(2)
「こちら、校長室の窓の下。中で福田が校長と教頭に怒られてるのが見えます。ど〜ぞ」
『誰か、動画撮影してますか? ど〜ぞ』
「中田が撮影してます、ど〜ぞ」
『校長室から、知らないおばちゃん2人組が出て来たんですけど、何か判りますか、ど〜ぞ』
「結構無理な体制で撮影してるんで、携帯電話の画面が見えないんで、よく判りません、ど〜ぞ」
『あの……それって、ちゃんと撮影出来てんですか、ど〜ぞ』
「おい、お前ら……何やってんだ?」
その時……社会の先生がジャージ姿で……あ、この先生、たしかサッカー部の顧問だったんで、練習を見てたか何かで……。
「あ……あの……その」
「逃げろッ‼」
「おい、待て、こら」
走る、走る……走……おい、何でッ?
何で、四十過ぎのおっちゃん先生より、俺の方が体力無いんだ……もう息切れ……。
他の奴らは、あっさり逃げ……。
「何やってた、今?」
「あ……あの……その……」
「いじめか?」
「へっ?」
「お前、あいつらにいじめられてんのか?」
「あ……あの……その……違……違……違……」
あまりの展開に……考えがまとまらず……。
「やっぱりそうか……」
やっぱり、そうなった。
まぁ、たしかに、そうだ。
俺が、教員だったら……「この生徒、いじめられてんじゃないか?」と思った奴に「お前、いじめられてないか?」と訊いたら……その生徒がキョドった状態で……必死に否定したなら……うん、たしかに、こう云う結論になる。
「お前の担任、福田先生だっけ?」
「あ……はい……」
軽い舌打ち……。
「あ〜、よりにもよって、頼り無い奴が担任で大変だな、お前も……。あの『スーパーマンになれないクラーク・ケント』かよ……。まぁ、いい、ちょっと来い」
おい、何か……ややこしい事になってきたぞ……。




