(5)
冗談じゃない。
多分、このままだと、姉貴が帰省した時に……俺は壮絶な拷問を受ける。
そして、確実に中島の事を自白する。
そうなれば、中島の身も危ない。
仲良く去勢手術の練習台だ。
話半分としても金玉片方潰される。2人合わせて1人分の金玉しか無くなってしまう。
早く、中島に伝えないと……「これ以上、俺が教えた俺の姉貴のアカウントでエロゲをやるな」って。
と思って、携帯電話を手にすると……。
『中島の馬鹿、今、何やってる?』
『おい、あいつの担当分の宿題、まだ届いてないぞ』
Maeveには、クラスの友達の……文句の嵐。
ウチの高校は、一応は進学校なんで、宿題はやたらと多い。別に成績が悪くなくても、補修を受けないといけないので、普通の授業の宿題だけでなく補修の宿題まで有る(「補修の受講は任意」が建前だが、受けなくても学校から何も言われないのは、「補修を受けなくても成績が上位1割に入ってる」ような化物だけだ)。
その為に、何人かで手分けして宿題をやらないといけないのだが……。
『俺から連絡してみる』
Maeveに、そう書き込む。
『おい、あいつと一番仲がいいのお前なんだから、あいつと連絡付かなかったら、お前があいつの分までやってくれよな』
んな、無茶なッ‼
でも、まあ、あいつに連絡をしなきゃいけないのは確かだ……。
とりあえず、中島に音声通話。
早く出ろ。
すぐ出ろ。
今出ろ……。
『おい、何やってる? 見付かったらマズいのに、何で電話する?』
何故か、出た途端に逆ギレ。
「いや、待て、『見付かったらマズい』って、何やってんだ?」
『だから、証拠を探してんだ』
「何の? 今どこに居る?」
『府川と土屋が住んでるアパートの前』
「何で知ってるッ⁉」
『アイドル・ファンとかなら、好きなアイドルの自宅ぐらい知ってるモノだろ。それと同じだ』
「そんなアイドル・ファンは、ファンじゃなくてストーカーだッ‼ そもそも、証拠って何の証拠だッ⁉」
『「魔法少女」ってのは本当は「魔法」なんて使えない、って証拠だよ』
「おいッ‼」
『いや、だって、エロゲみたいに「女の子の秘密を握って脅迫してエロい事をする」なんて出来なくなってる時代だろ』
「出来てた時代でも、本当にやるのは犯罪者だけだッ‼」
『でもさ……魔法使いなんてゴロゴロ居る世の中で、魔法が使えるフリしてるって、どうゆ〜事か判るだろ?』
「だから、何の事だ?」
『魔法少女こそ何の異能力も無い。エロゲみたいに脅迫とかやっても、異能力で証拠も残さず殺されたりする心配は無い』
「お前、何言ってるッ?」
『お前こそ、何言ってる? お前、自分が府川を、どんな目で見てたか自覚してなかったのか? 傍から見たら発情期の雄犬だぞ』
「うるせえッ‼」
『お前は府川をやれ。俺はエロゲみたいに気の強い女を屈服させる方が好みなんで土屋を……』
「あ〜、そうだ、姉貴にバレた。もう、姉貴のアカウントでエロゲをやるなッ‼」
『え……そんな事、急に言われても……』
「あのな、姉貴が帰省したら……俺達……殺されないぞッ‼」
『いや……殺されないなら、安心だろ?』
「あ〜、何て説明していいか……ああ、ともかく……そうだ……」
『何?』
「これだけは言っとく」
『だから、何だ?』
「さっさと家帰って、宿題やれ。お前の担当分を……」
『あっ……』