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痛みを喰らうことで、彼女は本当に定められた神になれるのか?  作者: 野間羊
長夜将明

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第六十六章

 「呪い?何かの伝染病ってことか?」


 モーリガンは燃える死体の山を見ながら尋ねた。


「あんた、旅の医者か何かかい?」


 医者はモーリガンの質問を聞き、また彼女の常識外れな姿を見て、思わず聞き返した。


 その口調には、抑えきれない期待が微かに滲んでいた——彼は、来た者が医者であってほしいと、切に願っていた。


「医者ではないわ。でも、原因がわかれば、何とかしてみる」


 彼女は初めて、こんなにも少ない「糸」を見た。


 病者たちに絡みつくそれらの糸は、ほとんど色を失っていた。冬に凍え死んだ枯れ草のように白い。


 ここでの苦痛が、彼女に奇妙な安堵感すら与えている。


 それでも良心はまだある。


 彼女は彼らを助けたかった——もしかしたら、ただ知りたかっただけかもしれない。これを引き起こしたのが、神の欠片なのか、それとも魔法を間違え、呼び出す対象を間違えただけの誰かなのかを。


 そんなことは珍しくない。父は言っていた。彼がかつていた石苔村も、そんな風に地図から消えたのだと。


「ついて来な」医者が振り返る。「資料を見せよう」


「待ってください、御身」


 アマラートが突然口を開く。その声には警戒心が混じっていた。


「やっぱり、あの死体が燃え尽きてからにした方が——」


「医者さん!危ない!」


 言い終わらぬうちに、異変が起きた。


 骨まで真っ黒に焼けた一体の死骸が、突然、全身に炎をまとったまま、あの仮面の医者に襲いかかった!


