第五十八章
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その後のモーリガンは確かにカロンを追わなかった。彼女はオーケアノス港を再び通ることすらしなかった。
カリオペが氷の足場を操り、一行は荒涼とした岸辺にたどり着いた——どの都市にも属さず、どの勢力にも支配されず、ただ潮汐が日夜削り続ける岩礁と砂利だけが広がる場所だ。
その後、カリオペとヘマリスは再びネックレスに戻り、静かにモーリガンの胸元に垂れていた。
「行こう、サンタリアを見てみる」
モーリガンが馬車を呼び寄せようとしたその時、懷中の巻物が突然震えだした。
それは束縛を振り切り、宙に浮かび、広がった羊皮紙に父の姿が浮かび上がる——その光影は揺らめき、まるで水越しに覗くかのようだ。
「愛しい娘よ」
オーガスタスの声が遠くの距離を越えて届く。モーリガンが一度も聞いたことのない疲れを帯びて。
「もう少しで、何かが分かり始める頃だろう?」
「ええ、父さん」
モーリガンは自分と同じ形のその目をまっすぐ見つめる。
「予言の子は、私が想像していたような存在じゃないと分かりました」
「よろしい」
オーガスタスの虚ろな姿が微かにうなずく。
「では、次はサンタリアへ行くのか?」
「はい」
モーリガンは隠さなかった。
「なぜ彼らがオーケアノスの人魚たちと同盟を結んだのか、確かめに行きます」
「だがそれは、本来お前が関わるべきことではないだろう?」
父の言葉が、焼きを入れた針のように正確に突き刺さる。
モーリガンは一瞬間、沈黙した。
「でも父さん、もし戦争が起これば、私の巡礼も中止になるんじゃない?」
「いいや」
オーガスタスは首を振った。
「中止にはしない。むしろ、戦争を起こさせることこそ——予言に記された必然なのだ」
モーリガンの眉が微かに寄る。
「つまり、予言とは一体何なんです?なぜ父さんはいつも詳細を教えてくれないの?」
「お前が全てを知ってしまったら、巡礼に何の意味もなくなる」
オーガスタスの虚ろな姿が巻物の上で微かに揺れる。まるで風前の灯のように。
「お前は何も学べない」
「でも私は戦争を止めに行くなんて言ってない」
モーリガンの声は依然として平穏だ。深い淵の水のように。
「人魚たちの態度を見れば分かります。あれほど穏やかだった彼らが、もう異論を受け付けないんです。この衝突は積年の怨恨が溜まったもの。私にどうこうできる問題じゃない」
「愛しい娘よ」
オーガスタスの視線が巻物越しに彼女の顔に注がれる。その目にはモーリガンには読み取れない何かがあった——心配のようにも、もっと深い、言葉にできない期待のようにも。
「行きたいなら、もちろん止めはしない。だが私は警告に来たのだ——この地域から、可能な限り速やかに離れよ」
モーリガンはじっと彼を見つめ、突然口を開いた。
「待ってください、父さん。もう一つ——あのヴィラニアという……」
言い終わらぬうち、巻物が突然一瞬、震えた。
父の虚ろな姿は、彼女がその名を口にしようとした瞬間、煙のように消え失せた。
ただ空っぽの羊皮紙だけが、彼女の掌に舞い戻った。
モーリガンはその紙を握りしめる。指の関節が微かに白くなる。
ヴィラニア……その名前には一体何が隠されている?父が聞くことさえ拒むほどの何かが?
彼女はウェンティスの地下で、管に貫かれた巨人族を思い出し、あの場所を離れるために支払った自分の眼を思い出す——あの元々フィトゥーラのものだった眼が、今は自分の眼窩に嵌まっている。
あの数字はまだ視野の端で静かに跳ねている。まるで無言の警告のように。
父が口にしたがらないということは、まだ時期ではないのだろう。
だが彼女は考えずにいられなかった。フィトゥーラは今どうしている?あの管はまだ稼働しているのか?ヴィラニアは……あの取り替えられた眼で、何をしているのか?
