第五十五章
作戦会議用の天幕に入ると、スタシスとアイウェシルは短い沈黙を迎えた。
スタシスの視線は壁板にびっしりと書き込まれた×印の数々に留まっていた——そのひとつひとつが、突破に失敗した記録だ。
アイウェシルはもう、あまりに多くの回数を試みてきたのだ。
「Quel undu i·, eth?(もうありとあらゆる戦術は試したの?)」
「Ú·. I loxe·, eth·, eth·——(ええ。あの蒸気機関の連中は、まるで読心術でも使えるみたいにね。たとえ人魚を騙せても、必ずあいつらに阻まれる)」
「I loxe·, eth·. I·, eth·.(蒸気機関の連中は何せ科学技術が発達している。もしかすると、既に種族を識別して正確にエルフを見分けられる機器を持っているのかもしれない)」
「Ú·, eth·?(じゃあ、どうしようもないってこと?)」
「Ú·, muinthel. Cáno i·, Calathor eth·? I·, eth·——(諦めないで、妹よ。カルロスがどう教えたか覚えている?——闇エルフはいつだって奸計を成功させる術を心得ているものだ)」
アイウェシルの指が卓の縁で微かに強張った。
「I·, eth·? Muinthel.(あなたはやっぱり、彼を父と呼ぶのを拒むのね。姉さん)」
「Ú·. I·, eth·.(永遠に無理だわ。今はそれを話す時じゃない)」
「I·, eth·, eth·——(でも彼はいつだってあなたを私より大切に思ってた……もういいわ、もう一つだけ聞きたいことがあるの、姉さん)」
彼女は一瞬間を置き、視線をスタシスの空っぽの左袖に落とした。
「I·, eth·?(どうぞ)」
「I·, eth·?(その腕はどうしたの?)」
「I·, eth·. I·, eth·.(ある友達にあげただけよ。彼女への返しとしてね)」
スタシスはそう言いながら、無意識に右手を上げて、そっと左肩の断端を撫でた。
そこはとっくに癒えている。しかし彼女は知っていた。どこか遠くで、その腕が別の誰かの呼吸に合わせて微かに上下していることを。
モーリガン、あなたは今……何を感じている?
「I·, eth·? I·, eth·?(でもそれじゃあ、あなたはもう完璧じゃないわよね?どうしてそんなに変われたの?)」
「I·, muinthel. I·, eth·, eth·——(それは二つ目の質問よ、妹。言ったでしょう、私の変化は、私が元々そうだったから——おそらく今の私こそが、私が本当に好きな私なの)」
「I·?(好き?)」
「Nán. I·, eth·. I·, eth·, eth·, eth·——(ええ。私は私自身を愛しているの。意外でしょう?どうやら私は最初から完璧じゃなかったのに、それに気づかず、そんなに偏執的になって、あなたや母さんまで傷つけて——ほんとに悪い奴よね?)」
アイウェシルはすぐには答えなかった。
彼女はただスタシスを見つめていた。その目には、言葉にできない何かがあった——嘲笑でもなく、憐れみでもなく、もっと深い、ずっと前から存在していた諦観のようなもの。
「I·, muinthel……eth·, eth·.(実は姉さん……私は意外に思ってなんかいないわ)」
スタシスは微かに呆けた。
「I·, eth·?(どうして?)」
アイウェシルはうつむき、口元に極淡い弧を描いた——その笑みに苦みはない。
「I·, eth·, eth·. I·, eth·, eth·——(その顔、その輪郭、鏡の前に置かれたら、誰が目を離せるっていうの?)」
彼女は一瞬間を置いた。
「I·, eth·, eth·. I·, eth·, eth·.(私だって、時々あなたを見て思うもの——こんな風に生まれられたら、どんなに良かっただろうって)」
スタシスの睫毛が微かに震えた。
「I·, eth·?(あなた……)」
「I·, eth·, muinthel. I·, eth·.(おかしくないわ、姉さん。誰だって完璧なものには惹かれるものよ)」
彼女は顔を上げた。スタシスと寸分違わぬその瞳に、天幕の中で揺れる燭台の火が映っている。
「I·, eth·, eth·——(ただ、あなたがそれに気づくのにこんなに時間がかかったってこと。それだけが、私には意外だった)」
スタシスは長く沈黙した。
そして、彼女はそっと笑った——嘲笑ではなく、ある種の諦念にも似た、自分自身さえ陌生な笑い方で。
「I·, eth·, muinthel.(あなたの言う通りね、妹よ)」
アイウェシルは何も言わなかった。
彼女はただ姉を見つめていた——あの完璧な、しかし今はある種の本物の温もりを宿した顔を——口元に極淡い弧を描いて。
その弧は束の間、暮れゆく空を一瞬だけ過る蛍のように。
そして彼女はうつむき、自分だけが理解できるその感情を、目の奥深くにしまい込んだ。
「I·, eth·, muinthel. I·, eth·?(それはさておき、姉さん。私には確かに一つ方法があるの。聞いてみたい?)」
