ヒール
「る、瑠璃……?なんでここにいるの?」
おかしい、さっき確かにバイバイしたはずなのに。なんでなんの反応もないの?私の声が聞こえてないみたいなーー
(とにかく、瑠璃はここに居たら危険だ)
1歩ずつ瑠璃に近づく
「瑠璃?ここはちょっと危ないから一緒に帰ろーー」
ドスッ
「ッ?!る……り…?ゴフッ」
何が起きたのか。でも確かにわかるのは今瑠璃は笑っている。私の腹を貫きながら。
(刺さってるの、この前瑠璃が刺されたのに似てる)
「ぅぁ、ゲホッゴホッ、うぷ……」
それが私の腹から離れる。口から血が止まらない。お腹にはぽっかり穴が空いている。糸の切れたマリオネットのように地面に崩れ落ちる。
(…ぁ、これ死ぬやつだ……)
でも、私はここで死ぬわけにはいかないの。瑠璃が長生きできるように。目の前に居るのは、きっと瑠璃じゃない。こんな所で死んでたまるか。
ヨロヨロと立ち上がる。立つのですらやっとだ。判断が鈍ってる。
「っ、ヒール……!」
金色の光は腹の痛みがなかったかのように塞いでくれた。倒す。この怪物を、私は今倒さなきゃいけない。
「っ、ふんっ!」
ステッキをハンマーに変え瑠璃の見た目をしたそいつを叩く。地面はヒビが入ったけど、当の本人はピンピンしてる。なんなら避けてるし。
「ッぅあ……?!」
ボトリ。
私の腕が切り落とされた。地面に転がった私の腕は、こいつに敵わないことを示唆しているようにも見えた。
(そうだよなぁ……。多分、死んぢゃうよなぁ……。)
じわりと涙で視界が滲む。でも、あいつは待ってくれないから。最後まで戦うしかないのよ。
「ヒール」
ハンマーを剣に変える。あいつも、私の腹を貫いたそれを剣に変えた。正々堂々となのか、舐められているのか、
「ははっ」
ガキン、ガキン
お互いの剣が当たる度に火花が飛び散る。怪物は、私の四肢を、指を、腹を何度も何度も何度も何度も飛ばす。あぁほら今も耳が飛んだ。
「ッヒール!!」
ヒール
ヒール
ヒール
ヒール
ヒール
何回言ったのか分からなくなった頃、怪物の体制が崩れた。
(ーー今!!!)
「っ、ふんッ!」
魔力の糸で怪物を拘束する。抵抗が激しい。どんどん糸が切られる。もっと、もっと強く、固く、しなやかに……!!
「ゴプ」
血が止まらない。魔力がもうないんだ。こいつを、殺さなきゃ。殺して、魔力の回復を……
そこからは、あんまり記憶が無い。何度も、何度も何度も何度も何度も刺して、切って、貫いて。自分が自分じゃ無くなるように思えた。
気がついた時には、もうそこには何も無くて。でも確かに、肉を、筋肉を、骨を割くような感覚が手から消えない。
「……ゥプ」
ボタリ、ボタリ、口から血が止まらない。でも魔力はだんだんと体の中に入ってくる感覚がした。
「たおしたんだ……本当に」
もう立っているのも限界だった。そのまま地面に崩れ落ちる。ふと周りを見ると、そこら中に散らばっていたはずの私の肉片や、地面のヒビは元から無かったかのように姿を消していた。
「かえら、なきゃ……ねむ…」
何とか家に帰った記憶はあるけど、母曰く玄関に入るやいなやすぐに寝てしまったらしい。
ゲシュタルト崩壊しそうだった