「どうやらオーガスタス様は、相変わらず口が硬いご様子ですね」
アマラートの声が背後から聞こえる。からかいの色と——そしてモーリガンにははっきり聞き取れない、どこか安堵にも似た響きを帯びて。
モーリガンは巻物を懷に仕舞い、何も答えなかった。
彼女は顔を上げ、遠くの空に残る火の光を見つめる——それはアイセロンの方角で、武器庫の爆発後の燃えさかりがまだ空を不吉な橙色に染めている。
「急いで行こう」彼女は言った。「スタシスの方は、どうも上手くいっていない気がする。さっきの火の光、どうか戦争の火蓋が切って落とされた前兆でありませんように」
彼女は馬車を呼び寄せようとした。
しかしその時、肩のケーリスが突然動いた。
あの新しく生えた、長い影の尾びれが、無意識にモーリガンの身に着けた新しいマントをそっと擦っている——あの深海の裂け目から持ち帰った、由来の知れないマントを。
一度。二度。
まるで本能的な試みのように、また古い儀式のように。
そして三度目——
ケーリスの身体が突然震えた。
モーリガンがうつむくと、あの影のような生き物が、一瞬のうちにマントと一体化していた。
「ケーリス?」
言い終わらぬうちに、異変が始まった。
マントの表面が流れ始める——布地にあるはずの感触ではない。まるで何か生き物が目覚めつつあるかのようだ。
それはモーリガンの肩の線に沿って広がり、絡みつき、染み込む。水が砂地に染み込むように、光が闇に溶け込むように、記憶が夢に潜り込むように。
モーリガンはうつむいて自分の身体を見た。
服が変わっている。
いや、彼女自身が変わっている。
皮膚の下に仄暗い流光が走り、指先が伸びて半透明になる。胸の位置に、何かがゆっくりと形を成しつつある——
それはケーリスの星の渦だ。
それが彼女の胸の奥深くで輝き始め、ゆっくりと回転している。まるで開きつつある一つの眼のように、鼓動し始めた一つの心臓のように。
「何が起きてる?」
彼女の声は自分のものだが、何か反響を帯びている——極深い水底から聞こえるように、極遠くの星空から降り注ぐように。
「始まりましたね、御身」
アマラートの声が遠くから聞こえる。ある種の狂喜にも似た震えを帯びて——それは信者がついに神跡を目の当たりにした時の震えだ。
「このマントが……起動したんです」
モーリガンの意識が揺らぎ始める。
彼女はかつてない空腹を覚える——胃の空虚ではなく、もっと深い、血の奥深くに根を下ろした渇望だ。
それはケーリスの孤独への渇望が、彼女の体内で目覚め、彼女の骨の髄に根を下ろしているのだ。
そして彼女は呼吸音を聞いた。
自分のものではない。
古代の、重い、まるで時間の果てから響いてくる呼吸。
——自分自身から。
彼女はうつむいて両手を見た。
それはもう彼女の手ではなかった。
ケーリスの形だ。
影のように流動する躯、半透明の縁、胸の中で回転する星の渦……
全てが告げている。今この瞬間、彼女は別の者になりつつある。全ての者になりつつある。
「ケーリス?オネイリ?」
彼女は呼びかけてみる。
応えるのは、意識の奥深くから響く、細かな反響だけだ。
それは苦痛だ。
多くの者の苦痛。
多くの色の苦痛。
「ああ——!」
最初の悲鳴が彼女の脳裏に突き刺さる。
それはカリオペの声だ——しかしあの誇り高き竜の裔ではなく、若く、無力な少女の声。砕けたガラスのように鋭く。
「痛い、痛いよ——もう叩かないで!僕、もう……君たちの食べ物を盗んだりしない!」
モーリガンは見た。
若いカリオペが、竜の裔の殿堂の片隅に縮こまり、同年代の子供たちに囲まれ、殴られ、蹴られ、唾を吐きかけられる姿を。
彼女の頭の異様な角は生えたばかりで、醜く、目を刺す。まるで永遠に消えない烙印のように、一生逃れられない呪いのように。
それは彼女が最も忘れたい過去だ。
しかし今、無理やり目の前に引き戻される。血まみれで、細部まではっきりと。
「母さん……離れないで……私を忘れないで……」
二つ目の声が響く。
ヘマリスだ。
その声はもう温和ではない。荒野に置き去りにされた子供のように、嗄れ、砕け、絶望している。
「彼らは何度も何度も私を責め、孤立させた……あなたも、私に背中だけを見せるのですか?」
モーリガンは灰色の湖を見た。湖辺の少女を見た。母が背を向けて去っていく姿を見た——あのヘマリスがもう受け入れたと思っていたのに、記憶がそのまま保存している光景が、一本の錆びた釘のように、彼女の魂の最も深い場所に打ち込まれている。
彼女はもう自分が愛されていることを忘れている。
この世界に自分を忘れない者がいることを忘れている。
今の彼女はただ、あの湖辺に置き去りにされた、孤独な子供だ。
「いや——!もう海に行かせないで!やめて!」
三つ目。
オネイリだ。