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スタシスは少し身を乗り出した。
アイウェシルの方法は確かに名案だった——しかし彼女一人では、決して成し遂げられない。
なぜならその計画には“餌”が必要だからだ。
十分に目立ち、十分に注目を集め、十分に全員が他の方向を一時的に忘れさせるだけの餌が。
そしてスタシスは、かつてこの街で最も完璧なエルフだった。
たとえ片腕を失っても、彼女がそこに立っていれば、それだけで人魚や蒸気機関兵たちの視線は否応なく引き寄せられる——恐怖ではなく、そのあまりに眩しい、この荒廃した瞬間にはそぐわない“完璧”ゆえに。
完璧ではない。それでもなお、焦点となり得る。
これは、別の意味での“完璧”と言えるのだろうか?
「I·, muinthel. I·, eth·.(試してみて、妹。私はあなたを支える)」
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スタシスは城壁に上った。
暮色が彼女の輪郭を蒼白い影絵のように描き出し、空っぽの左袖が風に音を立ててはためく。
城下では、人魚と蒸気兵の陣営が同時に騒めき始めた。
「あれは誰だ?」人魚が一人、顔を上げ、その影に視線を釘付けにされた。「あんなエルフ……見たことがない」
「誰だろうと構うな!」隣の人魚の兵士が弓を掲げる。「あの城壁に立っている限り、敵だ!」
「お前は族長じゃない!」人魚の兵士が弓を構えて怒鳴る。「我々は交渉は一切受け付けないと言ったはずだ!」
スタシスは取り合わなかった。
彼女はただ胸壁の上に立ち、それらの視線が潮のように押し寄せるのに身を任せていた。
なるほど、見つめられるという感覚も……こういうものなのか。
評価されるためでも、占有されるためでもない。
ただ——別の誰かが、逃げられるように。
これこそが、彼女の望んだものだ。
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その時、アイセロンの城門が猛然と開かれた。
アエルダが白い稲妻のように門の隙間から飛び出し、その後ろには藁を満載した荷車を引きずっている。
藁は高く積まれ、荷車の中の視界はほとんど遮られていた。
「またこの手か?」人魚の兵士が最初に反応した。「また藁の中に隠れて逃げようってのか!」
彼は瞬時に矢尻に火を点け、弓の弦を引き絞った——
火矢が橙色の尾を引いて藁の山へと飛んでいく。
ほぼ同時に、蒸気兵のスキャナが赤く点灯した。
しかし彼らがスキャンしていたのは藁の山ではない。
城壁の上のスタシスだ。
「待て——」蒸気部隊長の声が上ずった。「これはエルフの奸計だ!あの荷車にはエルフなんて乗っていない!あの騎手は——」
アエルダの背に乗ったぼんやりとした影は、蒸気兵のスキャナにこう表示されていた。「生命兆候なし」。
それはスタシスの能力で作り出した幻影だった。
目は騙せても、機械は騙せない餌。
だが今回は、機械を騙す必要などない。
必要なのはただ、人魚に信じさせること——藁の山の中にエルフが潜んでいると。
そして人魚は、まんまと騙された。
火矢が藁の山に突き刺さった瞬間、炎が「轟」と立ち上った。
アエルダが鋭く嘶いた——計略が成功した喜悦なのか、背後で炸裂した炎に本能が驚いたのか。
しかしそれは逃げなかった。
それは猛然と向きを変えた。
蒸気兵の武器庫めがけて、全速力で駆け出した。
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スタシスは城壁に立ち、燃え盛る炎が暮色の中に一筋の眩い軌跡を描くのを見つめていた。
アイウェシルは本当にやってのけた。
全ての視線を彼女に釘付けにし、この束の間の混乱に乗じて、アエルダに本当に封鎖を打ち破れる標的へと突進させたのだ。
「I·, eth·.(やはりな)」
彼女は静かに言い、口元に極淡い弧を描いた。
それは誇りだった。
彼女が長年不在だったこの妹が、今、彼女たちが共に育てたアエルダの背に跨り、彼女自身でさえ敢えて挑むかどうか迷うような危地に突き進んでいることへの。
アエルダの走る軌跡は直線ではなかった。
それは左右に切り返し、陣営の間を縫うように駆け抜け、角を曲がるたびに正確に蒸気兵が設置した障害を避けていく。
スタシスにはその理由が分かった。
——アイウェシルとアエルダの間には、彼女が去った年月の間に築かれた息の合った連携があるのだ。
そして彼女は、そこにいない。
彼女はただ見ているしかない。
アエルダが燃える荷車を引きずって武器庫へ突進するのを。
蒸気兵たちが慌てふためいて武器を構えるが、発砲できないのを——なぜならその炎はあまりに近く、どんな反撃も彼ら自身の兵器を誘爆させかねないからだ。
アエルダが最後の瞬間、猛然と荷車の拘束を振り切り、後ろ蹄を宙に蹴り上げ——
燃える荷車ごと、武器庫の門に蹴り込んだのを。
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轟——!!!
