木枯らし・オンライン
こんにちは。
◯◯・オンラインシリーズ……。
木枯らしでは、あの人しか浮かびませんでした。
第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞への応募作です。
よかったら、ぜひ読んでやってください。
わしは掘渡連紋。
まだまだ元気じゃが、ちょっと検査入院しとる。
暇を持て余しておったら、孫が妙なメガネを差し入れてくれた。
なんでも仮装して遊べるとかいう話じゃ。
被ってみると、視界に一覧が浮かぶ。
『子犬物語・オンライン』
『木枯らし・オンライン』
『仔象物語・オンライン』
何故か物語と付くと、どれも哀しそうじゃ。
ここはシブく木枯らしといこうかの。
仮装も渋めに決め、虹色の輪をくぐると――
おお、江戸の町並みじゃ。
瓦屋根に長屋、冷たい風が吹き抜けておる。
『はーい♪ ナビAIのピコちゃんでーす!』
江戸の町にそぐわぬウサ耳小妖精が浮いておる。
周りには、同じく渡世人姿の連中が集まっていた。
『木枯らし・オンラインへようこそ!』
で、わしらは何をすればよいんじゃ?
『もちろん、渡世人は賭博三昧です!』
サイコロが三十一個ずつ配られる。
賭博とは穏やかでないのぉ。
『リアルマネーは賭けませんので安心安全♪』
全面同じ目のもの、一二三が二面ずつのもの、四五六が二面ずつのもの。
イカサマ賽は二個ずつ、残りは普通のようじゃ。
なるほど、運より読み合いの博打じゃな。
『まずは限定チンチロリン!
ピンゾロ五倍、アラシ三倍、シゴロ二倍、ヒフミは二倍付。賽は振ると消えまーす』
竹の楊枝が十本ずつ配られる。
『親決めです! サイコロ一個、振ってくださーい!』
ゴザの上で順に賽を振る。
最後に金ピカ鎧の男が、迷いなく一つ振る。
「俺様が親だ!」
転がった賽は、六。
どうやら全面六を使いおったらしい。
「さあ、張った張った!」
まず一本、ゴザに突き立てる。
「爺さん、せこくねー?」
あっしは庶民でさ。
金ピカが振る。
全面一を二つに、一二三の賽。
【一一三】
ピンゾロを狙い失敗じゃの。
「残念じゃったのお」
わしの番。
二、二、四五六の賽を選ぶ。アノ手は温存じゃ。
【二二四】
四の目で渋く勝ちじゃ。
「ぐああ!」
大袈裟な声を上げよる。
他の連中も倣い、最低でも四以上。
親の総負けじゃ。
「まだだ!」
次は五、五、四五六。
相変わらずアラシ狙い。悪くはないが、
【五五四】
みな何故気づかんのじゃろう?
わしは……四、五、六。
【四五六】
「シゴロで二倍付けじゃ」
金ピカは全ての楊枝を失い、肩を落とした。
「おのれ、爺いめ! 覚えてろよ!」
楊枝をフッと吹き捨て、わしは言った。
「あっしには、かかわりのないことでござんす」
そのとき、長屋の隙間を木枯らしが抜け、
転がり忘れた賽を、からりと鳴らしていった。
(おわり)
最後までお読みいただきありがとうございました!
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シリーズのURLも貼っておきますね。
『第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞応募作』
https://ncode.syosetu.com/s8251j/
『オルゴール・オンライン』
『ホットケーキ・オンライン』
『サバイバル・オンライン』
『ギフト・オンライン』
『舞踏会・オンライン』
『風鈴・オンライン』
『自転車・オンライン』
『木枯らし・オンライン』
今回もゆるいVR短編でしたが、
普段はもうちょっと騒がしい長編
『デスゲームに巻き込まれたのでマジチートしてイイですか?』
(マジチー)を連載しています。
バグ技、名古屋弁、ラーメンなど色々入り混じった
にぎやかVR冒険ものです。
よかったらこちらもどうぞ!
マジチー本編:
https://ncode.syosetu.com/n4658kt/