永遠に夢の中に生きる銀羊が、今まさに自分自身の悪夢に呑み込まれている。
「深海の化け物!来ないで!」
彼女こそが悪夢の主のはずなのに、今は悪夢の囚われの身だ。
モーリガンは胸の中の星の渦がますます速く回転するのを感じる。
それらの苦痛が潮のように押し寄せる。一波また一波と、ほとんど彼女を溺れさせんばかりに。
そして彼女は四つ目の声を聞いた。
その声は嗄れ、乾き、紙やすりが粗い石の面を擦るようだ——
「……もう……食べさせないで……」
ケーリスだ。
永遠に孤独を糧としてきた影の生き物が、今、彼女の体内で悲鳴を上げている。
「苦すぎる……飲み込めない……」
彼女の苦痛は過去から来るのではない。今この瞬間から来ている——自分に属さない感情を無理やり流し込まれ、消化しきれない孤独を詰め込まれているのだ。
そしてこの苦痛の海の底から、もう一つの声が聞こえる。
アマラートの胸腔から響いてくる。
「ハハハハ——ハハ——!」
ルドスだ。
あの木質の心臓が狂笑している。
喜びのためではない。
アマラートの口腔内側の黒い膜が激しく灼けているからだ——痛みの一拍ごとに、まるで燃料が炎に注がれるように、ルドスの笑いはさらに狂気を帯び、さらに大きく響く。
その笑い声は皆の悲鳴に混ざり、一曲の不条理な挽歌のように、一つの狂騒の伴奏のように。
「アマラート!」
モーリガンは力の限り叫んだ。
「どうすればマントを止められる?!」
「御身——」
アマラートの声が遠くから聞こえる。息を切らし、笑みを帯び、あの永遠に苦痛に打ち砕かれない狂熱を帯びて。
「マントは御身の意思そのものです。私にはどうしようもありません」
私の意思?
モーリガンは呆けた。
私は彼女たちをこんな風に苦しめようだなんて思ってなかった……
「見てください、御身!御身の泡がすっかり変わってるのに気づきませんか?」
アマラートの声に興奮が混じる。
「くっ……口の中の泡も我慢できなくなってます!」
モーリガンはうつむく。
彼女の周囲で、見慣れた黒い泡が渦巻いている——しかしもはや単なる黒ではない。
一つ一つの泡の内部に、異なる光が煌めいている。カリオペの暗金色、ヘマリスの浅い灰色、オネイリの銀白色、ケーリスの幽かな藍色……
それらは苦痛の中から生まれている。
共鳴の中で形を成している。
私の意思……
モーリガンは目を閉じた。
私には何の意思もない。
いや、やめろ。
彼女は突然目を見開いた。
サンタリアへ行こう。
馬車は使いたくない。
あれは父の目だから。
思いが落ちた瞬間、身体が動いた。
影が足元から湧き上がり、彼女の全身を包み込む。
ケーリスの形、ケーリスの能力、ケーリスの空間への感覚——すべてが彼女の意識に流れ込む。まるで元から彼女の一部だったかのように。
彼女は移動を始める。
走るのではない。流れるのだ。
影の間を縫い、岩礁の上を掠め、一度の瞬間移動ごとに前よりも遠く、より正確に。
よろめき。揺れながら。
しかし彼女は前へ進む。
ますます速く。
「御身——待ってくださいよ——」
背後で、アマラートの影が空へ舞い上がる。
彼女の翼が夜空に広がり、口元が吊り上がり、舌の上の眼球が興奮して回る。
口腔内側の黒い膜はまだ灼けている。痛みの一拍ごとに、胸腔のルドスの笑い声がさらに大きく、さらに狂気を帯びる。
彼女はあの流れる影を追い、夜の闇の奥深くへと突き進んだ。
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モーリガンがサンタリアの城門前で止まった時、影は潮のように退いていった。
彼女は元の姿に戻った。
角が戻った。硬直した左腕が戻った。心臓の形のネックレスはまだ胸元に静かに垂れている。
「皆……」
彼女はうつむいてネックレスを見、髪の間を見、元に戻った自分の両手を見た。
「大丈夫?」
応えはない。
彼女は一瞬間、呆け、もう一度呼びかけようとした——
「何だ、その言い草は?」
カリオペの声がネックレスから聞こえる。いつもの軽快さを帯びて。
「ところで、私たちはどうやってここまで来たんだ?」
モーリガンは呆けた。
「違う……さっきまで……」彼女の声に一抹の躊躇いが混じる。「何も感じなかったの?」
「馬車で来たんですよ」
アマラートが背後から着地し、翼を畳んで彼女の脇に立つ。
「皆さん、疲れて寝ちゃいました」
その口調は自然そのものだ。何の変哲もない事実を述べるかのように。
「もう勘弁してくれよ、モーリガン」
オネイリの声が髪の間から聞こえる。寝起きのぼんやりとした響きで。
「もう少し広げてくれないか?僕の目の前はまだ海しか見えないんだが……」
彼女は一瞬間を置き、また呟いた。
「でもさっき、変な夢を見たんだ……何かが呼んでるような……でも起きたら忘れちゃった」
モーリガンの睫毛が微かに震えた。
夢?
