第四十六章
ヘマリスはカリオペに手を引かれ、次第に小降りになる雨の中を走っていた。
紅色の雨の糸は、ただ彼女たちのためだけに降っているかのようだ。カリオペの歩む軌跡に沿って曲がりくねり、私的な帷を形作り、外界をぼんやりとした背景に変えてしまう。
「どこに連れて行く気?」
ヘマリスの声は雨音に洗われてかすかだ。だが足は、抗えずについて行く。
「君に、俺を信じられるようになる場所へ」
カリオペは振り返らない。声は雨の幕を透かして届き、普段よりも幾分か落ち着いている。
「自分の感情が信じられなくてもいい——でも、俺の感情は信じていい」
前方に見慣れた輪郭が次第に鮮明になる。
飛竜門。
あの孤高にそびえる石造りの門が、雨の幕の中に静かに立っている。門の上の風化した翼の紋様は古雅で荘厳だ。
ヘマリスの足が微かに止まる。
——ここって、思い詰めた人が来る場所じゃなかったっけ?
……そうだな。今の自分もまさに、「思い詰めた」一人か。
カリオペは既に彼女を促し、脇の金属製の籠型昇降機へと向かっている。昇降機は狭く、錆び跡が目立ち、ちょうど二人が肩を並べられる広さだ。
扉が閉まった瞬間、空間は圧縮され、湿り気を帯びた私的な領域と化す。
ヘマリスは自分の頬が抗えず熱を持つを感じた——彼女の視線は、カリオペの首筋に落ちていたのだ。
竜の裔の長く伸びた首の線が襟元へと消え、雨水が鱗の隙間を伝って滑り落ち、薄明かりの中に暗金色の微かな輝きを放っている。
彼女は、うっとりと見入ってしまっていた。
「すぐに、一番いい跳躍ポイントに着く」
カリオペが突然振り返った。
その異なる色の瞳が、狭い空間の中で驚くほど輝いている。左目の心の川の烙印の光暈が呼吸に合わせて明滅し、深い水底の光の輪のようだ。
ヘマリスは慌てて視線を逸らす。
「で、でも……なぜここなの?」
「前に、飛竜門について話したのは、全部じゃなかったんだ」
カリオペは顔を上げて上方を見やる。その声には、どこか懐かしさに近い遠い響きが混じる。
「ここはただ竜族の勇気と血脈の試練の場じゃない。もっと残酷な、信任を試す場でもある」
「信任?」
「古の竜族の成人の儀では、もし竜が飛び降りる瞬間に、まだ淡い期待を抱いている——親が自分を受け止めてくれる、仲間が手を差し伸べてくれる、と思っている——そんな竜は、最も純真で、そして最も致命的な過ちを犯していることになる」
カリオペは軽く笑う。しかしその笑みに温もりはない。
「救う竜なんていない。飛べなければ、失敗作の雑種だ。たとえ死ななくても、生きる資格はない。成人した同類が、その竜を食い尽くす……これが竜族の掟だ。冷徹で、直接で、一切の妥協がない」
ヘマリスの指先が冷たくなる。
「じゃあ、なおさら来るべきじゃなかった。私は竜じゃない」
「でも、落ちる瞬間は、人を覚醒させる」
カリオペは体を横に向ける。竜の裔の大柄な体躯が、昇降機の中に圧迫感のある影を落とす。
彼女は近づき、吐息がヘマリスの耳元を掠める。
「感情の邪魔も、疑念の纏わりつきもない——あの瞬間、君はどんな時よりもはっきりと、自分が本当に欲しいものが分かる」
彼女の声は低くなり、ほとんど誘うように。
「それに君は信じるだろう——必ず、俺が君が落ちる前に受け止めると。一番柔らかな羽毛が下に敷かれていても、君に衝撃の痛みを少しでも味わわせるのは惜しいからな」
「でも、私が飛び降りる理由はない」
「なら、一緒に飛ぼう」
カリオペの視線が柔らかくなる。その裡に渦巻くのは、ヘマリスには読めない、ほとんど懇願に近い期待だ。
「竜の裔として、俺はまだ、この門を本当に飛び越えたことはないんだ」
---
昇降機が止まる。
扉が開いた瞬間、高所からの風が雨水を巻き込んで吹きつけ、凛冽さにヘマリスは身震いした。
彼女たちは飛竜門の頂上、狭い台座の縁に立っている。
