祟り神、君の名は。
境内を夕陽が赤く染めはじめた。
落ち葉が風に踊り、掃いても掃いても積もるような空気の中。
我王と瑞稀は並んで立っていた。
肩には、まるまるとした謎の生き物。
我王「で、コイツはなんだ」
瑞稀「知らないわよ、そっちの肩に乗ってるんでしょ」
我王「いや、そっちが呪い掛けたんだろ」
???「ふぁ〜あ、うるさくて寝れない」
瑞稀「あ、喋った」
我王「コ、コイツ、喋るぞ」
瑞稀「あー可愛い、であなたは何?妖怪?精霊?マスコット?」
???「我をもののけの類と同等にするでない、貧相な巫女め」
瑞稀「え?」
瑞稀の顔が固まる
「今、なんて、、言ったコイツ」
瑞稀の怒りの雰囲気を感じた我王が肩に向かって喋る
我王「で、お前は何者だ」
???「我は神である」
我王「神?」
瑞稀「アタシが神様、呼んじゃったの?」
神「呼び出したと言うより無理やりひっぱり出された感が強いな、呪文雑すぎたぞ」
我王「だったら帰っていいぞ。むしろ帰れ。」
神「帰れない、我にも任務がある。果たすまでここにいる」
我王•瑞稀「任務?」
神「夢が叶うまで帰れない」
「夢?」瑞稀が首を傾げる
「アンタ、夢何なの?」
我王「決まってる、世界一の大富豪だ」
瑞稀「はぁ!?何で金!?バカじゃないの」
我王「現実をみろ、金は力だ。世界一の富豪になれば神さえ動かせるみたいだな」我王が軽く笑う
我王「どのみち夢を実現させるつもりだったんだ大した被害もない、訴えるのはやめといてやる」
瑞稀「神をどう訴えるのよ、アンタこそまた信仰をバカにしたら許さないからね」
我王「ま、もう会う事はないだろが元気でな、あと口が悪いの直せよ」
瑞稀「世界一の富豪なんて何十年後かわかんないけど頑張りなさい、あと偉そうな性格どうにかしなよ」
2人ともフッと笑いながら見つめてる
神「あ、なんか別れの雰囲気出してるけど、貧相な巫女も行動共にしてもらうぞ」
瑞稀「え!?何でアタシも?」
神「我はお主の信仰がエネルギー、お主いないと燃料切れてこの憑代爆散する」
我王「!?んな!?」言葉にならない声を発してる
瑞稀「でも、アタシ巫女の仕事あるからココ離れられないよ」
我王はテキパキと電話やメールをしている
電話を終えるやいなや
我王「代わりの人材は手配した」
瑞稀「はっ!? 勝手に!? え、誰!?」
我王「掃除と接客に慣れた社員が一人いる。装備も一式持たせた。
遠隔地だが常駐するようにした」
瑞稀「ちょ、巫女ってそんな“派遣社員”みたいな扱いじゃないんだけど!?
信仰と誠実さが──!」
我王「誠実さより“対応力”が求められる時代だ。問題はない」
瑞稀「問題しかないよぉぉぉ!!」
我王「お前のせいでもあるんだ、腹をくくれ俺の世界一への道は止まってる時間はない、行くぞ」
瑞稀「えーん」
我王「…3食にオヤツもつけるし、世界一になったあかつきにはこの敷地内まるッと改装してやる」
瑞稀「鳥居を金ピカに出来る、ぐすん」
我王「鳥居も社務所も本殿、拝殿もまるっと純金にしてやる」
瑞稀「準備してくる」
我王の車に乗り込んだ瑞稀は助手席でシートベルトを締めながら小さくため息をついた。
肩の上で丸まっていた神はぴょんっと瑞稀の膝の上に飛び乗る
瑞稀「そう言えば、アンタ名前ないの?」
神「我は名前など存在しない、呼びたくば好きに呼べばいいぞ」
瑞稀「なんか、無限にウザいし無限にめんどくさいからムゲン君でどう」
神「それでいいムゲ」
我王「…なんか、語尾ついたぞソイツ」
運転中、横目で見ながら言う
瑞稀「じゃあ、よろしくねムゲン君」
膝の上の神をぎゅっと抱くその顔は笑っていた
ムゲン君「よろしくムゲー、信仰は忘れないようにムゲ」
我王「だから、語尾ついたって、今までムゲーなんて言ってなかっただろ」
瑞稀「夕陽が綺麗ね」窓の外を見ながら言う
我王「なー、おい!語尾ついたぞソイツ、進化したのか?」
瑞稀もムゲン君も外の景色を見ている。
我王「おい、おいって!お前ら語尾についてスルー?スルーするのかぁぁ!」
我王の虚しい声が高速道路を駆け抜けていった。