彼女はうつむき、髪の間の銀灰色の角を確かめる。確かに、以前より少し大きくなっている。
「も、もちろん」彼女は軽く応えた。
角が微かに震える。まるで応えるかのように。
でもさっきまで私は……
「あなたも寝てましたよ、御身」
アマラートの声が耳元に囁く。低く、笑みを帯びて。
「それ、絶対夢ですよ」
モーリガンは彼女を見た。
アマラートの目はきらきらと輝き、嘘をついている跡は一切ない。
「そうですよ、御身」彼女は付け加えた。「だってここに子羊がいるんですから」
モーリガンは一瞬間、沈黙した。
彼女はうつむいて自分の両手を見る——さっきまで影を流していたその手を。
今はただの、普通の、青白い手だ。
夢だったのか?
彼女はオネイリのぼんやりとした言葉を思い出す——「何かが呼んでるような」。もし夢なら、なぜオネイリも似たようなものを見るのだ?
しかし彼女はそれ以上、問い詰めなかった。
あることは、まだ知る時ではないのかもしれない。
ヘマリスも何も言わなかった。
彼女はただ、あの霧を纏う雨滴を、そっとカリオペの竜晶に近づけた——本能的に、無意識に、自分の居場所の近くにいたくて。
モーリガンはそのすべてを目に収めた。
そして彼女は顔を上げ、前方を見た。
サンタリアの城門がそびえ立っている。
木製ではない。石造りでもない。無数の歯車が精密に噛み合ってできた巨大構造物だ。
一つ一つの歯車がゆっくりと回転し、低く、規則正しい唸りを発している。まるで呼吸する金属の巨獣のように。
城門前の地面には、一本の黄色い線が引かれている。
モーリガンは足を上げ、その線を踏んだ。
一筋の光が城門の上から降り注ぎ、彼女の全身を撫でる。
続いて、機械的な声が響いた:
「いらっしゃいませ、尊いお客様。サンタリアの夜の街は全ての訪問者を歓迎します——ただしエルフと犬は除きます」
その言葉と共に、あの歯車で構成された巨大な門がゆっくりと上がり始める。
歯車が回り、噛み合い、分離し、再び噛み合う——まるで精密に組み上げられた機械のバレエのように。
モーリガンは敷居をまたいだ。
彼女が街の中に足を踏み入れた瞬間、手首が微かに締め付けられた。
うつむくと、いつの間にか茶色い腕輪が彼女の手首に嵌まっている。
その表面に一筋の白光が走る。
いくつかの文字が浮かび上がる:
「モーリガン・ウィセラ——人間」
背後で、歯車の巨大な門がゆっくりと閉じ、夜の闇を外に閉ざす。
そして前方では、サンタリアの灯りが銀河のように広がり、彼女の足を待っている。
このマント、実はモーリガンの成長を促すためのものなんです。彼女に、完全な姿になった時の自分の恐ろしさを、今ここで体験させているんですよ。
ただ、本来なら今このタイミングで反応が出るはずはないんです。だって、“神の欠片”はまだ全部揃っていませんからね。
では、なぜこんなことが起きているのか――これはちょっと、私から皆さんへの“お楽しみ”にさせてください。