爆発の轟音が城壁を震わせた。
橙色の火球が空に舞い上がり、空の半分を照らし出した。
全ての者が地に伏せた——人魚も、蒸気兵も、城壁の上のスタシスでさえも本能的に身をかがめ、右腕で頭を庇い、身体を極力低くした。
石礫や鉄片が雨のように降り注ぐ。
硝煙が立ち込める。
スタシスが再び顔を上げた時、彼女は見た——
混乱の中、一筋の白い影が煙の中から飛び出してくるのを。
アエルダだ。
その背には、アイウェシルが跨っている。
彼女はいつの間にか影の中からその背に飛び乗り、今は身を低く伏せ、一方の手で手綱を握り、もう一方の手で懐の救援要請書を護っている。
封鎖線は爆発で引き裂かれ、一つの突破口が開いた。
人魚は消火に、蒸気兵は兵器の救出に忙殺され、誰も一瞬走る白い影に構っている暇はない。
アエルダは四肢を宙に躍らせ、包囲を突破した。
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スタシスは立ち上がり、暮色の彼方に消えゆく背中を見つめた。
「アエルダに武器庫に突っ込ませるのも、あなたが私に言わなかった作戦のうちなの?アイウェシル」
彼女は静かに言った。
「やっぱり、あなたは相変わらず——」
言い終わらぬうちに、彼女の視界の端が一つの細部を捉えた。
人魚が火薬樽を保管していた場所——アイウェシルが戦術板で彼女に指し示した場所——は依然として無傷で、爆発の影響など全く受けていない。
そしてアエルダが最後に曲がったあの角度……
あそこに、何かが一瞬、閃いた。
白い、一瞬の、電流のような、あるいは錯覚のようなもの。
スタシスの指が胸壁の上で微かに強張った。
あの電流……
彼女は見覚えがある。
ずっとずっと昔に。
あの頃、彼女はまだ幼く、母の後ろに隠れて、指の隙間からこっそりと外の大人たちを覗くことしかできなかった。
あの日の会議室には、エルフの将軍たちが各地から集まっていた。
父は長机の端に立ち、「団結」「一つの国家になる」といった言葉を話していた。
彼女には理解できなかったが、父の目の輝きは覚えていた——あんな光は滅多に現れず、大切なことを話す時だけ輝くものだった。
カルロスは父のすぐ脇に立っていた。父が最も信頼する将軍だ。
そして、あの白光が現れた。
髪の毛のように細く、瞬時に消えた。
彼女は自分が本当に見たのかどうかさえ、確信が持てなかった。
しかし、その後のことは覚えている。
カルロスは剣を抜いた。
父が倒れた時、その目はまだ開いていた。本来なら団結するはずだったエルフたちが、四方に散って逃げていく方角を見つめながら。
母は彼女の目を覆った。
しかし彼女は指の隙間から見てしまった。
あの白光が、また一瞬、閃いたのを。
後になって彼女は知った。あの日から、すべてが変わったのだと。
エルフたちは一つの国家にはならなかった。
彼らは四散し、各地に散らばり、互いに猜疑し合った。
そして彼女のいるこの都市国家は、いつからか、評判が日増しに悪くなっていった。
元々のエルフはあんなではなかった。
彼女は母から聞いたことがある。ずっと昔、彼らは隣人たちと水火不容の関係ではなかったのだと。
交易も、交流も、通婚さえも、かつては存在した。
しかし後になって、すべてが変わった。
元々存在しなかった嗜好——人魚を狩り、魚の鰭を奪うこと——が、次第に同族たちの暗黙の了解の“伝統”になっていった。
誰も理由を問わず、誰もいつから始まったのか覚えていない。
まるで元々そうであるべきだったかのように。