 医者は一人の村人に突き飛ばされて難を逃れたが、その村人の背中に瞬時に火が燃え移った。


 村人は体をひねって肘打ちし、まだ蠢く死骸を押しのけたが、自分自身も激しく咳き込み始めた。


 彼は体の火を消し、死骸の頭を足で踏み潰した——だが、頭のないその体は、まだ動いている。


「炎でも奴らは死なないのか?!」


 医者は叫び、自分の仮面を引きちぎって地面に叩きつけた。


「本当に助からないんだ!死にたくても死ねない!」


 さらに多くの死骸が動き始めた。


 それらは火の海から這い出し、口を開けているが、声帯はもうないため何の音も発しない。ただ無言で、歪に、まだ生きている人々に向かって這っていく。


「みんな、人を助けて」


 モーリガンの声が落ちるや、ヘマリスとカリオペがネックレスから姿を現した。


 ヘマリスは一片の灰色の霧を放ち、霧は最も近くの数体の死骸に絡みつく。


 死骸たちは一瞬で自分が何をしようとしていたのかを忘れ、その場に呆然と立ち尽くした。まるで糸の切れた操り人形のように。


 カリオペの能力はまさに「専門分野」だった——紅色の雨の糸が天から降り注ぎ、正確に死骸の炎を消し、次の瞬間にはそれらを透明な氷の塊の中に閉じ込めた。


 彼女が勝利のサインを送ると、氷の塊は音を立てて真っ二つになった。


 しかし死骸は死なない。


 それらはまだ氷の中で微かに震えている。


 オネイリは出てこなかった。


 彼女は一瞬迷った——自分の能力は死骸には効かないだろう、と。


 しかし迷った後、彼女は一匹に悪夢を植え付けてみた。


 すると死骸は本当に「眠った」。


 それらは地面に横たわり、もう動かない。だが、まだ「生きている」。まるで永遠の悪夢に閉じ込められたかのように。


 ケーリスは影で人々を自分の体内に包み込み、軽々と安全な場所へと移した——医者は屋根の上に置かれた。


「あんた、何者なんだ?召喚師か?」


 医者は屋根の端に立ち、地面でアマラートに守られているモーリガンに向かって叫んだ。


「ただの聖徒候補よ。巡礼の途中なの」


 モーリガンは顔を上げた。


「ここへ来たのは、できる限りのことをして助けるため」


「どこの教会の聖徒だ?審判廷のお方か?」


「残念ながら、違うわ」


 医者は一瞬間沈黙した。


「構わん」


 彼は言った。その声には、かすれた確かさが宿っていた。


「助けてくれるなら、それだけで感謝する。降ろしてくれ。診療録を見せよう」


「ケーリス、降ろしてあげて」


 モーリガンはカリオペに向き直った。


「この死骸たち、全部凍らせて」


「おっけー」


 カリオペは手際よく応じた。


 すぐに、死ねなくなった死骸たちは氷の棺に封じられた。


 医者は新しい仮面を付け、モーリガンたちにも幾つか差し出した。


「私たちはいいわ」


 ヘマリスは首を振った。


「私とカリオペはネックレスに戻るから、それで問題ない」


 言い終わると同時に、二人は流光となって再びモーリガンの胸元へと戻った。


「私もいい」


 アマラートは軽く言った。


「こんな菌、私には何でもない」


「本当に大丈夫なのか?」


 モーリガンは彼女を見た。


「いくらなんでも、お前には人間の部分も残っている」


 アマラートの目が三日月のように細まった。


「御身が心配してくださるなら、もちろん付けますよ」


「……なら、付けろ」


 アマラートは笑顔で仮面を受け取った。


 ---


 教会の中は病者で溢れていた。


 症状はそこまで重くない。少なくともまだ呼吸はでき、目も開けられる。


 しかし誰もが見るからに痩せ細っていく。頬骨が突出し、目は落ち窪み、まるで何かに少しずつ生命力を吸い取られているかのようだ。


「もう看護師はいない」


 医者が言った。その声に疲れは感じられない——もう麻痺しているのだろう。


「医者も私一人だけだ。そして私の病も、さっきの助手と同じで……発症すれば倒れる。死ぬんじゃない、何の感覚もなく倒れるだけだ。あの死骸たちのように」


 彼は一瞬間を置いた。


「だから、新しい医療班が来てほしいと願っていた。たとえ一人でもいい、新しい技術を持って、この疫病を治してくれと。だが結局誰も来なかった。今はもう、誰も来てほしくない」


「なぜ?」


「この病は治せないからだ」


 医者は病者たちを見た。


「予防手段すらない。誰もが訳もわからず発症する。症状は肺疽はいそにも似ていれば、僵行症キョウコウショウにも似ている。原因が全くわからない」


「肺疽?」


 モーリガンは眉をひそめた。


「肺がゆっくりと腐っていく病だ」


 医者は自分の胸を指した。


「患者は血を吐き、呼吸困難になり、最後は窒息して死ぬ。しかしここの患者は……ただ血を吐くだけじゃない。死んだ後も這い出して、歩き続ける」


「僵行症」


 モーリガンは繰り返した。


「そうだ」


 医者は苦笑した。


「僵行症にかかった者は、死後、生きている屍のように動くが、大抵はすぐに完全に死ぬ。しかしここの者たちは……屍のまま死なない。焼いても焼けきらない」


「では、0番目の患者はどうやってこの病に?」


「0番目の患者は冒険者だった。よそから来たんだ」


 医者は数回咳き込んだ。


「村に着くなり、村の裏山に地下迷宮ちかめいきゅうがある。中には無尽蔵の宝がある。見てくる、と言った」


 彼はしばし沈黙した。


「想像通りだ。山から戻った彼は、既に病人のような様子で、最後は酒場で倒れた。私の妻が彼の主治医だった……妻もこの病で、逝った」


「地下迷宮?」


 モーリガンは繰り返した。


「行ってみるわ。でも、あなたたちは必ず持ちこたえて」


「いや、お嬢さん」


 かすれた声が割り込んできた。


 さっき医者を救ったあの村人だった。


「もう山は封鎖した。今は誰も山に入れられない。もしまた新しい病を持ち出されたら、私たちはもっと生きられなくなる」


「でも、入らなければ、どうやって原因を見つけるの?」


 モーリガンは彼を見た。


「このまま待って、村中がみんなあの死んでも死にきれないものになるのを?」


 村人は沈黙した。


 やがて、彼は口を開いた。


「入りたいなら、まず一人に会わなきゃならん」


「誰?」


「タナトスだ」


 彼は言った。


「吸血鬼を名乗る奴さ。奴の肩にはでかいカラスが止まっている。ずっとあの地下迷宮を探してるんだ。俺たちは入れてやらなかったが、奴も去らず、この辺りに留まって俺たちを助けてくれてる。ただ昼は奴が休む時間だから、今は会えない」


「どこに?」


「墓地だ」


 村人は西を指した。


「村から数百メートル、西へ行けば見える」


 モーリガンは迷わず、振り返って外へ向かった。


 彼女は想像できなかった。世の中にまだこんな場所があるなんて——無実の者たちがひどく苦しめられ、絶え間ない苦痛が彼女の泡を少し膨らませている。


 しかしこれは彼女が見たいものではない。


 彼女は望まない。あの死骸になった者たちに、まだ「糸」が残っているなんて。


 あの糸は、本来、死んだものに現れるべきではないのだから。

異世界ものには欠かせないお約束、ダンジョンです!新キャラクターも登場しますので、皆さんに気に入ってもらえると嬉しいです。

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