ち、攻撃の本能を忘れさせようとする。
確かに巨物の動きは数秒間止まった。
しかし次の瞬間、体内で何かが破裂する鈍い音が響き、咳のようなくしゃみのようなかすれた異音と共に、再び襲いかかった。
「私の能力が効かない!」
ヘマリスの声が変わる。
「もう生物とは言えない!カリー、気をつけて!」
カリオペの氷の壁が次々と立ち上がり、また次々と打ち砕かれる。
紅色の雨の糸が降り注ぎ、その関節を凍らせようとするが、あの膿液と爛れた組織が氷の付着を阻む。
彼女は正面からの一撃はかわしたが、払われた腕は避けられなかった。
疱疹と腫瘍で覆われたその腕が、彼女に激しくぶつかる。
カリオペの全身が吹き飛ばされ、岩壁に激突した。
次の瞬間、彼女の皮膚が異変を起こし始める。
あの化膿した疱疹が目に見える速さで彼女の全身に広がり、腫瘍が皮下から隆起する。痛みに彼女は丸くなり、悲鳴すら上げられない。
「カリー!」
ヘマリスが駆け寄るが、手を伸ばした瞬間に固まった。
「来るな……来るな……」
カリオペの声が歯の間から絞り出される。一言一言が全力を振り絞っている。
「移る……から……」
言い終わらぬうちに、彼女は気を失った。
そしてその巨物も、同時に轟音と共に倒れた。
それは地面に崩れ落ち、泡を吹き、数回痙攣し、ついに動かなくなった。
しかし胸にはまだ微かな上下がある——死んだのではなく、ただ疲れただけだ。
アマラートが慎重に近づき、ケーリスの残した微かな光でそれを観察する。
「巨型哥布林ね」
彼女は小声で言った。
「巨魔とも呼ばれるわ。こんな地下迷宮は、元々彼らが住みやすいように建てた宮殿なの」
彼女は一瞬間置き、視線を巨物の体中の無数の傷口と膿疱に向ける。
「ここには他にも生物がいるはずよ——夜蝠、地蛇、史莱姆、变异蜘蛛……でも今となっては、みんなこんな姿になっているんでしょうね」
彼女は数歩後退し、モーリガンのそばに戻る。
「御身、大丈夫ですか?」
「大丈夫」
モーリガンの声は落ち着いているが、額には冷や汗が浮かんでいる。
医者からもらった仮面が確かに効いていた。
「ヘマリス」
モーリガンはカリオペのそばにしゃがみ込む霧の女に向き直る。
「仮面を付けなさい。ケーリスとカリオペを外に連れ出して。カリオペには直接肌で触れないように。オネイリに頼んで、タナトスを呼びに行ってもらって」
ヘマリスが猛然と顔を上げる。
「あなたは?」
「私とアマラートはもっと奥へ進む」
「モーリガン!」
ヘマリスが立ち上がる。
「私たち大勢でもあんなに苦戦したのに、二人だけで行くなんて危険すぎる!」
「泡を松明代わりにするわ」
モーリガンの掌に、黒い泡が一つ浮かび上がる。その泡は幽かな光を放ち、まるで消えないランプのようだ。
「アマラートは菌に感染しないと言ってる。私が彼女の分の仮面を持っていくわ」
彼女の声は落ち着いており、反論を許さない。
「私たちは大丈夫」
ヘマリスは彼女を見つめ、数秒間沈黙した。
そして仮面を受け取り、顔に付けた。
腰をかがめて気を失ったカリオペを抱き上げる——服越しに、慎重に、肌が直接触れないように。
ケーリスはそっと彼女の腕の中に収められる。あの熱い体は、服越しにも灼けるように感じられる。
「生きて帰ってきて」と彼女は言った。
「約束する」
ヘマリスはもう振り返らなかった。
彼女の影は来た時の暗がりの中に消えた。
モーリガンは向き直り、前方のさらに奥へと続く通路を見つめる。
あの黒い泡が彼女の掌で脈打ち、幽かな光を放ち、岩壁に残るいつ刻まれたか分からない引っ掻き跡や血痕を照らし出す。
「行こう」と彼女は言う。
アマラートがその足取りに従う。
背後で、あの巨物の呼吸音が次第に弱まっていく。
もちろん、この「巨大ゴブリン=トロール」という説が正しくないのは分かっています。大抵の西洋ファンタジー作品では、この二つは別の種族ですからね。ただ、種族を増やしすぎたくなかったので、あえて同じ存在にしちゃったんです。