彼女はあの白光のことを、誰にも話したことがない。
母にさえ、一度だけ尋ねたきりだ。
母は長く沈黙し、ただ一言だけ言った。「あることは、考えない方がいい」。
しかし今——
あの白光が、再び現れた。
妹が突破に成功したその瞬間に。
武器庫が爆発した混乱の中に。
彼女がようやく全てが好転し始めたと思ったその時に。
スタシスは城壁から飛び降りた。
着地の衝撃を膝でそっと吸収する。
彼女はあの白光が現れた場所へ歩いていった。
そこには何もない。
ただ空気中に残留する、極めて淡い、背筋の凍るような気配だけが。
スタシスはしゃがみ込み、右手を伸ばし、指先でそっとその土地に触れた。
何もない。
しかし彼女が手を引こうとした瞬間——
一陣の激しい、陌生の痛みが猛然と彼女の脳裏に走った。
肉体的な痛みではない。
もっと深い場所。
何かが、彼女の意識の奥深くでそっと弾き、そして素早く引き離したかのような。
彼女は慌てて手を引き、指先が微かに震えた。
同時に、数里離れた海の上で——
モーリガンの左目が突然激しく脈動した。
彼女は眼窩を押さえ、指の隙間から、かつて見たことのない文字化けの列を見た。
それは無数の「???」が積み重なった情報の奔流で、まるで二つの全く異なる監視システムが同時に起動され、互いに干渉し、消滅し合っているかのようだ。
「モーリガン?」アマラートの声が聞こえる。
「……何でもない」
彼女は手を下ろした。文字化けはもう消えている。
しかし掌に滲んだ冷や汗が彼女に告げている——何かが、彼女のもう一方の腕に触れていると。
あの、スタシスのものである腕に。
---
アイセロンの城下に戻る。
スタシスはゆっくりと立ち上がり、暮色の彼方を見つめた。
この感覚……
彼女は覚えている。
父が倒れたあの夜、あのエルフたちの狂気の目の中に、彼女は同じものを見た——
それは怒りではない。
憎しみでもない。
それは、誰かに弄ばれた後の茫然自失。
自分が固く信じていた全てが、ただ誰かがそっと指を動かしただけの結果だと気づいた時の。
そしてさっきの一瞬、彼女があの白光の中で感知したのは、茫然だけではなかった。
もっと見覚えのある、背筋を凍らせる何か——
監視。
まるで一つの目が、あの白光を通して、静かにこの全てを見つめているかのような。
あの悪夢から這い出てきたもの。
あの、彼女がずっと名前を呼べずに、しかし絶えず彼女に纏わりつく存在。
「……あなたね」
彼女の声はとても低く、自分だけにしか聞こえない。
「あなたはやっぱり……戻ってきたのね」
彼女は顔を上げ、暮色の彼方を見つめた。
そこには何もない。
ただ燃え盛る武器庫がなお炎を吐き出し、空を不吉な橙色に染め上げているだけだ。
---
暮色が次第に濃くなる。
アイウェシルとアエルダの姿は、既に完全に地平線の彼方に消えていた。
封鎖線の外では、人魚と蒸気兵がまだ慌ただしく消火作業に追われている。
スタシスは独り城下に立ち、あの白光が消えた方角を見つめていた。
左腕の断端が微かに疼く——傷口が痛むのではない。もう彼女のものではないその腕が、遠くで何かを感知しているのだ。
モーリガン、あなたも見えた?
あの目が。
夜風が吹き抜け、爆発後の焦げ臭さを運んでくる。
彼女は長く立っていた。
長く、炎の光が次第に暗くなり、遠くの怒号がぼんやりとなり、夜風が冷たさを帯び始めるまで。
そして彼女は背を向け、城壁へと歩いていった。
背後には、燃え残った炎だけが暮色の中で明滅している。
そしてその炎の奥深くに、何かが、まだ静かに見つめているかのように。