足元は数百メートルの高空。テミステラの街全体が雨の幕の中に広がり、ぼんやりとした、流動する色の塊と化している。
行き交う人や車は蟻の群れのように小さく、音もなく遥か遠くの地面を動いている。
ヘマリスは目眩を覚えた。無意識に後退すると、かかとが台座の縁に当たる——
一つの手が、しっかりと彼女の腰を支えた。
「寒いか?」
カリオペの声が間近に聞こえる。竜の裔の体温が湿った衣服越しに伝わり、高くて灼けるようだ。
「俺の吐息は氷のように冷たいが、躯の熱は……いつも四十五度以上ある。もっと抱きしめようか?」
「いい」
ヘマリスは身を捩ったが、声に覇気はない。
カリオペは無理強いせず、ただ彼女の手をさらに強く握った。
「飛ぶ前に、二つ、伝えたいことがある」
ヘマリスは足元の、すべてを呑み込む虚空を見つめる。心臓は胸腔の中で固く縮こまり、その一拍ごとに重く、墜ちる石のようで、鼓膜が鳴る。
「……言って」
「一つ目は」カリオペの声が風に乗って届く。「君は俺をどう思う?竜の裔が血統と階級を極端に重んじるのは知ってるだろ?」
「……知ってる」ヘマリスはかすかに答えた。「あなたは……血統がとても純粋に見える」
「はっ」
カリオペは短く笑った。その笑い声には、複雑な自嘲が混じる。
「竜族を知らない奴は皆そう言う。でも実際は、俺の地位は哀れなほど低い——この角を見てみろ」
彼女は手を上げて、自分のこめかみの辺りのごつごつと曲がった尖った角に触れた。
「これは掟に背いた竜の裔が、低劣な異種族と交わった末に生まれる『雑種』の印だ。純血の竜の裔は、こんなものは生やさない」
ヘマリスは言葉を失った。
「でもあなたは、この街の『女神』……」
「それは、この烙印のおかげだ」
カリオペの指先が、左頰で脈動する心の川を撫でる。光の暈が流れ、彼女の半身の顔を、まるで幽かな藍色の星の海に浸したように映す。
「それが俺を選び、そして閉じ込めた。そして、それが蝕む跡は……君が消えてから、日増しに深くなっている」
「私が……消えた?」
「君は記憶を読める。だが竜の裔の骨の髄までの傲慢さは、俺自身でさえ完全には制御できない」
カリオペは顔を向け、異なる色の瞳をヘマリスの目の奥深くに沈める。
「たとえ君にすべてをさらけ出そうと思っても、その傲慢が壁を築く。でも、落ちる瞬間だけは——意識が空っぽになり、その壁が緩むかもしれない。その時には……君にも見えるだろう」
風が二人の衣服の裾を巻き上げる。雨の糸が斜めに通り過ぎ、彼女たちの間に細かな銀の糸を織る。
ヘマリスは待った。
「それで……二つ目は?」
カリオペは瞬きをした。口元が突然、狡猾な、ほとんど悪戯っぽい弧を描く。
「二つ目はな——」
彼女は一瞬間を置き、笑みが目の奥に広がる。
「——準備はいいか?」
言い終わらぬうちに。
「跳ぶぞ!」
カリオペは身を躍らせ、虚空へと彼女を引き込んだ。
「きゃあ——!!」
ヘマリスの悲鳴は烈風に引き裂かれた。
無重力感が潮のようにすべての思考を呑み込む。
風の音が耳元で轟音に変わり、雨滴は上向きの矢となる。
世界は倒錯し回転する。ただ、しっかりと握られたその手の温もりだけが、現実のように熱く灼ける。
ヘマリスは目を見開き、落下するカリオペが自分の方に向き直るのを見た——
その目に恐怖はない。ただ一片の、ほとんど祈りに近い、灼熱の期待だけがある。
そして意識が烈風に千切られる一瞬前、ヘマリスはようやく、雨音に埋もれたあの囁きを聞いた。
「今度こそ……もう、俺から離れないでくれ」
そして彼女たちは下へ、下へと墜ちていく。あの、柔らかな嘘を敷き詰めた、紅色の深淵へ向かって。
この章を書きながら、思わず笑ってしまいました。だって、こんなカリオペ、本当に悪いですよね?皆さんもそう思いませんか?




